映画評は苦手なんだけど
FirstUPDATE2023.12.6
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いやぁ、よくよく考えてみると、アタシ今までほとんど、いわゆる「映画評」のようなものを書いてないなぁと。

何をトボけたことを言ってるんだ、と思われるかもしれないんだけど、実際、今まで書いた総分量に比して映画評は皆無に近いレベルでしか書いてないのですよ。
しかも、映画そのものを真っ正面から論じた、正真正銘の映画評になると本当に書いてない。
例えばココとかココとかココにクレージーキャッツ映画の話を長々と書いてはいるんですが、どれも、映画そのものの評ではなく「作品が作られた成り立ち」に力を注いでいるのは明白です。

それでもね、2010年代なかば頃にやっていた仕事用ブログでは、かなり無理して映画評を書いていました。
この時つくづく感じたんですが、予想に反してメチャクチャ苦痛だったんです。
何度も観返した作品について何か書くとか「こんなのアホみたいにラクだろ」とさえ思っていたのに、実際にやってみたら、とにかく文章の構成が取れない。こんな駄文でも話のオチというか、どうやって後半までつなげていこう、とか考えてはいるのですが、映画という「すでにある構成」を「自分視点で別の構成に仕立てる」のが本当に苦手でね、何だか、やってもやっても苦痛だし、たぶん読んでる人も面白くないんだろうなぁと思いながら書いてたわけで。

もっと言うなら、それこそアタシは映画を一本観終わって、何かひと言言いたくなるというタチじゃない。
それこそ酷い時はほぼ毎日、映画を一本必ず観ていた頃があった。これはすでにYabuniraを始めて以降なので、書こうと思えばいくらでも書く<場>はあったんです。
しかし実際には、そんなことをしようとも思わなかった。書いててつまんないからという理由以前に、そういう発想すら浮かんでこなかったっつーか。

で、です。
先日「ゴジラ-1.0」(以下、別に泣ける内容じゃないけど「ゴジ泣き」と表記)を観て来たのですが、やはり、アタシの性分的にあまり書くことがない。
いっこだけ、映画の内容とほとんど関係がないことは書きたいんだけど「あそこのシーンがどうのこうの」とか「全体の構成がどーたらこーたら」とかはとくに書きたいとは思わないんです。
そもそもアタシは特撮に明るくないので、作品の成り立ちとか知らないし、純粋に映画として評するなら「そこそこ良く出来たエンターテインメント作品」くらいしか言えないわけで。

となるとですよ。
アタシはココに「シン・ゴジラ」について書いてますし、「シン・ウルトラマン」のことも「シン・仮面ライダー」のことも書いたりしている。
どれも庵野秀明が関わった作品ですが、「シン・ウルトラマン」についてのエントリでアタシはこんなことを書いています。

「シン・ウルトラマン」は見事に「観たらひと言、何か言いたくなる」ように作られている。
しかもアタシのようにオリジナルのウルトラマンをまったく知らない人間が観ても、あれってこうじゃないの?と言いたくなる<つくり>になってるのは本当にたいしたものだと。
つまりね、アタシもまんまと庵野の策略にハマったってことになる。
この「面白かったにせよつまらなかったにせよ、何か吐き出したくなる」という<つくり>はまさにSNS時代にマッチしたもので、仮につまらなかったとしてもSNSや5ちゃんで何か書いた時点で庵野の勝ちなんですよ。(2022年6月2日更新「リブートさせる意味」


あくまでアタシ個人の評ですが、間違いなく佳作以上の出来ではある「シン・ゴジラ」はともかく、「シン・ウルトラマン」や「シン・仮面ライダー」と「ゴジ泣き」ならば、純粋な面白さだけで言えば「ゴジ泣き」の方が上だと思うんですよ。
でも「ゴジ泣き」は、別段何か書きたくなったか、と言えば、なってない。アタシが強い興味がある戦後すぐという時代設定であるにもかかわらず。
というか戦後すぐよりさらに好きな戦前の、ひかもリアルタイムで作られた音楽喜劇を観た時ですら「何か書きたくならない」んだから、「ゴジ泣き」について何か書こうと思わないってのは平常運転も平常運転ってことになる。

だから、なんですが、自身が監督をつとめたかどうかはさて置いて、とにかく庵野秀明の作品はいろんな意味で規格外だな、と。
出来が良い映画が評価の遡上に上がるのは当たり前だし、逆にトンデモな出来の作品も、やはりいろいろあげつらわれる。それも当然です。
しかし庵野秀明作品はそうではない。

「シン・ウルトラマン」や「シン・仮面ライダー」は名作か駄作かはともかく、間違ってもトンデモ映画ではない。でも遡上に上げられる。
アタシのような「映画評が苦手」と自嘲している人間でさえ「観たら何かひと言言いたくなる」庵野秀明作品ってのは、実はとんでもないんじゃないの?と。
正直、黒澤明作品でさえ、全部が全部そうなっているか、と言うとなってないわけで、引用でもあるように庵野秀明ほど「SNS時代にマッチした」監督はいないんじゃないか。

こうした庵野秀明の能力を過小評価しちゃいけない。出来不出来に左右されないってのが本当は一番強く、やろうと思って出来ることじゃないからね。







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