結局野球とは(とくに日本人にとって)メンタリティのスポーツ
FirstUPDATE2023.11.27
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えと、今さらですが、先日まで行われていたアジアプロ野球チャンピオンシップ(以下、アジアCS)もだし、日本シリーズも、いやWBCを含めてそうなってたんだけど、もう本当、野球ってメンタリティのスポーツだなぁ、と。

というか今年ほど「野球はメンタリティのスポーツ」というのを実感させる年はなかったと思う。
大谷翔平がWBC決勝の試合前に「憧れるのをやめましょう」という発言して、流行語大賞のノミネートをされたようですが、これもまさしくメンタリティの話でね、要するに「試合に勝つには如何に相手に飲まれないか」が重要と言ってるわけです。
どれだけ精神的に不利にならないか、逆に言えばどれだけ心の余裕を持って試合に挑めるか、それが勝敗に直結すると。

アジアCSで解説の里崎智也が言っていましたが「国際大会は相手の強い弱いは関係ない。多少格下の相手でも中盤くらいまでタイスコア、もしくは負けた状態で行くと選手は「ヤバいヤバい」と思い始める」らしい。
だからね、そういうことを加味すれば、そりゃWBCのМVPが大谷ってのに異論があるわけじゃないけど、個人的には準決勝で同点3ランを打った吉田正尚だと思う。あのホームランがあったからこそ優勝出来たと。

アジアCSで言えば門脇誠か森下翔太のどちからですね。実際にも門脇がМVPを獲得したけど、これは成績云々ではなく、もっともプレッシャーがかかった初戦で門脇がチーム初ヒット、森下が均衡を破るホームランを打ったからです。
門脇のはたかがシングルヒットだけど、何しろ中盤までは台湾の先発投手にノーヒットに抑えられていたわけで、たぶんベンチのムードはとてつもなく重たかったと思う。それを打ち破ったのが門脇のヒットで、あのヒットが7回以降につながった。

とはいえ完全にムードを変えたのは、やはり、というか森下で、コイツの天性とも思えるクラッチぶりには舌を巻くわ。
一部では「令和の長嶋茂雄」と言われているけど、日本シリーズ3戦の1点差に詰め寄る2点タイムリー、4戦の逆転2点スリーベースなんか、もはや「お祭り男」の域を超えている。
アジアCS初戦の場合、直前に小園海斗が盗塁失敗というか牽制で釣り出されてアウトになってるんですよね。
ただでさえ重い空気で、しかも「やっちゃいけないミス」が出た。で、その次の球をレフトスタンドに叩き込むんだから恐れ入る。

森下のように「ベンチのムードを一変させてくれる選手」がどれだけ貴重か、たぶん監督やコーチ経験がある人なら痛いほどわかるはずです。
それくらいね、メンタリティでマイナスになっていたら挽回するのが難しい。よく「開き直れ」とか言いますが、そんな簡単なもんじゃない。それこそ先日のエントリでも書いたけど、もうすべてをかなぐり捨てる覚悟がないと「マイナスをプラスに転化させるほど」は開き直れない。

そうなると、もう、試合開始前から精神的に有利に立とうとする方がはるかに簡単なはずで、試合中であっても長である監督が「追い込まれる必要はないよ」というムードに如何に出来るかが重要なんです。
今年の岡田彰布の采配で一番素晴らしかったのは「負けててもええよ。終盤になったらベンチワークで勝ち越したるさかい」ってのを全面に出したことだと思う。
厳密にはこれは采配ではない。しかし高津臣吾の「絶対大丈夫」という根拠の薄い言葉より重い言動で、選手としたら「自分たちがしっかりやるべきことをやってたら、後は監督が勝ちに導いてくれる」という信頼感を生んだと思うんです。

こうなると試合運びに余裕が生まれるのも当然で、とくにクライマックスシリーズのファイナルステージは全試合広島に先制されたにもかかわらず選手から焦りの色がまったく浮かばなかったように見えた。
逆に言えば広島はリードしていても終始焦ってるように見え、その隙を阪神に、いや岡田に突かれたと言っていい。

アジアCSが一番わかりやすいんだけど、正直、日本と他の国の実力差は相当あったように思う。
なのに接戦になる、というのは、もう、メンタリティが如何に勝敗に直結するかの証拠でしょう。
残念なことにメンタリティってのは数字では表すことが出来ないんです。アタシが指標をあまり信用してないのはメンタリティを考慮してないからで、とくにメンタリティで能力が発揮出来るかが決まる日本人の場合、メジャーリーグの指標をそのまま日本のプロ野球に当てはめるのは危険だとさえ思う。

ココに「日本人にとっての<バント>という作戦」について書いたけど、得点期待値といったくだらない指標なんかよりもメンタリティ重視のバントを多用するのは、日本のプロ野球であれば当然だと思う。
何だか今年の阪神の野球を真似しようという球団が増えてきてるみたいだけど、先週書いたエントリと同じ話というか、そんなの、采配だけ真似ても意味ないし、監督自体に「点はベンチワークで取れる」という絶対的自信がないとこの采配は成立しない。

そこまで出来る監督が岡田以外にいるのかね。それこそ監督にとんでもなく強靭なメンタリティがないと無理だと思うんだけどさ。







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