今回はDistrictっちゃあDistrictなんだけど、たったひとつの施設に絞って書いていきたい。つかタイトルで「どの施設か」はモロバレだけどさ。
ま、今では「スコる」というのは「好き」の動詞化ってことになってるけど、某2ちゃんねるで使われだした頃はあきらかに下ネタのニュアンスが強かったと思うんですよ。
つまりね、下衆な話になるけど、自慰行為=シコる→スコる、みたいな経緯だったような。
ま、大枠で言えばどちらも「愛でる」に近いものなのでどっちでもいいっちゃどっちでもいい。
ただ、何というか、日本橋髙島屋について書くエントリのタイトルならば「好き」とか「愛でる」ではどうもハズれてるような気がして、実際、この日本橋髙島屋に行ったら「ひとりで興奮してる状態になる」ので、となるとやっぱ「スコる」だな、と。つかさすがに「シコる」には出来ないし。
てなわけで、今回は日本橋髙島屋という施設一本に絞って書きたいわけですが、まずは簡単に沿革を書いておきます。
百貨店の多くが江戸年間創業の呉服店にルーツを持つのは有名な話ですが、髙島屋もルーツは呉服店であり、1831年に京都で創業された。
その後、19世紀末に大阪に進出し、19世紀最後の年である1900年に東京へも進出した。後の日本橋髙島屋です。
現在の建物になるのは1932年、昭和で言えば7年にあたる。
この時期に建てられたビルは今の目で見ると感嘆するほど素晴らしいものが多く、1929年から1936年にかけて建立、増築された阪急百貨店うめだ本店や、日本橋髙島屋の翌年に新宿に出来た伊勢丹、1928年から1931年に完成した白木屋(後の東急百貨店日本橋店、現在のコレド日本橋の位置)、日本橋は日本橋でも大阪の日本橋にある、1928年から1937年にかけて建立、増築された松坂屋大阪店(現・髙島屋東別館)など、どれも優美なフォルムを備えてました。
が、令和の現在、現存するのは伊勢丹と髙島屋東別館とこの日本橋髙島屋のみで、もちろん伊勢丹も良いっちゃ良いというか、伊勢丹の場合は若干のチープさが今になれば良い方に作用しており、こちらはこちらで戦前モダニズムを愛する人間としては好ましい。
もうひとつの髙島屋東別館に行った話はココに書いたので割愛。
だけれども、やっぱね、戦前期の百貨店と言えば「憧れの場所」というニュアンスもあって、個人的には「戦前期の人々の憧れを具現化したような」フォルムの日本橋髙島屋を強く推したい。
もう、あれは何なんだろう。外観はもちろんなんですが、入口から入店した時のパァッと拓ける感じは「在りし日の、古き良き百貨店」という風情で、アタシが幼少の頃に行く機会が多かった神戸そごう(現・阪急百貨店神戸店)や大丸神戸店とは違う。一番近いのはやはり阪急百貨店うめだ本店です。
しかしアタシがある種のキラキラ感を感じたのはまだ幼少の時。つまり百貨店自体が「キラキラの象徴」だった時代の話です。
令和の今、もはや百貨店にキラキラ感を感じる人などほとんどいないはずだし、どちらかと言えば「相当アナクロな商業施設」というイメージの方が強い時代なんですよ。そんな時代になっても依然として独特のキラキラ感を醸し出している日本橋髙島屋が如何にすごいか。いやただたんに古い建築物を使ってるってことだけじゃなくて、ずっと百貨店全盛期のキラキラを維持してるのなんて日本橋髙島屋くらいです。
日本橋髙島屋が建築物っつーか外観内装含めてアナクロを乗り越えた存在であるのは間違いないと思うのですが、もうひとつ、これは日本橋の店舗に限らず髙島屋全部に言えることだけど、髙島屋と言えば何と言ってもローズちゃんです。

このローズちゃん、誕生は意外と新しく1962年になって出来たものらしい。
だから日本橋髙島屋の建築が「戦前的アナクロ」だとするならローズちゃんは「高度経済成長時代的アナクロ」なんですよ。というかよく見てみれば、たしかに1960年代っぽいデザインで、どことなく「メリケン(あえてこう書く)から輸入された、国産のものよりも若干値の張るドール」ふうのデザインになっている。
つかね、やっぱ、日本人の感性と欧米人の感性って根本的に異なるんですよ。これ、結構説明が難しいんだけど、ま、話が逸れるのを承知で書いていきます。
諸外国で日本語の「カワイイ」が一般名詞化してる、なんて話がありますが、これは本当の話で、事実イギリスに在住している姪っ子に聞いたらクライメイトみんな、当たり前のように「カワイイ」という言葉を使っているらしい。
何故ここまで「カワイイ」という言葉が浸透したか、それは少なくとも英語には「カワイイ」に相当する単語がないのです。
プリティが違うのは当然として、キュートとも、やはり、ちょっと違う。日本語の「カワイイ」はもっと幅広いっつーかね。いや別に日本発のものでなくても、思いっきりアメリカやイギリスで作られたモノでも、最近は「カワイイ」を標榜したようなモノが出始めているらしい。
ただし日本人にとって「カワイイ」は「当たり前のもの」であり、どうも特別感のようなものがない。だからインパクトをつけるために昨今はあえて日本的な「カワイイ」から外れたデザインにする場合もあります。
ローズちゃんにかんしては<あえて>ではない。何しろまだ「諸外国で「カワイイ」に相当する単語がない」というのが知れ渡ってない時期なんだから<あえて>なわけがない。
だけれども、時代の変化とともにローズちゃんには制作された1960年代よりもさらに特別感が出た。あのアナクロニズムは現代のデザイナーが狙ってもなかなか出せないレベルです。
とまあ、ここまで日本橋髙島屋の基礎的な話をしてきたのですが、この辺りで実践編へと参りましょう。


まずは外観。先ほども書いたように、何しろ1932年建立ですからね。そりゃあ<面構え>が違うわ。

もうこの看板からして「◯◯とは違うのだよ◯◯とは」というのを醸し出しています。

髙島屋のもうひとつの象徴である天使像

エントランスホールもカッコいい。

店内に入っていきなりコレですよ。高い天井と中二階。それでいてどことなくコンパクトに纏まってる様。もう今の時代こんな内装には絶対出来ません。

エレベーターは中身こそ新しい(つまり手動開閉ドアじゃない)けど、外装はそのまんま。

中地下一階の階段から中二階を見上げる。この高低差が「特別なもの」を生むのです。

階段ホールだけど

こうやって加工したらとても令和に撮影されたとは思えん。v

エスカレーターの乗り口で待ち受けるのはもちろんローズちゃん。

屋上庭園も素晴らしい。ちなみに夏はビアガーデンもやってます。これまた昭和的。
最後はあえて少し下衆な話で締めたいと思います。
井上章一著「パンツが見える。 羞恥心の現代史」は「何故人々は女性用下履きが見えることに喜び、性的興奮を覚えるようになったか」ということに着目した好著なのですが、まだ和装(下履きをつけない)が一般的だった戦前戦中期まで、デパートの掃除をしたら床に大量の陰毛が落ちていたといいます。
つまり、パンツでもパンティでもショーツでもいいけど、あの女性用下履きは「男性からの視線を遮るため」だけでなく「陰毛の落下防止」の役割もあるのです。
これはどこのデパートでも変わらない。もっと言えばデパートにすら限らない。どこであろうが当時は「よくよく見ると女性の陰毛が落ちていた」わけで。
ただし当時は床が板張りだったり土間だったりであまり陰毛は目立たない。そこに行くとデパートは大理石張りなので非常に目立ったに過ぎません。
それでも、とくに日本橋髙島屋の場合、先ほど見ていただいたように空間の高低差を実に上手く利用して特別感を演出しているのですが、当たり前ですが、平らな場所を歩くより多少なりとも階段を昇り降りする方が内股が擦れる。つまり他のデパートに比べて「よりいっぱいの陰毛」が髙島屋には落ちていたんじゃないかという推測が成り立ちます。
陰毛が落下しやすいほど凝った空間演出を施した内装の日本橋髙島屋
こんな下衆なキャッチコピーは使えるわけないけど、実は一番髙島屋の他と違う感がわかると思うのですがね。
実はここ、もうひとつ面白いところがあって、4階に展示室「髙島屋資料館TOKYO」というのがあるんですよ。 スペースは本当に小さい。つか激狭なんだけど、とにかくテーマが面白い。ココでも書いた「モールの想像力 ショッピングモールはユートピアだ。」とか、アタシがこのエントリの写真を撮るために行った2025年7月初旬には「団地と映画 ー世界は団地でできている」をやっていた。 何しろスペースの関係で展示物は限られまくってるんだけど、とにかくテーマが面白いので「ここで予備知識を入れて後でゆっくり調べる」のに本当にいいのです。 ここは是非行って欲しい。あんまり興味のないテーマでもわりと面白かったりするしね。 |
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