ま、ね、一種の通過儀礼というか、幼児がアンパンマンにハマるなんて当たり前なのですが、別にそれにたいしての弊害なんてないと思うんですよ。
言っておきますが、アンパンマンのやってることって、とどのつまり、暴力的解決です。アンパンチで全部決着させているのは誰に目にも明らかです。
だからと言って、アンパンマンを見て育った子供が「暴力的解決が当たり前」と思うかと言えばぜんぜん話が違う。
というか、やはり、やなせたかしは「子供向け」がどういうものか良くわかっていたと思う。つまり「悪影響を及ぼす一線を踏み越えていない」と。
しかして、アタシが幼少期に大好きだった「仮面ライダー」とか「タイガーマスク」は、正直「アンパンマン」ほどは子供向けにたいしての心配りが行き届いていなかったように思う。
とくに「仮面ライダー」はですが、ショッカーってね、もう、正真正銘の<悪>なんですよ。
ココに「正義の味方はいるけど、自らを「悪の組織」と名乗るような正真正銘の<悪>は現実にはいない」と書きましたが、それこそショッカーなんて全部条件を満たしているんですよね。
アタシなりに細かい「正真正銘の<悪>」を定義するなら
・極力自らは手を汚さずに悪事をはたらく
・人の命なんか屁とも思っていない
・最終的には私腹を肥やすことにしか興味がない
ま、こんな感じで、もっぱら高笑いしてるイメージというか。
そういやウチの弟が子供の頃に吐いた名言があって
「悪人すぐ笑う」
これは名言というか至言です。ま、現実はともかく、フィクション中の悪人はすぐに高笑いをしたがる。
それこそココでも書いたけど、悪代官なんてまさにその象徴ですし、これもそのエントリに書いたように、勧善懲悪のワンダーランドだった東映が今も特撮ヒーロー物を作っていることを考えれば、悪の組織の幹部=悪代官なのは当然なのです。
話は逸れるけど、海原雄山があれだけ高笑いをするのって、悪人かどうかはともかく確実に「悪役」ってイメージだったんだろうね。
しかしね、これはちょっと、それこそ「アンパンマン」なんかに比べたら悪影響があるかないかで言えば、やっぱりあると思う。
無意識というか潜在意識というか、そういうヒーロー物に影響されてそういう思考になってるって意識はまったくないんだろうけど、やっぱ、どこか「自らは手を汚さずに悪事を働き、私腹を肥やすことしか考えてくて、常に高笑いしてるような正真正銘の<悪>は現実世界にも必ずいる」という刷り込みになってるんじゃないか。
これはSNSを見てたらとくに思うのですが、もう、何か、根本的に勘違いしてるんじゃないか、みたいなポストって普通にあるんですよ。
ま、過剰な陰謀論者にはこうした「絶対巨悪」を信じて疑わないフシがあるというかね、だからそういう人たちってプチエンジェル事件とかロックフェラーとかロスチャイルドとか大好きでしょ。
悪の裏には巨悪が絶対にいる。んでその巨悪さえ操ってるのが三百人委員会のような組織、みたいな話ね。
いやアタシは何も、正真正銘の<悪>なんてひとりもいないって言ってんじゃないですよ。でもね、それこそ何か事件が起こってね、それを見て「必ず裏で糸を引いてる絶対巨悪がいる」という発想になるのは何でなんだろ、と。
アタシは似非事件マニアですが、ぶっちゃけ「裏で糸を引いてる絶対巨悪」がいようがいまいがどっちでもいい。いやむしろ、そういう事件は変な陰謀論者が湧いてくるので、まともに語れない分、その手の事件にたいして興味が薄くなる傾向すらあります。
よくね、フィクションにおいて「悪役のキャラが立ってないと面白くならない」と言われますが、それって完全に大人の理屈なんですよ。
キャラが立ってるってのは見方を変えれば魅力的に描いているとも言え、にもかかわらず人間味がなく極悪非道、というのは「さすがにこれは現実にはほぼいない。だから面白い」というのも大人の理屈であって、子供向け作品でこれをやるって結構危険な気がする。
最初の話に戻りますが「アンパンマン」がよく考えられているのは敵対するばいきんまんが絶対巨悪でもないし、人間味がないってことでもないところなんですよ。
つまりね、特撮に限らずアニメでも、ヒーロー物って「陰謀論者を生み出しやすい元凶」のような気がしないでもないというか。
アタシは何でもかんでも規制する世の中にほとほと辟易してるし、あんまりうるさくは言いたくないんだけど、これはちょっと、考えなきゃいけないんじゃないのかね、とは思う。
普通に暮らしてる人にとって陰謀論者ほど厄介な人たちはいないもん。ちょっとでも込み入った話になるとすぐに「あれって実は・・・知らなかった?」みたいな方向に行ってね、面白くない上にうっとおしいことこの上ないっつーか。
別に巨悪がいるならいるでいいよ。でも間違いなく巨悪はアタシの「今日の晩飯は何にしようか」みたいなことには絡んでこないんだから、いようがいまいが心底どうでもいい。
アタシにとっては、そんな巨悪よりも今日の晩飯の方が何百倍も大事なことなんだから。