時間・季節・場所
FirstUPDATE2024.3.7
@Scribble #Scribble2024 #フィクション #映画 #テレビ #その他の街 人間ドラマ 朝ドラ だんだん シン仮面ライダー ベタ 単ページ

前に「邦画が辛気臭いのは登場人物が揃いも揃って辛気臭い表情をしてるからだ」みたいなことを書いたことがあります。

何故こうなるのか、もっと明るくしたり爽快感があるものに出来ないのか、これについては過去にこんな文章を書いたこともあります。
いやね、何で「劇的な<何か>」よりも「ドーデモイーことを紡いでいってストーリーを構築する」のかと言えば、たぶん「登場人物の心の機微をしっかり描きたい」んじゃないか。となると劇的な展開が邪魔っ気に思えるんじゃないかと。

ま、百歩譲ってそれは理解出来る。でも「劇的な展開であっても心の機微を描くのは可能」なはずで、つかどんな激しい展開のハナシでも登場人物の心の機微っつーか人間ドラマはあるわけです。

見ました。ブラックジャック。(現注・2004年放送開始のアニメ版のこと/中略)まぁそれなりにうまくアレンジしてあるのはわかるんですよ。ただ・・・。
そもそも時間帯のこともあって手術シーンを描けないのはわかってたけど、やっぱブラックジャックにとっての手術シーンはアクション映画でいえばアクションシーン、エロ映画でいえばエロシーンにあたると思うのですよ。
人間ドラマ?そんなんアクション映画にもエロ映画にさえあるもんだから。「アニメ「ブラックジャック」初回雑感」


というかね、人間ドラマを謳った作品に限って「生活」が一切見えない、なんて例はいくらでもあって、とくにアタシが「おそらく今まで見てきたドラマでワースト1」だと思う「だんだん」という2008年度下半期に放送された朝ドラは、本当にその辺が酷かった。
朝ドラで言えば「純と愛」とか「ちむどんどん」もたいがい評判が悪かったけど、あんまり語られてないとは言え「だんだん」はその酷さにおいてヒケを取ってない。

何しろ見返したことがないのでだいぶ忘れちゃったんだけど、登場人物がね、基本、着たきり雀なんですよ。
マンガであれば着たきり雀の作品なんていくらでもある。今のアニメはともかく、原作でものぶ代ドラでも「のび太は白い襟付きの黄色いシャツで紺色の半ズボンを履いてる」なんてみんな知ってる。
でもね、漫画っつーかギャグ漫画はそれでいいんですよ。ギャグ漫画のキャラってのは一種の記号なので、むしろコロコロ変えない方がいい。それこそサザエさんの髪型が毎回変わってたらサザエさんだと認識出来ないでしょ。

しかし「だんだん」はギャグ漫画ではない。つか漫画ですらない。ドラマです。ドラマなのに着たきり雀。この酷さがわかります?
さすがにこれは、と思ったのは大晦日の話なのに誰も冬の装いをしていない。当然「意図的に薄着にさせている」ってわけもない。ただただ季節感がないだけです。
いやもう、他にも酷いところがあまりにも多すぎて、例えば「肝心な展開を全部ナレーションで済ませる」とか「<はんなり>という言葉の意味を間違えてる」とか、脚本家が酷いのは当然として、誰もチェックしなかったのか?いったいNHKはどうなってんだ、と怒りを通り越して心配になったほどです。

ま、さすがにアタシ史上ワーストの「だんだん」は例として悪すぎるけど、しかして、ではエントリタイトルの<時間>、<季節>、<場所>に本当にこだわった作品がどれほどあったのか、というと本当に少ないのです。
「複眼単眼・男女7人夏物語」に「男女7人夏物語」というドラマの<場所>が如何に完璧か書いたけど、実は<時間>と<季節>もまったく文句がないくらいちゃんとしてるんですよ。

アタシはね、そういうことをキチンとやったから「男女7人夏物語」は傑作になったと思うし、「男女7人夏物語」の表面だけをなぞって、根幹であった<時間><季節><場所>をいい加減にやった一連のトレンディドラマが一過性のものになったのは当然です。
これもずっと言ってることなんだけど、アタシは映像メディアのフィクションで粗探しをするのが大嫌いです。しかし、いくらなんでも「粗探しするどころか、あまりにも何も考えずに作ってるのが丸わかりで、細部まで探ろうとも思わない」みたいなのが多すぎなんじゃないか。

「シン・仮面ライダー」について書いた時、どうせロードムービー風にしたいなら地図とかだして九州まで行けば良かった。だったら桜島で2号ライダーと合流って出来たのに、と書きました。
こんなの別にたいして手間暇はかからないですよ。でもすでに2号ライダーの登場が予告されてるんだから、マニア目線なら桜島が近づくほどに「もうちょっとで2号が出てくるぞ!」とワクワク出来たと思うんです。
これ、「シン・ゴジラ」ではちゃんと出来ていたのに「シン・ウルトラマン」と「シン・仮面ライダー」で蔑ろにされた意味がわからない。

現実にある街の名前を出すのがマズい場合もあるだろうってのはわかるんです。
でもね、だったら「捻ってあるけど<元>が想像出来るようにしておく」か「いっそ架空の街にする」とかすればいい。
いやいやそれも無理?だとしても季節とか時間くらいは絶対出来るでしょ?やらないだけでしょ?

もう百歩どころか千歩譲ってね、それこそ「シン・仮面ライダー」のようなアクション物とかコメデイならいいんですよ。いやよかないけど我慢出来る。
でもさ、それこそ「人間ドラマ」と謳ったような作品で<時間>にも<季節>にも<場所>にも「一切こだわってない」とか、それ、人間ドラマと言えるの?と。

京都府宮津市の一景。冬の凍てつくような寒い夜、身を屈めながら帰宅すると、母親が「かんとだき(=おでん)」を作って待っていてくれた

もうベタもベタだけど、そういうことなんですよ。人間ドラマって。
何も人間ドラマだからってこんなベタをやれってんじゃない。でもその<策>を練るのが創作者の仕事じゃないんですかね。







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