暮らしに特化した街・神奈川県藤沢
FirstUPDATE2023.12.18
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 この場合、「藤沢」ではなく「フジサワ」と書いた方が気分が出るんだけど、とにかく「フジサワのヨサ」を文字で表すのはとてつもなく大変というのはわかっているんですがね。

 というかさ、さすがに関東っつーか京浜地区の人ならば「フジサワ」と聞いてピンと来るだろうけど、他の地域の人にはまず伝わらない。つか補足必須というか。
 それこそ関西の人間に「フジサワ」と発しようものなら

「フジサワ?聞いたことないわ。どこなん?」

「ああ、えと、江ノ島のある」

「何や江ノ島かいな。あ、でも江ノ島言うたら茅ヶ崎ちゃうん?」

「まァサザンのイメージがあるからなぁ」

「ちゅうことは茅ヶ崎やないんやな。ということは鎌倉?」

「いや鎌倉でもない」

「茅ヶ崎でも鎌倉でもないって、ほんならどこやねん」

「だからフジサワだって!さっきから言ってるだろ!」

「せやからフジサワとか知らんっちゅうねん!」

 ま、だいたい、こんな感じに、はならないか。
 でも関西で「フジサワ」と聞いて、ああ、茅ヶ崎と鎌倉の間にある、江ノ島があるところ、とわかる人は本当に少ない。んで、たぶんこれは関西に限らず、北海道だろうが九州だろうが四国だろうが山陰山陽だろうが似たりよったりなんじゃないかね。

 つまりね、江ノ島が全国的な知名度を誇るのに比べて、その江ノ島を擁する藤沢市の知名度はほとんどない。藤沢駅なんて東海道線の駅なのに、んでその昔には藤沢宿なんてのまであった、つまりわりと歴史の長い街なのに、こと「フジサワ」という地名はフシギなほど知られていない、と言いたいわけで。
 あ、ちなみに「フジサワ」ブランドで知られた藤沢薬品工業(現在のアステラス製薬の前身のひとつ)は神奈川県藤沢市とは何の関係もない。創業者の苗字が「藤沢」だっただけの話で、そもそも藤沢薬品工業は大阪で創業された会社だから。
 とまあ、ここまで藤沢の知名度のなさを中心に書いてきましたが、藤沢は本当に歴史のある街で、何しろ「太平記」に「藤沢」という地名が出てくるくらいだから、14世紀にはすでに存在していた、ということになります。

 さらに江戸時代になると藤沢宿なる宿場町が設けられ、遊行寺や「信仰のテーマパーク」と化していた江ノ島詣りが庶民のレジャーとなったこともあって、観光地という側面で見ても実は鎌倉よりも古いのです。

 だからこそ、現在の東海道線が国府津駅まで延伸された1887年、つまり路線の開通と同時に藤沢駅が設けられている。つまり「藤沢ほどの街ならば駅を作るのは当たり前」だったのです。

 その後も藤沢は発展を遂げることになるのですが、重要なのは「急速に発展したわけでない」んですよね。
 ある意味、日本の経済や文化と歩調を合わせるように、というか、特別注目されることもなく、また知名度を一気に上げるような出来事も起きず、ほんのちょっとずつ藤沢は発展してきました。
 鉄道信仰が強かった時代には小田急と江ノ電が藤沢駅を開業しているし、戦後のデパート全盛期には駅周辺に複数のデパートが出来ている。
 そして「専門店が入る商業ビル」が流行るとオーパが出来たり小田急百貨店も近年商業ビル化した。
 つまり、逆に言えば「藤沢と言えばコレ!」というのが見えづらい。街の発展は本当に徐々にだし、知名度も江戸時代の頃から現代に至るまでず~っと江ノ島に数段劣る。
 古い街なのに寂れることもなく、急速に発展することもなく、知名度も低く、良くも悪くも「有り体」の街として存在する藤沢駅周辺。
 こんな魅力の見えづらい、しかしこれだけ「住めば都」と思える街もない、摩訶不思議な藤沢のことをね、しっかり書いていこうと。
 ってここまでも結構長々と書いたけど、まだ序章ですから。

 アタシは2008年から、ま、途中横浜や鎌倉にいた頃もあったとはいえ、2018年まで藤沢に居を構えておりました。
 やっぱね、実際に、それなりの期間、住んでみないとわからないことは多いと思うのですが、たぶん今まで住んだ中で「一番普通に暮らせた街」だと思う。
 好きな街、とも違う。それこそ好きさで言えば東京は人形町やロンドンの足元にも及ばない。でもね、実際問題、人形町やロンドンで「普通に暮らす」って結構難しいんです。
 ロンドンはまず言葉の壁があるし、そもそも永住権もなしにずっと住めるわけがない。
 人形町は人形町で家賃も高いし、気軽に買い物が出来る場所がない。つかスーパーがないのは困ったもので、しいていえばピーコックくらいしか存在しない。んで、言うまでもないけどピーコックはハイブロウ志向なので日常的に利用するのは難しい。

 ところがね、藤沢にはそうした「日常を暮らしていく」ことの不便さが何もないんですよ。
 アタシが藤沢駅周辺の最大の利点だと思っているのが「スーパーの多さ」です。これは本当にすごい。
 2023年現在ですが、とにかくお手製の地図を見て欲しい。

 駅前であってもこれだけスーパーが密集している地域も珍しく、しかも上はクイーンズ伊勢丹や成城石井、下は、いや下って言っちゃうとアレだけど、値段重視ならOKストアがある。さらに純粋スーパーではないけどドン・キホーテや業務スーパーがあったり、徒歩圏内とは言えないけどヤオコーもあるし、全国チェーンのスーパーだってイトーヨーカドーもあればダイエーが揃ってる。
 他にもサミットとか地場スーパーの「やまか」とか九州発祥のフードウェイとか、さらにフジサワ名店ビルには八百屋や肉屋もあるわけで、これだけ数もあれば特色もあるスーパーが揃ってて、文句がある方がどうかしてる、と言い切れるのは藤沢駅周辺のみ、なんじゃないでしょうか。


 さらにショッピング関係の話を続けます。
 買い物ってね、すべて徒歩圏内で賄える方が便利かというと実はそうでもなくて、商品によっては「多少駅から離れていてもクルマで買い出しに行く方がラク」なんてことも往々にしてあるわけで。
 そうなるとね、たしかにIKEAやコストコが近場にあるってのは便利なんだけど、残念ながら藤沢はどちらも遠い。一番近いIKEAは港北インターチェンジの近くだし、一番近いコストコは金沢八景の近くってことになってしまいます。
 それでも食品の大量買いや家具、家電、あとホームセンターで売ってるような簡単な資材なんかは絶対クルマで買い出しに行く方がいい、というか、こういうのは下手に駅前にあると駐車の問題があって逆に行きづらかったりします。
 となると藤沢はいろいろ対応しやすい。
 クルマさえあれば大型の業務スーパーもあるし(先述の通り、駅近にも業務スーパーはあるけどかなり小ぶり)、とくに肉類の大量買いという面で強いロピアもあったりする。
 さらにもう、クルマで30分以内圏内に大型ショッピングモールがふたつもある。

 そのうちのひとつは、これは場所で言えば完全に辻堂で、というか辻堂の駅前にある「テラスモール湘南」です。

 ま、テラスモール湘南についてはココに詳しめに書いたので割愛して、やっぱり「湘南モールフィル」のことを書きたい。
 メチャクチャ正確に書けば「湘南モールフィル&ミスターマックス」ってことになるんだけど、一応道で隔たれているのですが連絡橋でつながっており、おそらく分けて考えてる地元民は誰もいないはずです。
 ミスターマックス側は単独でミスターマックスだけが入ってるのでなくスーパーや大型スポーツショップもあったりして、こっちも十二分にショッピングモールと言える規模です。
 どちらも単独で見ればそこまで大きいショッピングモールではないんだけど、そこそこ規模のショッピングモールが隣接してるってのがミソでしてね。

 正直言えばテラスモール湘南は若干「お高く止まってる」ところがあって、実はそんなに好きじゃない。しかも辻堂駅の真ん前にあるという立地もあって駐車場代がかかるというか「クルマを停めてから何分経ったか」を常に頭に入れておかなきゃいけないのが面倒くさい。
 しかし湘南モールフィル&ミスターマックスは駐車場が完全に無料で、一切時間を気にする必要がない。これはドライバーからしたら本当にありがたいんです。
 そしてね、テラスモール湘南と違って庶民的なんだけど、湘南独特の<空気感>が見事に詰め込まれており、とにかく気持ちがいいのです。
 もう今は藤沢から離れちゃったのでそんなに行くことがないんだけど、実は片瀬の海よりも、藤沢駅前よりも、一番「ああ、湘南に来たなぁ!」と思えるのがこの湘南モールフィル&ミスターマックスなんですよ。
 自分でも何だかわかんないんだけど、まだ藤沢に在住している頃に辛いことがあってね、どこに行っても気分が晴れなかったのに、ここに来たら一発で晴れたことがあった。
 理由?本当に不明です。でもとにかく個人的なイチオシスポットであるのは間違いない。

 では藤沢駅周辺も「如何にも湘南らしい<空気感>があるのか」というと、いやぁ、残念ながら、という他ない。
 しかし鎌倉のようにお高く止まってる感じはゼロで、だからといってガラが悪いのかというと、そこまででもない。
 それこそ「オーフナ行進曲」でも書いた大船ほど<超庶民的>でもないし、かといって大和や葉山のようなローカル感もない。
 良くも悪くも徹底的に中庸で特徴がない。
 小田急の始発駅だから新宿に出るのは便利だけど、小田急を使おうがJRを使おうが東京に行こうとすれば結局1時間以上はかかるし、江ノ電は沿線に住んででもしない限り地元の人間はあんまり乗らない。

 要するに「暮らすということだけに完全に特化した街」なんです。
 しかしこの特化され具合は強烈で、もちろんショッピング関係が強いのもあるんだけど、とにかく「余所者でもスッと馴染める」んです。正直、ここまで余所者が余所者感を持たずに普通に生活出来る街はないと思う。
 ここまで書いてきたように、アタシは兵庫県神戸市出身です。早い話が藤沢で生まれ育った人間ではないし、やっぱ、生まれ育ってない街で暮らすとなれば多少なりとも余所者感を持って生活しなきゃならないってのは当然です。
 実際問題、ロンドンなんか外国なんだから当たり前として、人形町でさえ、ほんのちょっぴり余所者感があった。そんなことを言えば同じ関西の大阪でも多少の余所者感があったし、鎌倉なんて言うに及ばずです。
 ところが藤沢にかんしては、ただの一度も余所者感を持って生活したことがない。そんな街、日本広しと言えど藤沢だけです。

 アタシは約4年間の神戸での生活に見切りをつけて、2023年7月から東京での生活を始めました。
 再び関東で生活する、となったら、じゃあ、そんなに暮らしやすいのであれば藤沢に住みゃ良かったんじゃね?と思われるかもしれませんが、これは甚だ個人的な事情というか感情で無理だったんです。
 藤沢に居住していた頃、アタシは<ぽんぽこ>という猫を飼っていた。<ぽんぽこ>は神戸在住中の2022年に旅立ったのですが、ま、<ぽんぽこ>が死んだからこそ関東に引っ越せたというのもないわけでない。
 しかしアタシにとって藤沢のイメージと<ぽんぽこ>が結び付きが強すぎた。実際、ちょうど<ぽんぽこ>が死んですぐ、ペットロス対策のために旅に出てね、その時藤沢に立ち寄ったんだけど、もう辛くて辛くて、一秒でも早く藤沢から離れたいという気分になってしまった。
 さすがに時間が経ったので、もう辛くて辛くてってことはない。実際、東京に越してきてからも一度藤沢に行ったけど、まったく辛い感情は湧いてこなかった。
 それでもたぶん、住むとなったら話は別で、もう二度と藤沢に居を構えることはないな、と思っています。

 つまりアタシが藤沢という土地を選ばなかったのは超個人的な心理的な壁があったからで、逆に言えばそんなのが何もない人であれば、もし「関東に引っ越そうと思うんだけど、どこがいい?」と聞かれたらノー文句で藤沢を勧める。
 そりゃあ毎日東京に通勤しなきゃいけないとなったらさすがにしんどいけど、そうでないのであれば家賃面を含めても本当に良い街です。ましてやクルマの所有を視野に入れてるのであればなおさらです。
 だいたいアタシは、たとえ食い物屋ひとつであっても、人に何か勧めるってのが嫌な人間で、やっぱ人間、どうしても合う合わないがあるじゃないですか。となったら、下手したら恨まれる可能性もあるので、なるべく人に何か勧めるのは避けたいんです。

 しかし藤沢だけは別。ここまで書いたように別に何があるわけでもないけど、とにかく、極端に言えば「引っ越した当日から」普通に暮らせる街なんて藤沢くらいだから。

今回のエントリはあくまで「藤沢入門編」です。
つまり、これからも藤沢のことを書いていくつもりでして、とくに江ノ島の手前にある龍口寺とか歴史的に見ればメチャクチャ面白いんですよ。
だから書くことなんていくらでもあるわけで、今回は藤沢駅周辺と藤沢のイメージを中心に書いたけど、これからもっとディープな藤沢についてやっていく所存です。




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