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老いらくのビデオゲーム
FirstUPDATE2023.9.18
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 ここまでミニテトリンてな、1990年代後半に爆発的に流行ったキーチェーンゲームを中心に書いてきましたが、ミニテトリンに触発されたように当時様々なゲームがキーチェーンゲーム化、というかキーチェーンゲームとして<移植>されていきました。

 まァこれは<移植>ではないし、時期的にもミニテトリンとそこまで変わらないので厳密には趣旨から離れるんだけど、ミニテトリンと双璧を成す、いやブームということだけで言えばミニテトリンを凌駕していたのが「たまごっち」です。

 たまごっちブームについてはココでも書いたので割愛しますが、とにかくミニテトリンとたまごっちによって「キーチェーンゲームは出せば売れる」という思惑を持ったゲームメーカーも出てくる事態になった。
 とくにコナミは<音ゲー>と言われる、ビートマニアやポップンミュージックをキーチェーンゲーム化しており、何作か発売されているのでそれなりに売れたのでしょう。


 しかしアタシは、こうした音ゲーのキーチェーンゲーム化に懐疑的だった。
 もちろんアタシが熱心な音ゲーファンではなかったというのも関係しているんだろうけど、それよりも「これ、いったいどこでプレイすることを想定しているんだろ?」と。
 何しろ音ゲーなんだから音楽ありきです。当たり前すぎるくらい当たり前の話だけど、仮にキーチェーンゲーム機本体にスピーカーがついてたとしても、音が流れるゲームを電車の中とかでプレイ出来るわけがない。
 となると「ヘッドホンを繋いで」ってのが前提のはずなんですが、徹底的な<気軽さ>が売りというか、暇つぶしが前提のキーチェーンゲームで、わざわざヘッドホンをセットしてまで遊ぶもんかね?と。
 ミニテトリンでもクソ音質の悪いスピーカーはついていました。しかしアタシは、たとえ音を流しても問題のない場所で遊ぶにしても、サウンドオンでミニテトリンを遊んでる人を見たことがない。というかミニテトリンを買ってきて、まず最初にやることが「サウンドオフ」だったし。

 そうなんですよ。暇つぶしゲームってのは環境を選ぶようじゃいけないんですよ。
 いや環境を選ぶキーチェーンゲームがあってもいいとは思うんだけど、それでは「暇つぶしゲーム」としては失格ですし、暇つぶしを超えてしっかり遊ばせたいならもうちょっとリッチな環境、つまり高性能だったりもう少し大画面な携帯ゲーム機に移植した方がはるかに遊びやすい。つまりキーチェーンゲーム化する蓋然性がない。
 いつでもどこでも、となると、やはりサウンドオフ、つまり<無音>でのプレイが基本のはずで、音ゲーのような音楽ありきのキーチェーンゲームにたいして懐疑的になったのも当然というか。

 ビデオゲームは<音>の扱いにはずっと苦労してきたと言ってもいい。
 ま、ゲームの<音>と言うとどうしてもゲームミュージックが浮かぶかもしれないけど、どちらかと言えば環境の話に近い。
 せっかく手の込んだサウンドを搭載しても、ミニテトリンに限らずゲームボーイなどの携帯ゲーム機では外で遊ぶ時は音量を絞られるし、喧騒きわまるゲームセンターに置かれることが前提のアーケードゲームの場合はある種「音の取り合い」になる。
 かといってファミコンやスーパーファミコン程度ではそもそもたいした音源ではないし、メガドライブなんか「是非ゲーム音楽を楽しんでもらいたい」という意思からヘッドホン端子まで付けたのに、そのヘッドホン端子にヘッドホンを繋ぐとノイズが乗る、という笑えない仕様になってました。
 ヘッドホンにだってアンプは必要だし、本体全体にちゃんとしたノイズ対策をやっておかないとどうしてもノイズが乗る。当然だけど、高品質のヘッドホンアンプはそれなりに高価だし、もちろんノイズ対策だってキチンとやればコストにはね返るわけでして。

 さてここで、まったく、ゲームとは関係ないことを書きます。というかまずはこの動画を見ていただきたい。

 これは1990年代、一大ヒットしたNECのCM「バザールでござーる」なのですが、アタシはね、このCMシリーズがヒットした最大の要因は<音>だと思っている。
 と言っても最後に流れる「♪ バザールでござァる~」というサウンドロゴではなくて、いわゆる<SE>、要するにサルが歩く時の「カツカツカツッ」って効果音があまりにも心地良く、実際当時、バザールでござーるのCMが流れるたびに何とも云えない多幸感に包まれたことを思い出します。
 <音>というのは本当に不思議なもので、あのCMのように「カツカツカツッ」といったただのSEでも心地良くなれるし、1960年代の映画やドキュメンタリー番組で多用された、不安を煽るような<音>もある。
 これらは<音楽>とは違うかもしれない。少なくともメロディは存在しない。でもどんな良く出来たメロディよりも人間の感情とか感覚を揺さぶってきたのは事実なのです。

 しかしコンシューマゲーム機の場合、音源がたいしたことがない上、ハードウェア設計において「どうしてもCPU性能やグラフィックよりも後回しにされやすい、コストを割けない」とあってサウンドチップ&ノイズ対策&アンプを含む出力はチープになってしまう。
 結果、ファミコンは「ピコピコ」というありがたくない称号まで手に入れてしまった。ファミコンというかビデオゲームになどに一切興味のない人には「ファミコン=あのピコピコうるさいヤツ」くらいに思われていたのです。

 そんな中、それでもチープな音源を最大限創意工夫して、ピコピコとは言わせない!と言わんばかりの力の入ったゲームミュージックもありましたが、中には「ピコピコでさえまだ褒め言葉じゃないか」と思えるような、信じられないくらい不快な、これなら音を消した方がはるかにマシと思えるようなゲームもあったんです。
 令和の今、あくまで<音>にかんしてはもっとも悪名高いファミコンゲームと言えば「おにゃんこTOWN」にとどめを刺すはずです。

 もう、ひたすら、それこそ前述のバザールでござーるの心地良さとは正反対の不快なBGMが、わずか8秒でループする。
 「ゲームカタログ@Wiki」によれば

ゲーム内に流れる曲はクラシックのムゾルクスキー作『展覧会の絵』の『卵の殻をつけた雛の踊り』が原曲となっているのだが、音程がひどく外れておりたった約8秒でループし流れ続ける。


 らしい。念のために原曲の動画も貼り付けておきます。

 これだけユーモアに溢れ、構成の妙で聴かせる楽曲を「ただメロディを抜き出しただけ、しかもゲームカタログ@Wikiでも指摘されているように音程が狂ってる」のを延々ループなんて、ゲームカタログ@Wikiで『長時間聞き続けるとそのうち不快感を飛び越して洗脳されたかの様に頭がおかしくなっていくことも。』と書かれてしまうのもしかたがない気がする。

 何で長々ゲーム音楽について書いてきたかというと、アタシの持論として基本的に「ゲーム音楽(SEを含む)は最低限<不快>であってはいけない」と思っているのです。
 そんなの当たり前だろ、と言われるかもしれませんが、チープなサウンド環境しか提供出来ないのであれば、もはやゲームに<音>なんて必要ない。
 で、です。わざわざ<基本的に>と注釈を入れたのは「意図的に不快な<音>を挿入したものはその限りではない」から。
 アタシが結果的に最後にハマった「ひとり遊びを基本とするゲーム」である「MOTHER2」がすごいのは、あえて<不快>な音を入れ込んでいるところで、もし遊んだことがない人であれば是非この動画を見て欲しい。

 ま、遊んだ方には「どうせゲップーだろ」と思われるだろうけど、いやね、当時、初めてこのゲップーなる敵に出食わした時の衝撃は忘れられない。当時は「そういう敵がいる」というのはファミ通なんかの雑誌で知り得ても、何しろYouTubeなんてない時代です。となると<音>だけは実際にプレイするまでわからなかったから。
 というかスーパーファミコンの音源でここまで意図的に不快な<音>を作り出したのは、そして臆面もなくゲームに組み入れたのは本当に恐れ入ります。

 Page1にてアタシは「MOTHER2」について『人間の持つすべての感情を露呈させるがべく作られているかのようで、しかも<狙い>だけではなく、ちゃんと本当に感情を動かす出来になってたのがすごかった』と書きました。
 そもそもですが、ゲーム中の<敵>というのはどこまで言っても<敵という役割>でしかない。
 アタシはしつこく「キャラクターエピソードの重要性」について書いてきましたが、これは<敵>もそうで、「こんなヤツ、絶対に許せない」と思わせてこそ正義のヒーローがやっつける行為がカタルシスにつながるわけです。
 しかしゲームでキャラクターエピソードは難しい。ちゃんと極悪非道と思わせる説明をゲーム開始前にやったらものすごく間延びする。というか「そんなのどうでもいいから早く遊ばせろよ!」と思われるのがオチです。
 それを「MOTHER2」は存在そのものを果てしなく不快にすることで解決してしまった。しかも視覚的にではなく聴覚的にというか、つまりは<音>で不快感を演出したのです。

 これは映画なんかもそうなのですが、シネミュージカルのようなストーリーよりも音楽が主題になってるものを除いて、<音>ってのは作品を底上げするものなのです。
 そういえば最近、こんな画像を拾った。

 実際、これが本当に「最近の邦画の傾向」なのか、何しろ最近の邦画はほとんど見てないので何とも言えないのですが、たしかにこういう傾向の映画(邦画洋画問わず)は存在しており、でもこういうシーンを見るたびに「<音>を大事にしてないな」と思ってしまう。
 セリフだって結局は<音>なわけで、リアリティなんてくだらないものなんかよりも<音>がどれだけ大切なものかわかってないんだろうな、と。
 ウチの母親を含めた高齢者に話を聞くと、字幕で映画なり海外ドラマを見る方がラクらしい。
 先の漫画のような映像作品はトシを重ねると余計見づらくなる。ただでさえ耳が遠くなってきてるのに異様な<音>の増減があれば「小さい声のセリフの時は何を言ってるか聞こえない、大きな声のセリフは爆音になってしまって、やっぱり何を言ってるかわからない」というふうになってしまうと。
 その点、字幕があれば爆音にならないように音量を調整して、小さい声のセリフはハナから聴き取ろうとはせずに字幕に頼ればいいわけですからね。

 アタシはまだまだ「耳が遠い」からはほど遠い。しかし年々聴こえる<音>は減ってきているはずで、よく言われるように高周波の<音>は聴き取れなくなってる可能性が高い。
 はっきりと<音楽>を聴く場合、そしてシネミュージカルを見る場合はどうしようもないしアタシとしてもその覚悟で見たり聞いたりします。
 しかしストーリー中心の映画は、もしかしたら「<音>なんかない方が見やすいよ」となる可能性もあるような気がするんですよ。
 これはね、ゲームでも同じような気がする。
 暇つぶしゲームに限らず、もし今後、Page1で書いたような「基本、ひとり遊びのゲーム」や「パーティーゲームの類い」をやるにしても、<音>がないと何がなんだかわからないというようなゲームは「したいしたくない」ではなく「実質的に無理」になるんじゃないか。
 何もビートマニアやポップンミュージックのような音ゲーだけではなく、<音>でタイミングをはかって攻撃するようなゲームとかね、現実的に不可能になる、いややればやるほどストレスが溜まっていくような。

 ここまでアタシはミニテトリンからはじまった、クリアという概念がない、難易度が上がらない、短時間でサクッと終われる、そして<音>なんかない方がよい、いつでもどこでも出来るゲームを「暇つぶしゲーム」としてしましたが、もしかしたらこれこそが「高齢者向けゲーム」なのではないかと言う気がするんです。
 高齢者にとって邪魔なものがない、そして必要な要素はすべて兼ね備わっているわけで、これなら今後どんどん<老い>が進んでも楽しめる気がしないでもない。
 ただしキーチェーンゲーム=高齢者向けではない。何故ならさすがに画面が小さすぎるから。
 極端な話、今のスマホくらい、何ならタブレットくらいの画面サイズで、ボタンの押しやすさにもこだわったような本当の意味での「高齢者向けゲーム機」が出てきてもいいんじゃないでしょうか。
 ゲームもダウンロードして云々は一切なし。内蔵ゲームだけ。んでその内蔵されてるゲームも「四川省」とか「オセロ」とか「サメガメ」、せいぜいテトリスもどきレベルのリアルタイム性しかないようなゲーム。

 他、他はなぁ。
 たとえば「ソリティア」とか「倉庫番」はすごく良いと思うし、オセロ以外のボードゲーム、それこそ将棋や囲碁、あと麻雀なんかもいい。ただし元がボードゲームであってもあくまで対CPU戦のみで十分です。要するに通信機能のようなものは一切不要だと。
 で、もしひとつだけ高齢者向けに絞るならば、やっぱ多少は「頭を使う」というのをポイントに入れたい。
 個人的には「ロードランナー」なんかすごくいいと思う。
 今ならAIで「絶対にクリア出来る、しかも異様に高い難易度にならない面」を自動生成するとか可能だろうし、ロードランナーくらいなら素早い操作もそこまで要求されない。つか素早い操作をしなくてもクリア出来る、パズル要素の強い面を自動生成させればいいんだし。

 こういうのはね、既存のコンシューマゲーム機とは絶対にバッティングしないんですよ。というかそもそもターゲットが明確に違う。
 高齢者とは呼べない年齢の人なら「こんなのスマホで十分」だと思うはずだし、マジモンのゲーマーがこんな機械を買うわけがない。

 これは2002年にイギリスで放送されたものの苦情が殺到して打ち切りになったと言われるXboxのCMですが、「スペースインベーダー」を基点とするならビデオゲーム文化が誕生してから50年足らず。当時、喫茶店で100円玉を積み上げてインベーダーに熱中したサラリーマンはとっくに定年になって、そろそろ後期高齢者に属する時代になります。
 年齢を重ねれば重ねるほどビデオゲームと縁遠くなる。これはゲーム業界にとって喜ばしいことなのか、いやこれからは「たとえどんなゲームだろうと死ぬ間際までゲームを楽しんで欲しい」と願う企業は現れないものだろうか。

 もっとゲスい話にすれば、そこはポコっとマーケットが空いてるわけで、そのうち、必ず「そこ」に目をつけた企業が出てきて、さっき書いたような「高齢者向けゲーム機」が登場すると思っているのですがどうでしょうか。

「老いらくの性欲」に続く「老いらく」シリーズ第2弾ですが、2回ほど書いてみて思ったのは<老い>を語るってかなり「ゲスい」ことなんだなぁ、ということです。
結局ね、好々爺とか架空の存在であって、性欲とか高齢者向けビジネスとか、んでこれは今後書きたいネタだけど失禁を含めた汚物的なこととかね、最終的に全部ゲスな話になってしまうと。
つまり人間、トシをとればとるほど、いろんな意味で汚くなっていく。んで死んだ瞬間に清算されて浄化される、みたいなね。
それはもう、しょうがないんだろうな。やがてアタシも、いやアタシ以外、生きとし生けるもの全員、みんな汚くなるんだから。




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