たまごっち、と聞いていまだに思い出すことがあってね、ま、どっかの外国でおばあさんがたまごっちが死んだとかで号泣してるニュースとかもあるんだけど、個人的に印象深いのはアタシがクラブで働いていた時の出来事です。
とあるDJがクローズドの直前の、いわばその日の最後の曲を流した後、突然「みんなに言いたいことがある!」と叫んだ。
「今日、ついに、買ったぞ!たまごっち!8千円したぜ!」
当時発売されていた、いわゆる<初代>のたまごっちの定価が1,980円。要は定価の数倍で取引されていたという。
ちなみに2023年現在の初代たまごっちの取引価格は3~4千円くらい。つまり発売から20年以上経ったにもかかわらずいまだに定価割れしてないどころか倍ちかくになってるってのはすごすぎます。
今では「第一期たまごっちブーム」と言われるらしいけど、この時期、雨後の筍の如く「たまごっちふう携帯育成ゲーム」が発売された。もう何の雑誌か忘れたけど、何十種類かあった似非たまごっちを全部プレイしてレビューした記事があったように記憶しています。
正直、その時のレビューはあんまり憶えてないんだけど、結構言及が多かったように記憶しているのが<音>で、酷いのになると「ガッサガサな音質」どころか「ガッサガサな<ブザー音>」が鳴るってレベルだったらしい。
んで、この手の<劣化>以下の<粗悪>品が市場に溢れたこともあって、このブームはわりとあっさり終結した、と思う。つか単純に「たまごっちが飽きられたからブームが終わった」ってことじゃなかったと思うんです。
その後本家たまごっちにかんしては何度か復活して再ブームが起こったりしましたが初代の頃のブームとは程遠い。やっぱ、いくら<粗悪>であろうが似非が出ないブームなんてたいしたことないですよ。
いやね、実際、<似非>とか<パチモン>が出るって、それはつまり<モノホン>にそれだけの力があるからなんですよ。
ココにパチソンの話を書いたけど、やっぱそれなりに人気のある「テレビまんが」(≠アニメ)の「まんがのうた」(≠アニソン)だからこそパチソンなんてのが作られたわけで、んなもん「星の子ポロン」のパチソンなんて作られるわけがない。ま、あれの主題曲はただのライブラリ音源であって主題歌なんてだいそれたものはないけど。
それこそね、iPhoneなんかあれほどのヒット商品になったからパチモンiPhoneが作られているわけで。
そういや、もう長い間更新されてないけど、ユーチューバーにね、あからさまなパチモンのApple製品(つかパチモンなんだからApple製なわけがないけど)をレビューしてる人がいてね、わりと面白かったんですよ。
例えばiPhoneのパチモンなら当然Androidのカスタマイズでしかないんだけど、結構良く出来ててね。当然モノホンとは比べるべくもないけど、値段が1/10ってことを考えると相当頑張ってる。顔認証まで出来るのは凄いとかじゃなくて笑ってしまいますが。
そのレビューでね、これだけ良く出来てるなら、周りから見ても、あ、あの人、ホンモノのiPhoneを使ってる、と思われるなと。そしたらチームの一人が「それはおかしい。つかそもそも他人のiPhoneを見て、あれはホンモノだ、とか思うのはパチモンを使ってる人間だけだ」と。これには笑うと同時に納得してしまいました。
そうなんですよ。ホンモノ以外の存在を知らない人からしたら、あれはパチモンだとか思うわけがないんです。
「笑学百科」(小林信彦著)という本の中に「ホンモノか、ニセモノか?」という章があり、ここでは「それがわかるのは見巧者だけ」みたいな書き方で、完全に真贋判定の能力がわかるモノサシみたいな話になっています。
しかしさ、このモノサシ自体相当いい加減なもので、自分のサジ加減と他者の意見を聞き入れなければ正否なんてどうとでもなる。正否がどうとでもなる判定ほど胡散臭いものはないですから。
それよりも、ホンモノ・ニセモノ判定はみうらじゅんが提唱したものの方がはるかにわかりやすいし腑に落ちます。
みうらじゅん判定は単純明快で、ニセモノが登場した時点で初めてホンモノがホンモノになる、という。ま、先のiPhoneの話とかたまごっちの話と一緒です。
ニセモノがあるからホンモノがある。逆に言えばニセモノが存在しなければホンモノもクソもないんです。
今考えたらぜんぜん違うタイプなんだけど、21世紀になるかならないかの頃、少なくとも当時は本当に、倉木麻衣は宇多田ヒカルの、矢井田瞳は椎名林檎のパチモン扱いを受けてたんですよ。
しかし冷静になればこれは相当可哀想というか残酷な話です。たぶん倉木麻衣も矢井田瞳も、年齢からして宇多田ヒカルや椎名林檎に影響を受けているわけがない。つか存在すら知らなかった期間の方が圧倒的な長かったはずなんです。
なのに、パチモン、はさすがに言い過ぎにしても、二番煎じ扱いされたのは気の毒という他はない。
しかし彼女たちのおかげで、あえて<おかげ>と言わせてもらいますが、宇多田ヒカルや椎名林檎は<ホンモノ>扱いをされだした。たしかに両者とも売れに売れてたけど、まだまだキワモノ臭が残存していたのに、倉木麻衣や矢井田瞳のおかげでホンモノに昇進出来た。
だから、マジで、宇多田ヒカルは倉木麻衣に、椎名林檎は矢井田瞳に心から感謝すべきなんですよ。
ま、別に感謝されても嬉しくもなんともないだろうけどさ。
でもね、それこそロレックスとかシャネルとかのブランドのパチモンとかさ、あんなの今となってはフランク三浦と一緒でしょ。はっきり言って<間違って買う>人間がどうかしてる。税関で問題になったりもしてるけど、本気で「あのブランドがこんな格安でラッキー」とか思っちゃうような人は没収されようが拘束されようが文句を言っちゃいけないわ。もし純粋なイミテーションなら可哀想だと思うけど、ちゃんと見たら時計の文字盤に「ROLEX」じゃなくて「ROYAL」って書いてあったり、バッグのロゴも「CHANEL」じゃなくて「CHANNEL」ってなってるんでしょ?んなもんこんな確認も出来ないヤツが海外でブランドなんか買うなよと思っちゃうわけで。
でも逆に言えば、フランク三浦感覚で「ワタシは<チャンネル>のバッグを買いに海外旅行に行ったんだ。シャネル?んなもん日本で普通に売ってるし、わざわざ海外まで買いに行くわけないじゃん。そもそも渡航費を考えたら日本でシャネルを買う方がはるかに安くつくじゃん」なんて人は問題にすべきじゃないと思う。
だってその人にとっては、仮に洒落のニュアンスがあったとしてもチャンネルの方がホンモノなんですよ。
例えばポスターに「あのモノマネ芸人来場!」なんて書いてあって、ガウンを着て首から赤いタオルを掛けてそうな感じだったら、アントキの猪木がホンモノなんですよ。もしここにアントニオ猪木が登場したら、ってもう逝去されておられるから不可能だけど、もしご存命でもね、<ご本人>かもしれないけど<ホンモノ>じゃない。仮にご本人であっても「モノマネ芸人」と銘打ってる以上、アントキの猪木の方がモノホンなんだから。
そうこう考えると、おそらく芸能史上でもっとも可哀想なパチモン扱いを受けたのは新田純一だな、と思う。
新田純一の場合、もう、ただ単に「マッチに顔が似てるだけ」でパチモン扱いされた。別にモノマネしてたわけじゃないし(ずっと後年になってモノマネしてたけど)、顔以外とくに共通点はないのに。ま、あまりにもそっくり過ぎたのは間違いないけどね。
それだけならまだしも、新田純一の<おかげ>でマッチがホンモノ扱いされたのかというと、別にされてないんですよ。当時も今もマッチはマッチであって、ホンモノのマッチもクソもないわけで。
そこがパチモンiPhoneなんかと根本的に違う。パチモンiPhoneでさえホンモノのiPhoneへの貢献度はあるのに、新田純一はそれさえない。
マッチは新田純一一切関係なく売れた。んで新田純一はマッチに似すぎていたために売れなかった。つまり自分にとってマイナスはあったのに、相手への影響が皆無ってのがね。
ま、こんな切ないことはないですよ。
でもホンモノと見分けがつかないってことで言えば、パチモンiPhoneやチャンネルの比じゃないくらいの難易度だと思うんだけどな。実際、1980年代前半当時の写真をパッと見せられて、さあマッチか新田純一かどっち!?ってなってもぜんぜん当てられる自信ないわ。カバー画像はマッチと新田純一をごちゃ混ぜにコラージュしてあるけど、こんなのわかんないよね。
・・・待てよ。ということは新田純一は税関で・・・いやいや、ちょっと悪ふざけが過ぎた。ゴメンちゃい。
ま、久しぶりに「ふたつの短文を合体させただけ」という軽いエントリに仕立て直してみました。 特段何か調べたわけでもないし、考察も主張も何もない、ただただ軽いだけのエントリですが、しかしこれは書いてるScribbleとはやっぱり違うんですよ。 Scribbleは本当に何も考えずに書いてるので、意図せず軽くなったり異様に重くなったりしちゃうのですが、これは一本筋を通して相当意識的に軽いエントリにした。もちろん元となったエントリも軽いんだけど、そうした軽いエントリを見繕った上で細部まで軽くなるように微調整しました。 アタシとしてはこういうエントリこそ「Yabuniraらしい」と思うんだけど、どうでしょうか。 |
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