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笑い、というもの
FirstUPDATE2022.11.27
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 ここまでアタシは、仮に現段階では不可能だとしても、本気で研究が進めば<笑い>の分析は可能である、つまりいずれは、イチからではなくてもAIが<笑い>の補正くらいは出来るようになるのではないか、という立場で書いてきました。

 これが甘い見立てなのか、正直そこらは自分ではわからない。ただ、あくまで「ラッキーパンチの域を超えているわけではない」という範疇であれば、AIに笑わされたことがあるかないかで言えば「ある」ということになってしまうわけで。
 そのうちのひとつに「自動字幕」という<笑い>があります。これが本当に面白くて、年に一回は「自動字幕」ネタを検索してね、その都度腹が痛くなるほど笑ってる。
 どういうものか気になる方は「ヒカキン 自動字幕」とか「イチロー 会見 自動字幕」あたりで検索してもらうとわかる。さらに「なんJ」を検索ワードに追加すれば、まとめサイトが出てくるのでよりわかりやすいはずです。
 ヒカキンの方は物騒、不謹慎系で、イチローの方はどちらかというと下ネタ系ですが、どちらもその突拍子もないナンセンスなシュールさはまさに人智を超えたと言っても過言ではない。
 とくにイチローの方の、引退会見の場で、つまり真面目きわまる場で、記者が自らを「鳥のささみです」と名乗るなど、シュールにもほどがある。
 あまりにも頻繁に見ると<笑い>が誘発されなくはなるけど、一年くらいのスパンを置くと、やっぱり「た、た、助けてくれぇ・・・」と言いたくなるほど笑えるわけで。

 ま、実際に検索してもらうってのもアレなので、今さらなのは承知の上で代表的な画像を貼り付けておく。
 まずはヒカキンとセイキンの自動字幕の、いわば傑作選とでもいうのか、を見て欲しい。



















 次にイチローの引退会見での自動字幕を。













 しつこいくらい念を押しておきます。
 これらはあくまで「自動字幕」です。つまりAIが勝手にやったというか、ま、ざっくり言えば「誤判定」ということになるわけで、実際にヒカキンやイチローがこのような発言をしたわけではありません。
 それにしても、です。
 Page1にも書いたように、アタシはかれこれ20年ほど自分のサイトをやっていますが、サイトをはじめた当初の3年ほどは芸人やコメディアンの話といった<笑い>の文化への分析を書いていた。
 そしてその頃、何度か書いたテーマに「新しい<笑い>とはなんぞや」ってのがあった。
 ま、新しい、なんて息巻いてみても、たいていはかなり昔からあるものだったりはしたんだけど、もしかしたら、こうした「性能の低さが故だったとしても、AIが生成した字幕」なるものは、これこそが新しい<笑い>かもしれないな、と。

 たぶんね、ヒカキンやイチロー当人にとって、これらの自動字幕ネタは気持ちの良いものではないと思われます。コピペなので事実かどうかはわからないけど、実際に自動字幕ネタをヒカキン本人に投げつけたらすごい怒られた、なんて話もあるし。
 何故なら、少なくともヒカキンだったらヒカキン自身が「意図的に」発信したものではないし、しかも<笑い>の方向性が完全に不謹慎なものなので、自らのキャラクターが捻じ曲げられてしまう、と感じてもしょうがない。
 ただ、あくまで個人的にはですが、こういうことは<笑い>が発展する、いわば過渡期には往々にして起こることで、最初はただのラッキーパンチだったものを意図的にすることで安定した<笑い>になる。
 もちろん、相当の試行錯誤が必要で、ラッキーパンチを意図的にしようとした瞬間、どうしても「わざとらしさ」が<笑い>を邪魔する。しかしそれでも試行錯誤をあきらめなければ、いずれはわざとらしさが消えて「自然な<笑い>」にまで昇華されるんです。
 ま、そういう意味でヒカキンは黎明期の犠牲者ってことになるのかもしれないけど、それでもユーチューバーの第一人者であるヒカキンが「AIによる<笑い>」のパイオニアになるというのは、個人的には最適な人材のような気がするわけで。

 しかしこれらの自動字幕が本当に「無生物が作り出す<笑い>」のパイオニアと言えるほど今後重要なものになっていくのか、確証のようなものはないのですが、新しいかどうかで言えば、これは間違いなく新しいと言い切れる。
 素人が発信する<笑い>はラジオ番組への投稿なんてのが昔からあるし、人為的ミスやトンデモセンスから生まれた<笑い>も、それこそVOWなんかがあった。
 これらはあくまで、ある種の偶然はあるにしろ「人間が生み出したもの」なのは間違いない。
 しかしAIによる自動字幕や、バグった3Dゲームなんかは、これらとて人間の手が一切介在しないわけではないとはいえ、直接的に文脈やら映像を作り出しているのは、ファミコン的に言えば「CPU」なんですよね。
 あえてこう書くけど、CPUはずいぶん賢くなった。将棋やオセロなどCPUがプロを負かす、なんてことも珍しくなくなったし、近い将来、プロはCPUにまったく太刀打ちでき出来なくなる、とまで言われています。
 YouTubeの自動字幕も今は若干は賢くなって、極端に不謹慎なワードは出てこなくなったようですが、それでも完璧とはほど遠い。相変わらずデタラメとしか言いようがない字幕が表示されます。

 Page2で書いたStableDiffusionも、ごく初期のバージョンが一番奇天烈な画像が生成された。そしてバージョンを重ねる毎に、数多の人が改良を加える毎に奇天烈さは減少しています。
 おそらく自動字幕もさらに改良が進めば、ただ「喋ってることが文字に起こされる」だけのものになるはずだし、それはそれで素晴らしいことではあるわけです。
 つまりこうとも言える。実用的になればなるほど=奇天烈さから遠ざかれば遠ざかるほど<笑い>とは無関係になっていく、と。
 いやこれだってAIの調整次第で「実用性を度外視してでも奇天烈さを残存させる」ことは可能なんだけど、それはそれで、先述の通り、今度は「わざとらしさ」との戦いになる。
 これは<間>だけでなく<リアクション>も<ネタ>も、本当は「絶妙な奇天烈さ」が必要なんです。
 ギリギリ、人間の脳で理解出来るもの、とでも言うのか、少しでもはみ出しちゃうと引いてしまったり「気持ち悪い」と思うんだけど、とにかくギリギリであっても範疇の中に収まっていれば<笑い>につながりやすい。
 つまり「聴衆を理解させられるかどうか」のせめぎ合いは<笑い>を作るにはきわめて重要なんです。

 <ベタ>が共感の<笑い>だとするなら「理解させられるかどうかギリギリ」の<笑い>は脳内の快感に近いものなんじゃないか。
 解けるか解けないかギリギリのパズルを解いた時と似た気持ちの良さ、とでも言うのか、とにかく人間ってのは「快感を覚えると何故か<笑い>が誘発される」のです。
 それこそアタシは研究者でもなんでもないので理由はわからない。しかし、実際にそういう考えに基づいて<笑い>を作る人もおり、本当にそういうネタをやってるのかは知らないのですが、例えばケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、ケラ)なんかはそういうことを意識はしているようです。
 ケラはクレージーキャッツのファンでもありますが「クレージーキャッツの映画にはギャグは「あまり」ない」と看破した上で「しかし人間は楽しくても笑う」とし、1967年に製作された超大作「クレージー黄金作戦」のラスベガスでロケされたダンスシーンについて言及している。


 実際に映画を観たことがある方ならお判りでしょうが、この大掛かりなダンスシーン、ケラの指摘通りギャグは一切入ってない。しかしその圧倒的なスケール感と無類の楽しさ、そして快感があるのは間違いなく、自然と顔がほころんでしまうのです。
 これも、誰がなんといおうと<笑い>であるには違いない。そして「そもそも人を笑わせるのにギャグは必要なのか」とか「演者を含めた製作者側の意図を超えた<笑い>が存在するのではないか」というアンサーにもなる。

 「製作者が意図しない形で<笑い>が起こる」というのはままあることで、何しろ製作者が計算して挿入したものではないので大多数の人にとっては「意表をついた<笑い>」と感じるものになるのです。
 そしてこうした「意表をついた<笑い>」こそ、もしかしたらAIがもっとも得意とするところかもしれない。
 自動字幕の<笑い>も不謹慎云々ではなく、結局は「何でこうまで、文脈とはかけ離れたワードが飛び出すんだ」という、一種の「意表をついた<笑い>」であり、これは三題噺や謎掛けと一緒で「一見、まったく無関係に思えるワードが意外な共通項が見えて結びつく」というのと一緒なんですよ。
 実はこの「意表をつく」というのは人間の脳ではなかなか難しい。しかも咄嗟に、となるとさらに難易度が上がります。
 よしんば上手く結びつけられたとしても、それこそ謎掛けなんかだと「上手い!」みたいな感情が先にきて<笑い>にならないケースが多々ある。
 こうした「意表をつく」というのを無理矢理説明すれば、脳内のデータベースにどれだけのデータが詰め込まれているか、そしてデータベースから最適なワードを導く検索機能がどれだけ優秀かにかかってる気がする。
 つまりそれは、人間よりもAIの方が得意なんじゃないか。いやAIなんて大仰なものじゃなくても<CPU>というかプログラミングが優秀であれば、人間では到底思いつかない意表がつけるんじゃないかと。

 しつこいですが、ラッキーパンチなのは一切否定しないけど、それでも自動字幕は「人間が直接的に関与していない、無生物が生み出した<笑い>」のきわめて初期の例、くらいは言えると思う。
 そしていつしかコンピューターだからこそ可能な「意表をついた」ネタを作成して、人間が笑うというメカニズムの解明から導き出された最適な<間>を持った、AIヴォードビリアンやAIコメディアンが誕生する可能性がある。
 ただし、当たり前だけど無生物には限界がある。
 <笑い>にはそれを発した人の親近感や共感性がきわめて重要だからで、まったく同じネタ、まったく同じ<間>でやっても、よく知ってる人、知ってるけど嫌いな人、ぜんぜん知らないオッサンが発するのでは確実にウケ方が違う。
 AIはどこまで行っても親近感は生まれない。だからどれだけ優秀だったとしても、結局は人間に勝つのは相当難しい。そう思います。

 ここまで長々と書いてきましたが「人は何故笑うのか」を考えるとなったら、それは「人を笑わせるには人でないと不可能なのか」、要するに「コンピューターなどの無生物に人を笑わせることが出来るのか」を考えるということになってしまう。
 つまりは<笑い>という感情は、分析、解析出来るようなものなのか、ということなのですが、その答えは、何しろまともな解析もない現状では「まだわからない」としか言えない。
 本当に将来、ゲラゲライヤホンなんてものがね、実際に作られることになるかはさておき「技術的には可能」なものになるのか、そして実際に可能になったら人々はそれを活用するようになるのか、とにかくわからないことだらけです。
 ただこれだけは言える。人間である限り、<笑い>が不要の世界なんて絶対におとずれない。これはPage1に書いたようなことがあり「バラエティー番組にトラウマさえ生まれた」アタシが言うんだから間違いない。そこは個人差ではないと思います。

 これも書いた通り、2007年にアタシは一旦自分のサイトを閉鎖した。そして閉鎖前の最後のエントリでアタシはこんなことを書きました。

アタシはこれからも、おそらく死ぬまで笑いを追い求めていくだろうし、自分なりに分析していくことになると思います。それはサイトをやってるとかやってないとかとは一切関係ないことで、これも「業」ということになるのかもしれません。


 この文章にたいして2014年のアタシは『我ながら「ウソばっかり」と呆れて』しまうと書いているのですが、しかし今は違う。
 たしかにスタンスは変わった。そして<笑い>への興味もあきらかに薄くなった。それでも、もうこの期に及んで痛いほどわかった。それは
「どれだけ逃れたくても、結局死ぬまで<笑い>というものから逃れられない」
 というのがはっきりした、というか。

 ま、嫌だろうがなんだろうが、人間なんだからさ、<笑い>から距離を置こうってのがそもそもの間違いだったんだよな。もう、そのことはあきらめるしかないんだろうな。こればっかりはAIにバトンタッチするのは無理だしね。

このエントリには裏テーマがありまして、とにかくどれだけ<融合>されられるか、にチャレンジした。
自分語りと醒めた視点からの分析との<融合>、そして古い話(良く言えば歴史的な話)と最新の話(StableDiffusionの話など)との<融合>といった具合に、です。
アタシが書いたものに限らず、基本的にはインターネット上において自分語りは評判が悪い。というかそもそも「自分語りを他人さんに読ませるレベルにまで持っていくのが難しい」のですが、どれだけ分析をやっても最終的には自分語りとして文章を丸める、というのはかなりの高難易度なんですよ。
まァね、そういう自分なりのチャレンジをやっていかないと書いてて面白くないからね。やっぱこうした文章は「自分がどれだけ面白がって書けるか」が最重要事項ですから。
逆に言えばPage1で書いたような、ぜんぜん書いてて面白くないことを(しかも一銭にもならないことを)変な義務感から無理矢理書くのがどれだけ苦痛かわかって欲しい。
そりゃあ、トラウマになるよ。つか一回トラウマになってサイトを止めたのに、復活してまだ駄文を書いてるって、自分に「お前いったい何なんだ」と言いたくなるわ。




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