-Page2では、歴代のファミコン版ファミスタについて語っていただきたいのですが
「そうですね、それではまず初代の話からしますか。これは後年になってから大学の先輩が言ってたことですが「初代の良いところは地味に活躍している選手をまったく評価してないところ」ってのはわりと芯を食った意見だと思う」
-具体的には
「例えばTチ-ムとかだと「ひらた」とか「きと゛」とかね、現実のプロ野球でモデルとなった選手は必要不可欠ではあるんですが、初代ファミスタはそういうのは一切考慮していない。辛辣に言えば、まァ、アウト要員というか」
-たしかにそうでしたね
「でもね、アタシはこれがファミスタがヒットした要因だと思う」
-どういうことですか
「例えばフィクションとか、とくに「巨人の星」とか「ドカベン」とかがわかりやすいけど、野球ってスポ-ツはフィクションにするには人数が多すぎるんです。だから主人公格のひとりふたりを目立たせて、後はどうしてもモブ扱いせざるを得ない。打者ならアウト要員、投手なら滅多打ち要員というか」
-でも「ドカベン」なんかは「巨人の星」と違って全員野球を描いた作品と言われてましたが
「それも「巨人の星」に比べたら主人公格が多かっただけの話で、それ以外はアウト要員でしょ」
-ま、たしかに
「でもね、アタシは無理に、それこそスタメンで出てる選手を全員目立たせようっつ-かキャラを立たせようとしたら崩壊してた、いや崩壊じゃないな、何かね、あんまり人気を得られなかったと思うんです。これは普通のフィクションと一緒で、それこそ小劇団にありがちなことだけど、出演者全員に見せ場を作ろうとして失敗するってのを何度も見てきたから」
-つまり、目立つキャラを絞ったからフィクションとして成功したと
「その通りです。とくに野球なんていう、ル-ルの把握が大変なスポ-ツは極力単純化してやらないと大衆からの支持を集められないと思うんですよ。極端に言えば野球に興味がない人でもそれなりに楽しめるようにしなければなかなかパイが広がらない」
-初代ファミスタはそうなってましたよね
「半分は偶然だったと思うけど、半分は意図的だったと思う。これは燃えプロの話だけど、燃えプロのプロデュ-サ-かディレクタ-が「ホ-ナ-を軸にしようと思った」ってな話をしてましたからね」
-ホ-ナ-に当たるのが「は゛あす」であり、「おちあい」だったと
「だと思います。三冠王のふたりがね、初代ファミスタのフロントマンだったと思う。もちろん時代も良かったというか、三冠王、なんていうわかりやすい称号を持った選手がいたから特徴付けもやりやすかったと思う」
-話を戻しますが、だからこそ地味な活躍をしている選手をモブ化させたということですね
「メリハリですよね。もちろんモデルになった選手には失礼な話だけど、モブ選手を作ることでチ-ムの特色も明確になるし」
-次作の87は打球が飛ばなくなったことで記憶される作品ですが
「ほんの少し、現実に近づけたって感じかな。モブは相変わらずモブのままだけど、打球が飛ばなくなったことで主力選手の凶悪度が少し減衰して打ち取れる確率が上がった。これはあくまで打率ではなく打てる印象の率だけど、初代が三冠王レベルが8割、主力レベルが5割、モブが1割くらいだったのが、87になって三冠王レベルで5割、主力レベルが3割くらいに落ち着いたと思う。ま、モブは相変わらず1割くらいでしたがね」
-う-ん、しかしあそこまでモブを打てなくするってのは、ね
「記憶ではモブ選手よりも下手したら投手の方が打った記憶があるくらいだし。とくに右のアンダ-ハンドの選手は、おそらくバグなんだろうけど利き手が「右以外=左」って設定になってたから打球の飛ぶ方向が逆になったんですよね。つまり思いっきり引っ張ったらメチャクチャ振り遅れたみたいになる。しかも計測したわけじゃないけど感覚的には打球の飛び方も変で、さすがにホ-ムランは打てなかったけど、一度Rチ-ムの「やまた゛」でライトフェンス直撃の打球を打ったことがありますから。ま、逆に言えばモブにはそれすら不可能だった」
-その辺が88になって変更された
「ですね。88になってあきらかにモブの能力が上がった。それまでHRがひと桁の選手がホ-ムランを打つなんて不可能だったのが、ちゃんと捉えればスタンドに届くようになったのは嬉しかったなぁ」
-でもそうすることでメリハリはなくなったってことになりませんか?
「それでもやっぱり、数字通りしか打てなかったんだから、モブがバカスカ打てるようになったわけじゃない。でもここが転機というか、もはやシリ-ズとして安定してきたことで、より本物の野球に近づけても大丈夫だと思ったんだと思う」
-ここまで打撃の話が中心ですが、投手にも変化が加えられましたよね
「初代と87は、いくらなんでも変化球が曲がりすぎた。とくに「えか゛わ」のカ-ブなんてやりすぎで、逆にコントロ-ルが難しかったくらいだから。その辺も88以降変更されて、変化させられるタイミングに制限が付けられたりして少々の数字では無双出来なくなってましたよね」
-88と言えば目玉新機能としてチ-ムエディットがあったと思いますが
「これねぇ、能力の合計値の制限がキツいし、各パラメ-タの最大値が高すぎて、強いチ-ムを作ろうと思ったら誰が作っても同じになっちゃうんですよ」
-どういうことですか
「つまり、主力のパラメ-タを全部MAXにして、モブの能力を最低にする。こんなこと現実のプロ野球でやったらメチャメチャになるけど、ゲ-ムではそっちのが強いのでみんなそうしちゃう。かといって「現実のチ-ムの再現」も合計値が低すぎて再現出来ない。何しろ暗黒時代の弱い弱い阪神タイガ-スでさえ再現出来なかったくらいだから。なのですぐに使わなくなった」
-次が89開幕版ですが
「これはあんまり憶えてない。たしか任天堂との契約の関係で急に夏に発売されたんですよね。でもこれはいろいろと中途半端で印象も弱い。でもチ-ムエディットからプレイヤ-エディットになったのは良かった。これなら合計値もないし、特定の新戦力を加えたりするには便利だったんですよ」
-どんどん行きます。で、次が90です
「バランスは悪かったねぇ。とにかく打球を捉えるポイントが異様に前になった。何であんな前捌きポイントにしたのか謎です。もうひとつはラインドライブですよ。いやヒット性の当たりがラインドライブがかかって外野手の前で落ちるってのはいいんだけど、良い当たりであれば、つまりライナ-性であれば全部ラインドライブがかかるからホ-ムラン性の当たりが全部フェンス手前で失速するっていう」
-ありましたね
「ただラインドライブがかかるのは打率が三割を超えてる選手だけなんですよ。逆に言えばギリギリ二割台の選手ならラインドライブがかからない。だからね、.298、54HRだったMチ-ムの「ほ゛う」(≒ボ-・ジャクソン)が最強選手だった」
-ギリギリ三割を割ってるってのがミソという
「変ですよね。三割打者よりも二割台の打者の方が重宝されるんだから。そういう意味で本当にバランスが悪いんだけど、でもコイツはある意味一番思い入れがある」
-変と言えば、バランスの悪さを自覚しておられながら思い入れがあるって方が変な話ですが
「というのもね、この90を使って大学の友人たちとリ-グ戦をやったからなんです」
-え!?ロンリ-ウルフのアナタが?
「それはもういいです。マジメにやってください」
-申し訳ありません。でもたしかに90からバッテリ-バックアップが搭載されてリ-グ戦機能が追加されました
「実はね、機能としてあったリ-グ戦は使ってないんです」
-どういうことですか
「あのリ-グ戦機能って便利なようで便利じゃないんですよ。なるべく掻い摘んで説明しますが、リ-グ戦ったって「何月何日の何時からリ-グ戦をやります」ってんじゃなくて、都合さえ付けば勝手に試合をしていいって感じだったんです。でも当時はね、ファミコンなんかみんな持ってたし、ファミスタだって少なくともリ-グ戦に参加したメンツは全員持ってた」
-でしょうね
「でもリ-グ戦の管理が出来るのは特定の「ファミスタ90」ひとつだけなんです。目の前にファミコンもファミスタ90があっても「<その>ファミスタ90」でなければリ-グ戦が出来ない」
-なるほど
「こんなんだったら紙でやった方が簡単なんですよ。試合数を決めてスコアさえつけておけば、どのファミコン、どのファミスタ90でもリ-グ戦を進められるから」
-今みたいにインタ-ネットというかネットワ-ク上のデ-タベ-スに記録するわけじゃないですものね
「そう。ロ-カルで完結させるとなると、どうしてもその辺が難しい。当時はそんなネットワ-クで管理なんて想像も出来ませんでしたが」
-で、91です
「91でもリ-グ戦をやった記憶はあるけど、印象は薄いなぁ。唯一憶えているのはアタシはFチ-ムでやったってことくらい」
-92はどうですか
「もちろんこれも購入したけど、これまた記憶が薄い。代走とか守備固めが使えるようになったのはこれからでしたっけ?それくらいかなぁ」
-93は
「もう次の94も含めるけど、この頃になると完全にス-ファミ時代だったし、友人と対戦した記憶もない。93はあの悪名高いモデリングがスリムになって、94で元のモデリングに戻ったんですよね。ただこの期に及んでもまだ購入はしていました。ま、もう年末の恒例行事として」
-それほどファミスタ自体が好きだったんですね。ここらでPage3に続きます