鉄道ソングとしての「ルージュの伝言」
FirstUPDATE2018.2.14
@Scribble #Scribble2018 #音楽 #公共交通機関 #1970年代 #藤子不二雄 単ページ 松任谷由実 荒井由実 ルージュの伝言 性格悪い 疾走感 安孫子素雄 笑ゥせぇるすまん タモリ

昨年(現注・2017年)末に更新した「2017年テレビ総まくり」にも書いたけど、もう何十年もの間「タモリ倶楽部」を見続けています。

たしかに空白期間もあったし、飛び飛びでっつーか毎週見てなかった期間もあるんだけど、たぶんこれほど長きに渡って見ているのは「タモリ倶楽部」だけで、単に期間で言えば文句なしにアタシの中での歴代一位だと思う。
「タモリ倶楽部」っていうのは「何でもあり(※ただしマイナーな事象であることが絶対条件)」な番組なので、もう幾多の企画をやってきたわけです。
ところが最初は完全にマイナー志向で始めたのに、時の流れなどが重なって、いつの間にかメジャーになってしまった、と言っても差し支えない企画も出てきています。

その代表は何と言っても鉄道企画でしょう。
やっぱ、ほんの20年ほど前までは、鉄道が大好きという大人にたいしてネガティブ、とまではいかないけど、少なくとも「ありがち」とは言えなかったと思うんです。
というか鉄道オタクって「ライト層」はいないと思う。つか普通に生活してたら電車の基本的なことは知ってるわけだから、いわば「国民総ライト鉄道オタク」になってしまうわけで。

つまりアタシの中では、鉄道オタクなんて濃い、いやもう超濃厚な人しかいないイメージなのです。
そういや「名前がややこしカ!」なんてタイトルで、関東のJRの路線名がわかりづらすぎる!みたいなことを書いたけど、ああいうネタが一番コワい。濃い~人たちから「あのさぁ、あんた、何で上野東京ラインなんて名称が出来たか知ってんの?知らずによくそんなこと平気で書けるね」みたいに言われそうで。

鉄道オタク、といえば、乗り鉄を中心に車両や路線オタクもいるし、広義で言えば鉄道模型も鉄オタの一種だと思う。あと、いろいろあるけど撮り鉄も。
だけれども、アタシは「歌鉄」なんてのがあってもいいと思う。つまり、鉄道ソングのオタクです。
それこそ「鉄道唱歌」から始まって、無数と言ってもいいくらい鉄道をテーマした歌はあります。明治演説歌(現注・の説明はややこしいのでココ参照)でいえば「まっくろけ節」なんかも、まァ広義の鉄道ソングでしょう。

さすがに「鉄道唱歌」や「まっくろけ節」は古すぎるにしても、最近の楽曲でも鉄道を絡ませたものは多い。そういや情報番組なんかで鉄道関係を取り上げる時のBGMは、テレビドラマ版「電車男」のオープニングテーマだったエレクトリック・ライト・オーケストラの「トワイライト」が多いですね。ま、「電車男」に使われただけで「トワイライト」は別に鉄道をテーマにしてないけど。
ま、それでも「旅」をテーマにしてあるには違いないのですが、アタシが「旅」、そして「鉄道」となって、真っ先に頭に浮かぶのが今回の表題曲である「ルージュの伝言」なんです。

もう今では「ルージュの伝言」の立ち位置は「ジブリソング」に含まれているらしい。もちろん「魔女の宅急便」で使われたからなんだけど、何しろアタシはジブリは見ないからね。よくわからない。
だから、もう、下駄なし、完全に楽曲そのものから受けた印象になるんだけど、アタシ的にはメロディといい、アレンジといい、こんなに「電車に揺られている感」のある楽曲もないと思う。

ってあんた、歌詞読んだことあるの?と言われそうだけど、もちろん歌詞も知ってますよ。うん、たしかにあれはチクリ歌詞ですな。それは否定しない。
しかもかなりタチの悪い女性が主人公です。旦那(カレシ?)の母親に浮気をチクりに行くことはそこまでタチが悪いとは思わないけど(浮気する方が悪いんだし)、その行動を心底楽しんでる感じなのがタチが悪い。
一応躊躇する気持ちも入ってるけど「(そういうことにしておいた方が気分が盛り上がるから)♪ ふゥあァんなァ気持ォちを残したまま~(ってことにしておくけど、本心はチクリが楽しみで仕方がない)」みたいに聴こえる。

何でそう聴こえるのか、それはもちろんメロディとアレンジにあります。
何というか、メロディもアレンジも、何の躊躇もないんですよ。それより今からやろうとしていることへのワクワク感が抑えきれないっつーか、はやる気持ちを抑えられない、どう?そんなワタシ、ってな感じにしか聴こえないんです。
それくらい疾走感がある。同時に旅のワクワク感や電車に揺られて、流れる景色を見ながら、とことん自分に酔ってるというか。

話は変わるようですが、藤子不二雄Aは「笑ゥせぇるすまん」を描くにあたって電車の中から見える景色から想像を膨らませて創作していたようです。
電車の中から見える景色、というのは自宅からスタジオまでの、まァいや通勤の時になる。

毎日見える景色が変わらない通勤なんかとくにだけど、鉄道オタクでもなんでもない人間にとって、電車の窓から見える景色なんて退屈なんですよ。今はスマホがあるからみんなスマホを見てるけど、昔は意味もなく窓の外の景色をボヤーッと見ていた。んで、毎度思う。やっぱ、退屈だなぁ、と。
藤子不二雄Aは想像を膨らませることによって退屈なはずの時間を創作の時間に変えた。しかしこれは実は誰にでも出来ることなんです。

「ルージュの伝言」の歌詞の主人公のように、これはこれから起こるドラマチックな出来事の序章なんじゃないか、みたいな感じで窓の外を見ると、見える景色が変わる。冗談じゃなく本当に変わるんです。
何気なく存在している普通の住宅も、歩いてるだけの人も、ただ走ってるだけのクルマも、まるで映画のワンシーンみたいに見えてくる。
そうなるとシメたもので、電車に乗ることが楽しくなる。鉄道オタクみたいに「これは◯◯という形式の車両で云々」とか知らなくても、いや知らないからこそ、流れる景色に集中出来るのです。

いわばこれは「超濃厚鉄道オタク」向けの一曲ではなく「国民総ライト鉄道オタク」向けの一曲なのです。つまり「電車って実はこんなに楽しいんだ!」みたいなことを教えてくれる曲と言えばいいか。







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