以前、だてレビsideBというアタシが大好きなYouTubeチャンネルに出演しているエリツィンさんという方について書いたのですが、もうひとり、どうしても取り上げたい方がいます。
アタシは何度も「会話=掛け合い」だと書いてきた。ましてや会話そのものを他人さんに聴かせる場合は掛け合いになってないと、とても聴いていられない。
ところが、じゃあ全部が全部掛け合いになってないといけないのか、と言うと、そこが難しいところで、全編が掛け合いだと逆にしんどかったりするんです。
つまり他人さんに聴かせる前提の会話は
・掛け合いパート
・誰かひとりが説明or持論を述べるパート
の両方あるのが望ましいというか。
もちろん出演者の数で必要な説明or持論パートが変わるし、その間、他の出演者は聞き役というか相槌役に徹することが求められる。これもまた難しところでして、相槌役と言っても本当は<適度>にツッコんだりチャチャを入れたり疑問を呈したりした方がいいんだけど、少しでも手数が多いと途端にウザい感じになってしまう。
つまり他人さんに聴かせる前提の会話を成立させようと思えば出演者に相当な能力が求められる。
まず、ある程度ひとり喋りで<間>を保たせられるだけのトーク力がいる。そしてちゃんと掛け合いに聴こえるだけの、相手の話を聞く力というか理解力と、簡潔に合いの手を入れる能力が必要、ということになってしまいます。
しかしアナウンサーや芸人さんのような<喋りのプロ>ならともかく、YouTubeの出演者にそこまで求めるのは酷な話で、実際、そこまで出来ている人はほとんどいない。とくに、ひとり喋りはともかく、気持ちの良い、聞き心地の良い掛け合いとなるとプロの喋り手でもなかなかハードルが高いわけで。
アタシも何度か自分のチャンネルで、ひとり喋りではない、会話方式の動画を上げたけど、編集前の段階では本当に酷いもので、所詮「ただ友達同士でダベってるだけ」のものでしかありません。
それを徹底的に音声編集して、掛け合いに聴こえるようにしてる。あれ、すんげぇざっくりした動画に思われるかもしれないけど、実は細かい<間>も相当考慮してテンポを出してるんです。
もっともこれが可能なのは事前録音だからで、生配信の場合はそれも無理。つまり生配信は喋り手のトーク能力がそのまま出てしまうわけで、これを何の鍛錬もしていない人にやれったってそれは無理な注文です。
逆に言えば、生配信で、複数の出演者で、ちゃんと成立させているって、ものすごいことなんですよ。
だてレビsideBさんで言えば、主宰のキーフレームさんはどちらかと言えば「ひとり喋り特化型」の人だけど、というかご本人がどれほど自覚されているのかわかりませんが、この人のひとり喋りは聞き耳を立ててしまいたくなる魔力がある。これこそ簡潔に言うのは難しんだけど、独特の緩急と抑揚があって、ああいうのを聴くと「やっぱり坊主の倅の喋りは何か違うな」と思ってしまう。同じく坊主の倅である植木等の喋りと類似した<何か>を感じます。
以前しっかり書かせていただいたエリツィンさんは逆に「受け手特化型」という感じで、典型的な大番頭なんですが、ひとり喋り特化型のキーフレームさんと受け手特化型のエリツィンさんがいれば番組として成立する。
ただこれだけではテンポが毎回同じになってしまうので、出来るならあとひとり出演者がいた方が幅が広がるのですが、準レギュラーのトカゲキングさんとマーモニさんは「キーフレームエリツィンコンビのベースを邪魔することなく、良い感じに広げてくれる」存在になってます。
トカゲキングさんは可憐な見た目に反して土台補強型の人で、さすが法学部出身だけあって余計な妄想を持ち込むことなく、事件を「ただの事実」として捉えているのが素晴らしい。ある意味キーフレームさんやエリツィンさんよりも現実的な視点があります。
そして・・・、今回アタシが熱く語りたいのがマーモニさんです。
ただマーモニさんについて書くのは非常に難しい。ひと言で言うなら万能型というか、本当に何でも出来るからで、たしかに役者であることを考えればアドバンテージはあるんだろうけど、では世の役者が同じようなことが出来るのかというと、たぶん出来ない。
いやマジでマーモニさんの万能性は本当に凄くて、長いひとり喋りも(しかも硬軟&下ネタどれでも)、合いの手も全部やれる。ごく稀に仕切り役をされることもありますが、これもやれる。むしろ「何が出来ないの?」という感じなのです。
それに加えて「番組の構成」をしっかり把握されている。番組後半での話を前フリ的に触れることはあるけど、絶対に細かくは入り込まない。
カッチリした構成でも、構成も何もないアフターでも、常に能力が発揮されるというのは正直YouTube出演者の枠を超えてると思う。こんな優秀な人テレビタレントでも早々いない。
何故こんなことが出来るのか、それはとにかく「言葉が簡潔だから」です。
かの横山やすしの名言に「ツッコミは電報」というのがありましたが、これはツッコミに限らず、合いの手、混ぜっ返し、疑問の提示など、他の誰かがメインで喋ってる時に言葉を挟むのって本当はめちゃくちゃ難しいのです。言葉が長くなると「話を取っちゃった」みたいになって聴いてる側がイライラする。
だから電報くらいの短さで、要点だけを簡潔に、メインで喋る相手と視聴者に伝える必要があるのですが、たぶんマーモニさんはそういうことをかなり意識してるはずで、マーモニさんがいくら言葉を挟んでも「余計」とか「邪魔」と思うことが一切ない。
正直これを素人さんにやれってのはきわめて難しい。最近ゲストで来られてる夏希さんは出来てるので安心して聴いてられるのですが、他のゲストの方にそれを求めるのは酷なレベルで、しかもリモート出演の場合は現場の空気が読み辛いので、話を横取りしちゃった、みたいなことになりやすい。
というかリモートの場合はそもそも合いの手も必要ない。というか無理です。もしかしたらマーモニさんくらい達者な人でも無理かもしれない。それよりも意見を求められた時に「しっかり、簡潔に説明出来る能力(この場合は多少話が長くなってもいい)」があればそれでいいような。
つかね、このチャンネルって、いやこの「ミステリーアワー」という番組って、スタジオこそ如何にもYouTubeでごさいって感じだけど、出演者のレベルはそこいらのテレビ番組よりもよほど高いんですよ。
これは番組全般にかんしてだけど、とにかくメリハリがこんなしっかりした番組はない。一見<のんべんだらり>に見えるけど、実は相当緻密な構成でやってるし、ってもガチガチに構成を決めてるんじゃなくて、話の流れで多少順番を前後出来るだけの柔軟性もある。だからメリハリがはっきりする。
こんなのそう簡単に真似なんか出来ないし、したら大やけどする。つかホント、絵面に騙されちゃダメの見本みたいなもんです。
もしアタシがカネがたんまりあったら「TVのチカラ」の、あのグイングイン動くセットを再現して、それで「いつもと変わらない」メンバーと内容でミステリーアワーをやって欲しい。もちろん「いつもよりセットが豪華ですね」なんて触れない体で。