たぶんこれは令和になってから顕著になってきたような気がするのですが、いわゆる「商業ビル建て替え問題」のニュースを本当によく目にする。
そう言えば、ココでも書いた五反田にある(駅からはわりと遠いけど)TОCビルですが、近々に解体予定で、昨年には順次テナントが撤退していってたのですが、建築費高騰が原因で一旦解体取り止め、んで撤退していたテナントが復活したり新たな店舗が出来たりで、営業を再開しました。
これは余談ですが、TОCビルが取り壊しになると聞いて、ちょうど一年前くらいにわりと丹念にTОC内部を撮影してきたのですよ。またいずれ書くけど、ここはいろいろと思い入れがあるんで。
ま、それも無駄になっちゃったっていう。
あと中野サンプラザも建て替えるの建て替えないだの議論されてますが、TОCビルにしろ中野サンプラザにしろ、ここまで大型のビルって必要なのかなって。
って、大型ビル不要論を言いたいわけじゃないし、アタシはTОCビルのような巨大ビルは大好きです。
ただね、もう、インフラに関わるような施設って、新たに作る場合、これからの時代、ものすごく慎重にならざるを得ないような気がするというか。
こないだもスーパーマーケットのチラシの動画を上げましたが、チラシだけでなく店舗写真もいろいろ収集しており、とくにグランドオープンの写真がいろいろ感慨深かったりします。
そうは言っても、それらの店舗に行ったことがあるかというと、ほとんどない、ということになるのですが、何かね、あの、独特の、希望に満ち溢れた感じが、今見ると何とも言えない哀愁を感じる。
郷愁じゃないですよ。哀愁です。つまり「この施設が未来永劫あって、これから街がどんど発展していく」という希望があまりにも丸出しで、それが哀しくなる。
当たり前だけど、施設ってのは完成した瞬間から老朽化の道を歩んでる。これがイギリスのような地震がほぼない国ならともかく、いずれは取り壊される運命にあります。
つまり老朽化しない施設などない。となるといずれ「建て替え」か「超大幅改修」が必要になる。
もちろんカネがかかるのは「超大幅改修」の方で、これが甲子園球場のような歴史的建造物ならともかく、普通は解体後建て替えをする。
でもこの不景気な世の中で、また建築費高騰という現実がある以上、そう簡単じゃない、と。
さらにです。
建て替え検討時期に入る建造物が建てられたのは今から50年ほど前でしょう。で、この50年であきらかに人の流れが変わってる。
50年前の時点では「街がさらに発展する」と考えられていた地域が衰退の一途を辿ったりしてる。
何でそんなことが起こるのか、これ、考えてみたら結構面白いんですよ。
ちょうど今から50年ほど前、つまり1970年代半ばくらいがベッドタウン移住のピークだったと言ってもいい。
都心に一軒家は建てられない。もう庶民が一軒家を建てられるほどの土地を購入するのが不可能になったからです。
それでもやはり集合住宅は嫌だ、一軒家に住みたい、と思う人に向けて都心の郊外に次々とベッドタウンが作られた。ギリギリ、ま、本当にギリギリですが、都心に通勤「出来ないこともない」場所に、です。
これらのベッドタウンの謳い文句はたいてい「自然豊か、空気が綺麗」とかでしたが、言うまでもなく「ただの田舎」だっただけなんだけど、それでも「将来を見越して」これらのベッドタウン住宅が飛ぶように売れたのです。
おそらく大多数の住宅は、購入の決定権は大黒柱だったはずの父親にあったはずで、子供に一軒家を残してやりたい、というのも購入の大きな後押しになったと思う。
結果、田舎でしかなかった街は発展した。駅前も賑わった。鉄道も乗客が増えてウハウハだった。
でもそれって、その大黒柱である父親が定年まで、つまり「通勤する必要がある」頃までなんですよ。
若者は田舎のベッドタウンになんか愛着を持たない、は言い過ぎだけど、風情もなくただ不便なだけの場所に愛着を持ちづらい。だから一定の年齢になると出て行く。
残されたのは、かつて大黒柱だった年老いた人ばかりになる。もちろん「年寄りだらけの街」に活気などあるはずもなく、風情もなければ中途半端に開発されて自然もたいしてないので、そこはただ古臭いだけの寂れた街になるわけです。
通勤でも通学でも使う人がいない、となると、当然のように駅前も寂れるし、電車もガラガラ。そうなったら今度は「路線の廃止」が現実味を帯びる。
こうして1970年代の郊外ベッドタウン計画は、50年後の未来から見ると「ゴーストタウンを生み出す元凶」になってしまったと。
かと言ってボロボロになった住宅や駅前ビルも簡単に取り壊せない。これは昨今問題になってる固定資産税の問題だけど、更地にしてしまうより取り壊さないで現状維持で置いておく方がトク、という現実がある以上簡単ではない。
鉄道のようなインフラも難しく、インフラである限り「赤字=廃線」と出来ないのが悩ましいところで、ベッドタウンに伸びる路線を持つ鉄道会社はどんどん経営が苦しくなる悪循環です。
かと言って廃屋や廃ビルを放置しておくと思いっ切り治安の悪化につながる。
アタシは神戸出身ですが、新開地のような「かつて栄えていたばっかりに逆に<寂れ>と<治安悪化>が目立つ」場所が、つまり日本中に「リトル新開地」が出来る事態になってしまったと。
もう一度言いますが、施設というのは完成したらそれで終わりじゃない。維持も必要だし、そう遠くない未来に老朽化して取り壊さなきゃいけなくなる。
街もそうで、ずっと右肩上がりの発展なんてあり得ない。そのうちここも<野>に帰るのだろう、という考えが必要なんじゃないか。
つかもう、右肩上がりなんてあり得ないは当たり前だとして、そんな時代がまた来るなんて誰も信じられないのよ。
だったらさ、もう、最初から、いずれは更地にする前提で施設を作った方が良いような気がするんだけど、地震大国のこの国ではそれも難しいよなぁ。