-早いもので、Yabuniraチャンネルを開設してから半年が経過しました
「そんなになりますか。早いですねホント」
-なのでこのインタビューではその感想などをうかがって行きたいのですが
「さすがに早すぎませんか?たった半年ですよ?」
-むしろ、こんな早い時期に、というのは珍しいと思いまして。たった半年で振り返り企画なんて誰もやらないですからね。それに半年しか経ってないということは、まだ開設前、開設直後の記憶も鮮明でしょうし
「ま、たしかにね。たった半年前だから、いくら記憶力の悪いアタシでもいろいろ憶えてる」
-まずは構想段階での話をおうかがいしたいのですが
「構想段階って、どこからですか?」
-そうですね。一番最初、YouTubeを自分でもやってみようと思った時期からお願いします
「これはずいぶん遡らせますね。うーん、そうだなぁ。何度も書いてるようにYouTubeを本格的に見始めた時期は2019年の2月くらいなのですが、自分でもやってみようかな、と思ったのは、たしかその年の秋くらいだった気がする」
-何かきっかけがあったんですか?
「これが憶えてないのよ。ただ、映像の編集というものには前々から興味があって、と言っても自分がやるやらないではなくね、もしかしたら「映像のエンターテイメント」の8割くらいは編集で決まるんじゃないか、と思ってたんですよ。そしてその思いがとくに強くなったのは「水曜どうでしょう」の「初めてのアフリカ」の回を見たことだったんです」
-「初めてのアフリカ」の放送が2013年ですからYouTube開設の10年ちょい前ですか
「そんな前になるのか。そりゃトシをとるはずだわ。それはともかく、何であのアフリカ回が面白くないか、いったい以前の、レギュラー放送の頃の「水曜どうでしょう」と何が違うのか、それを考えていったら、もう<編集>しかあり得ないぞ、と」
-よく「水曜どうでしょう」という番組は大泉洋とミスター(鈴井貴之)の「やられっぷり具合」で面白さが決まるとも言われてますが
「アタシはまったくそういう見方をしてなかった。アタシが好きな「アメリカ横断」も「ユーコン」も、別にそういう要素は薄いからね。でもこれらの好きな回と比べるとアフリカ回はもう、あきらかにダラダラした編集で、とにかく見ててかったるかった、というか。んで、何度か書いてるように、その6年後に見たカズチャンネルに衝撃を受けたんです」
-すみません。話がつながってません
「いやつながってます。カズチャンネルで一番衝撃だったのは圧倒的な編集の上手さで、アタシのYouTube感を根本から覆してくれた。編集によって「リズムがみなぎる動画」になっていた。そして方向性は違うとはいえ、レギュラー放送だった頃の「水曜どうでしょう」に近い<何か>を感じたんです」
-ああ。そういえば以前も「「水曜どうでしょう」と「カズチャンネル」には編集の<発明性>のようなものを感じる」とおっしゃってましたね
「そうか、編集にはこれだけの力があるのか。上手い編集なら現場映像というか素材としてそこまで面白いものじゃなくても映像作品として文句なく面白くなるし、逆に編集がダメだとどれだけ面白い素材を集めても冗長だったり、切りすぎて何がやりたいのかさっぱりわからないみたいなシロモノが出来るんだな、とね」
-それで自分でも編集をやってみたくなったということですね
「なってないです。いや後々なっていくんだけど、少なくとも2019年末の時点ではなってない」
-え?編集がやりたいからYouTubeを始めようと思ったんじゃなかったんですか?
「それはどちらかと言えば後付けの理由です」
-だったら何が具体的なきっかけだったんですか
「さっきも言ったように、具体的にこの動画を見て、というのは記憶にないんだけど、とにかくいろんなYouTube動画というかユーチューバーの動画を見ていくほどに、ふと「アニメーション」というアイデアが浮かんだんです」
-アニメーション?
「だいたいの動画の冒頭に短い導入部としてアニメーションを使ったりしてるんだけど、これ、もっとね、いろんなパターンのアニメーションをブリッジだったりに挿入していけばいいのにな、と。つまりアニメーションそのものとアニメーションを挿入するタイミングでリズムを作ってやることは出来るんじゃないかというアイデアというかね」
-オープニングやエンディング、あとブリッジでアニメーションを挿入しているユーチューバーは多いですからね
「そうなんですが、基本的には全部、使い回しなんですよ。もちろん使い回しが基本とは言え、もしアタシがやるのであれば、毎回何本か新作の、内容に即したアニメーションを挿入したいと。ま、イメージとしては「ゲバゲバ90分!」みたいな感じというか。それで独自性が出せるような気がして」
-それは独自性は出せますが、そもそもの話、アニメーションとか作ったことなかったですよね
「そうなんです。だからアイデアの段階で終わってしまった。つか、仮にアニメーションが作れたとしても、じゃあアニメーション以外っつーか、内容にかんしてのアイデアがあったかというと何もなかったので、そこで終わってしまったんです」
-だからしばらくペンディングになってたんですね
「ただね、たとえアイデア倒れだったとしても「もし自分がYouTubeをやるのであれば」みたいな発想に一回でもなったことは事実で、以降も、何かアイデアはないか、ということを考えるようになっていった。だから<きっかけ>としては大きかったと思いますし、さすがに「ゲバゲバ90分!」とはほど遠いけど、頑張ってアニメーションを作るというのをやってるのもこの初期発想の<名残り>だと思う」
-それが現在の予告編につながったということですね。あとたしかに一回でも始めてみようと思ったことに、自分でもビックリするくらい執着するってのはあることですからね
「いわば「火がついた」ってことなんですかね。とにかくそれで、もし良きアイデアがあればやってみてもいいと思い始めたのは事実なんだけど、内容にかんするアイデアがなかなか浮かばなくて。そこから一旦「<街>を題材にする」と決めるまでだいぶ時間がかかっています」
-<街>YouTubeは結局実現しませんでした
「それでもね、かなり撮影はしていたのですよ。もう使い道はないけど、とくに東京に越してきた2023年の夏からは暇を見つけてはいろんな場所に行って撮影していたのです」
-少なくとも開設から半年の時点でまったく実景映像がないチャンネルだと思えば、かなり不思議ですよね
「そういや「じゃりン子チエ」の回でね、使えるかなと思って、2024年の夏に関西に帰省した時に萩之茶屋に行く用事があったので、駅から商店街をかなり丹念に撮影してきたのですよ。でも設定をミスっちゃって手ブレが酷くて使い物にならなかった。ああもうこれは、まだお前には実景映像は早いというお告げだなと」
-ま、お告げではないと思いますが、もう<街>はやらないってことでいいんですよね
「それはわからないです。やるかもしれないし、やらないかもしれない。ただ<街>をテーマにして今くらいの密度の動画にしようと思ったら一本作るのにメチャクチャ時間がかかるので、仮にやるにしてもずいぶん先の話でしょうね」
-ただ正直、実景映像メインの<街>チャンネルから、一切実景を使わない映画についてのチャンネルは方向性が違いすぎるというか、内容というよりも<作り>としては真逆にも思えるのですが
「これはものすごく簡単な理由なんですよ。つまり実景メインの<街>チャンネルがある種の理想だとするなら、もう徹底的に、今の自分でも実現出来る映像って何なんだろう、と考えた末、ああしたスタイルになった、と言うだけです」
-理想を捨てて実現性を最優先させたと。でもそれであればやはり話が違ってきてると思うんですよ。先ほどの話では「良いアイデアがあればやる」という感じだったのが「アイデアはないけど、何が何でもYouTubeを始める」みたいに変化しているように感じます
「実際その通りで、2024年に入ったくらいから完全に「やりたいアイデアじゃなくても実現可能なアイデアならとりあえずやってみる」という方向にシフトした。いやもっと言えば「YouTubeやってるんで」と人に言いたかったというか」
-何ですかそれは。自己顕示欲の変種ですか
「違うんですよ。何かね、様々な知識をお持ちの方と楽しくお話しをさせてもらう機会ってあるじゃないですか。そういうのを全部記録しておけたらいいなと。でも、やおら、ボイスレコーダーを出すのもアレだし、だったら「YouTubeやってるんで、録画はダメでも録音させてもらえませんか?」と言えるじゃないですか」
-ああ、それならまだわかります
「だからね、本当、YouTubeチャンネルを運営してるっていう実績が欲しかったんですよ。んでもし、ウチのチャンネルが有名にでもなろうものなら、もしかしたら相手さんから「録画しなくていいんですか?」なんて言われるかもしれないし、先方から話を持ってきてくれるかもしれないな、と」
-録画にしろ録音にしろ、会話の記録にこだわり出したと
「友人ともよく喋るのですが、今までその友人ともいろんな話をしてきたけど、もし全部録音してたらメチャクチャ面白かっただろうな、と。また別の話で、自分たちが好きだった著名人がどんどん鬼籍に入られてるじゃないですか。でももし、まだご存命の方に話をうかがうことが出来たら、何がなんでも録画か録音をしておこうと」
-それだけ聞くとインタビューチャンネルをやった方がいいんじゃないですか
「やりたいです。というか一番やりたいのはそれです。ただインタビューを受けていただくには「YouTubeチャンネルをやってる」という事実が必要だし、大物の方に出てもらうとなるとチャンネル登録者数みたいな実績も求められることになると思うわけで、そのための準備として、長く続けられること、それなりの頻度で更新することが出来るのであれば何でもいいやと」
-今後はインタビュー動画も出てくるということですね
「実は<街>チャンネルを思いつく前の段階でも一回インタビューチャンネルの構想はあったんですよ」
-あ、そうなんですか。それは何で実現しなかったんですか?
「この時点でのインタビューチャンネル構想は全員が素人というか「貴重な体験をした人」だったり「メンタル的な病気に苦しむ人」だったりにしようと思っていたのです。ただしそれなら相手さんの顔は映せないし、じゃあ映像が何もないことになってしまう。さらに相手さんの事情を最大限考慮しなきゃいけないし、タイミングも悪かったというか、思い付いたのがちょうどコロナパンデミックの頃だったのもよくなかったというか。発想自体は悪くなかったと思うけど、具体化させようとする毎に実現性のなさを思い知らされた」
-やはり素人さんはねぇ。ましてや今はプライバシー保護の考えが強いですし、難しいですよね
「結局ね、昔あった「電波少年」で「売れない芸人」を引っ張り回すのは合理的だからなんだってことに気がついて。売れてる芸能人にしろ一般人にしろ何らかの仕事をしてるわけで、長期間海外とかに連れて行けないんですよ。その点「売れない芸人」はある意味無敵の人で、ちゃんとギャランティの確約さえすれば、少々手荒なことをやっても大丈夫だったりする。つかあまり遠慮がいらない。でもこうした<遠慮>って絶対に映像からにじみ出てくるものだし、もし制作者側に<遠慮>があると視聴者に伝わったら、こんな痛々しい映像はないですから」
-例に挙げられた「メンタルに不調を抱える人」にインタビューとなったら、多少親しい間柄でも遠慮をゼロにするわけにはいきませんものね
「アタシはアナタと違ってプロのインタビュアーじゃないからね。絶対変な空気になる自信がある。アナタなら上手くやるんだろうけど」
-ひっかくぞ。このゴマスリメガネ
「メガネかけてないんですけど。つかいつからムス子さんになったんですか。そんなことよりPage2に続きますよ」