不遜かもしれないけど
FirstUPDATE2024.7.27
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もうね、不遜だ自分を買い被りすぎだと言われるのを覚悟で言うけど、昨今の「お笑いマニア」を作り出す一翼をアタシが担ってたんじゃないかって思う時があるんです。

アタシの大好きな「だてレビsideB」のキーフレームさん(おそらくアタシと同学年)が小林信彦著の「日本の喜劇人」を指して「おそらく我々の世代は全員読んだことがある」と冗談めかして発言されていたのですが、小林信彦が本当に見巧者なのか、その言葉の信憑性があるのかはこの際置いといて、<笑い>を分析してマジメに論評することの先駆者が小林信彦なのは間違いない。
それまでも限られた範囲での劇評やコメディアン、ヴォードヴィリアンの人物論はありましたが、<抜け>はあるとは言え「過去に遡って著名なコメディアン、ヴォードヴィリアン全員を総ざらいで論ずる」という書籍はほとんどなかった。

強いて言えば旗一兵の「喜劇人回り舞台」がそれに当たりますが、この書籍は日本における喜劇の歴史書のような内容で、いわゆる論評とは違う。
また、喜劇とは何か、人を笑わせるには、といった研究書、ハウツー本とも一線を画しており、とにかく「日本の喜劇人」は1970年代前半という時期を考えれば本当に画期的だったと思う。
ただ、以後、そうした類いの書籍が発売されていったのかというと、実はほとんどなかったりします。
色川武大の「なつかしい芸人たち」は鋭い考察が入っているとはいえ論評というよりエッセイに近いものだし、わずかにラサール石井が書いた「笑うとは何事だ!ラサール石井の平成のお笑い人」が網羅的なコメディアン論、ヴォードヴィリアン論でしたが、これがアタシの知る限り唯一の例外です。

どちらにせよ、小林信彦然り、色川武大然り、そしてラサール石井を含めて、まァ「名士」といって差し支えない。つまりある程度の立場のある人が書いたもの、と言い換えてもいい。
アタシが芸人論めいたものを本格的に書き始めたのが2005年のはじめですが、その頃は「ド素人が<笑い>を語るんじゃない」みたいなムードは確実に存在しており、インターネット上で、それこそ漫才論のようなものを書いてる人はいなかったと思うし、またすでに確固たるポジションになっていたM1について語る、みたいな文章も見かけなかった。

とにかくです。アタシがそうしたことを書き始めたのは「そんな頃」だったのです。
変な話、アタシが<笑い>について書き出した頃からそういうことを書く人が増えた。何のデータもないけど実感としてはそうでした。というか、似たようなことを書いてる人がいないかわりとマメにチェックしていたので(他の人と同じようなことを書いてもしょうがないと思っていたので)、わりと目ざとい方だったと思う。んで、マジ、2005年を潮目にして「ド素人による<笑い>論」が幅を効かせるようになっていった、そういう実感があります。

以降、元芸人でも裏方出身でもない、純粋なライターで<笑い専門>の人がポツポツと出始めた。名前は挙げませんが、ま、今もいろんなところで何名か名前をお見かけするような方々です。
そんなのたまたまだろ、と言われるのはわかっているのですが、正直、当時、ウチのサイト(yabuniramiJAPAN=現在のYabunira)はかなりのアクセスがあったし、たぶんこの時代で言えば<笑い>にかんするブログでは一番アクセスが多かったと思う。
さらに、文章とか、構成とか、あ、これ、アタシの影響を受けてるな、みたいなブログもかなりあった。ま、それも「たまたま」と言われたら何も言い返せませんが。

アタシ自身はココでも書いたように、心底<笑い>についてあーだこーだ書くのが嫌になった、というか、もう漫才やバラエティ番組を見ることさえ嫌になっていた。というか完全にトラウマにまでなった。
だからこの「ド素人<笑い>論ブーム」から早々に足抜けしたんだけど、何かね、ちょっと、変な風潮を作っちゃったな、という気持ちがあって。
いや何度もしつこいけど、実際はアタシの存在なんか、今のド素人<笑い>論ブームとは何の関係もないかもしれないし、それならそれで嬉しい。むしろ「関係なくあってくれ」とすら思っている。
でもねぇ、良い流れか悪い流れで言えば、もうあきらかに悪い流れだとしか思えないんでね、やっぱ、責任は皆無ではないような。

功績を正当に評価して欲しいなら、同時に「悪いことした」って思うことは素直に懺悔しなきゃね。
ま、この話の場合、とりようによっては不遜にも見えるから難しいんだけど。







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