ユーチューバー、オモロイかオモンナイか論争
FirstUPDATE2024.5.16
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もう定期的に「ユーチューバーが面白いか面白くないか」みたいな論争が巻き起こってるのですが、何だか、どうも、どれも論点がズレてるような気がして。

上岡龍太郎は愛情たっぷりに、天性のボケ芸人で、同じチームであり、いわば師匠とも言える横山ノックについて「ひとりで喋らせてもオモロない」とイジってましたし、ビートたけしも名だたる先輩コメディアンやヴォードヴィリアンの名前を挙げた上で「ひとりで喋って面白いとか、そういうんじゃないんだよね」と揶揄ともとれるような発言をしていた。
上岡龍太郎にしろビートたけしにしろ「ひとりで喋って」というのは「ひとりフリートーク」という意味なのでしょうが、そりゃあ、上岡龍太郎もビートたけしも、フリートークは自身の<売り>なので出来て当たり前なのです。

では「ひとりフリートーク」が出来なければ<笑い>にならないのか、というとそんなことはない。
というかビートたけし以前のコメディアン、ヴォードヴィリアンは軒並みフリートークが下手くそだった。それこそ例外と言えたのは上岡龍太郎などほんの一部の人に限られる。
つまり、クレージーキャッツの人たちもドリフターズの人たちもフリートークが苦手だった。だんだん場数を踏むことでコナせるようにはなったんだけど、得意になったわけじゃない。ことフリートーク芸に絞れば上岡龍太郎やビートたけしの足元にも及びません。

だからといって、フリートークが苦手だからとしても、じゃあクレージーキャッツやドリフターズが「面白くなかった」のかというとまったくそういう話じゃない。要するに彼らはフリートーク以外の芸で笑わせていたのです。
というか、笑わせ方というのは本当にいろいろあって、それこそコントの笑わせ方と漫才の笑わせ方でもかなり違ったりします。
いや、ここからもっと根本的な話になるのですが、面白い=笑える、ということではないのです。

笑わせ方が無数にあるように、面白がらせ方なんてさらにその何倍もある。
ミステリの面白さ、ホラーの面白さ、勧善懲悪劇の面白さなど映画に絞るだけでも無数にあるし、さらに書籍などまで広げると、もうどれだけ面白さの種類があるかわからない。当然ひとつのパッケージに様々なタイプの面白さが詰め込まれているのものだしね。
なのに、ユーチューバーなんてオモロないやろ、と言いたがる人って、ほぼ例外なく「芸人としての面白さ」、もっと言えば「フリートーク能力」の話しかしてないんですよ。

たしかにフリートーク能力はその人の「<笑い>のスキル」をはかる上での指標ではあるんだけど、あまりにもそれを絶対視しがちなんじゃないか。それこそそこだけではかるならクレージーキャッツやドリフターズなんて笑いのスキルの低い人たちってことになってしまう。
何というか、これはフェアじゃねーな、と。

ここからもっとそもそもの話をしますが、だいたいユーチューバー単体で面白いか面白くないか決めることに何の意味もない。というか<そこ>だけ取り出せば芸人に勝てるわけがないのです。
じゃあ芸人のYouTubeチャンネルがユーチューバーのチャンネルと比べて再生数で圧倒しているのか、というと、してない。
フリートーク能力で決定的な<差>がありながら再生数で<差>をつけるどころか負けてるケースも多々ある。これはいったい何なんだ、と。

これは初歩的な思い違いから端を発したことで、ユーチューバーはハナから「自らのフリートーク能力で笑わせよう」なんてしてないんですよ。ごく稀に「面白い=<笑い>の量」と勘違いしたユーチューバーはいるけど、ほとんどの有名ユーチューバーは<動画>というひとつのパッケージが面白い(≠笑える)かどうかにこだわってるけど、フリートークで、なんて刺身のツマくらいにしか思ってないと思う。
だから本当は「芸人の出ている番組(イベントでもいい)」とユーチューバーの動画を比較しなきゃいけないはずなんです。

「君も批判ができる」で散々書いたけど、「作品の魅力につながらない芸の能力なんて何の意味もない」んですよ。
逆に言えば、たとえ拙い芸だったとしても「作品の魅力に大きく付与している」ならば、それはそれで素晴らしいんです。
アタシの好きなカズチャンネルのカズさんはけして拙い喋りではないけど「立て板に水」で喋れる人ではない。でも間違いなく、あの喋り方が<動画>というひとつのパッケージに魅力を与えていることはたしかなんです。

だからね、それこそ粗品とかが「ユーチューバーとかオモロないやん」とか言っても「だから?そんなのフリートーク能力で言えば当たり前じゃん」としか思わない。
というかユーチューバーたちも「そんな当たり前のことを言われても・・・そもそも自分が芸人に勝ってるなんて微塵も思ってないし、つかそこで勝負してないし」くらいなんじゃないか。
別にユーチューバーを批判するなってことじゃないんですよ。つか批判はぜんぜんいいんだけど、あまりにも今のユーチューバーオモロいオモロない論争は論点がズレすぎてて、正直興味すら惹かない。

芸人なんだからさ、センセーショナルなカウンターパンチを食らわせようって姿勢はいいんだけど、だったらなおさら「だから何?」みたいなことを声高に叫んでもしょうがないでしょうが。ねぇ。







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