えと、ここんところ何回かTHEつぶろさんのYouTubeチャンネルについて書いてるのですが、THEつぶろさんもさすがにネタ<探し>には苦労しているようでして、随時ネタの募集をされているみたいで。
ま、だからといって実際にネタを提供しようってんじゃないんだけど、アタシに「詳細不明で調べたい、しかもブキミ要素のある」ネタとかあるかなってちょっと考えてみたんですよ。
そしたら、たったいっこだけあった。
あれはアタシが小学生の時だから確実に1970年代です。
ウチの父親が何でか漫画を買ってきてくれたのですが、これが実に変な漫画でして、とにかく薄くて50ページくらいしかない。
ま、薄い本なんて同人誌以外にもあるけど、これ、内容が内容というか。
テーマは「地獄」と「極楽」でね、要するに「地獄巡り」をテーマにした漫画で、っても上方落語の「地獄八景亡者戯」のようなユーモラスなものではなく残虐描写でページが埋められており、タイトルに極楽とはあるものの、極楽編は最後の方にちょろっとあるだけだった。
で、これが、現代、現代たって1970年代の現代だけど、やけに古い絵で、多色印刷だったのは間違いない。ただしフルカラーだったかまでは憶えていない。とにかく異様に古臭い絵がブキミさを増幅させていた、と。
この本、たしか神戸は元町にある浜屋って仏壇仏具店にも置いてあったはずで、あ、こんなところに売ってたんだ、と思った記憶がある。
たぶんそういう場所に置いてあるくらいだから、間違いなく仏教系の出版社が出したものだろうし、つまりは普通の書店には流通してなかったと思われます。
しかし、こんな漫画のことなんてずっと忘れててた。んで無理くり記憶を弄ってようやく出てきたネタというか。
ところがこれ、「地獄 極楽 漫画」で検索するとあっさりヒットした。タイトルは「地獄と極楽」。まんまです。
作者は野沢ともかつ(野沢知且)ですが、版によって作者が「中村ひろし」、監修として「野崎裕彦」になっているものもあり、正直よくわかりません。
で、実際の内容はこんな感じ。
そうそう、まさしくこれです!この絵柄の古臭さは今見てもブキミで、これは小学生なら余計ブキミに思えたことでしょう。
てなわけで疑問はあっさり氷解したのですが、もう少しだけ話を続けます。
この本を父親からもらった時、メチャクチャ正直に言って「この父親ダメだな」と思ったことは強烈に憶えている。
先日も書いたように、ウチの両親はアタシが中学生になるかならないかの時期に離婚している。で、アタシは母親に引き取られた。
アタシはこの父親にたいして、もう今さら憎しみはないとはいえ、これも書いたように「尊敬出来るところが何ひとつない、実にくだらない人間」だと今でも思っているんだけど、それは誰からか(それこそ母親から)、アンタの父親は酷い人間だ、と吹き込まれたからじゃないんですよ。
何というか、もう、この父親、致命的にセンスがない。
それは子供にこんな本を渡したという事実だけで十分で、言ってもこの本をアタシがもらったのは小学4年生とか5年生なんですよ。
さすがにその頃になると地獄のアトラクションなんか諳んじており、今さら漫画で見せられてもショックなんか受けるわけがない。そりゃ絵柄が古臭すぎるから多少のブキミさはあったけどさ、でもそれは「地獄は怖い」とは別の感情だし。
たぶん父親からしたら「悪いことをしたら地獄に落ちるぞ」と言いたかったんだろうけど、子供をナメ過ぎてるというか、もしそういう意図があるならせめてアタシが幼稚園の頃にプレゼントしなきゃ意味ないですよ。
とにかくこの本もだし、映画を観に行っても野球を一緒に見てても、父親は娯楽にたいしてのセンスが決定的に欠けており、アタシが尊敬していた母方の叔父が本当に娯楽のセンスが良かったので、余計にセンスのなさが目立ったというか。
それこそね、もうアタシはこの頃、すでにヒッチコックの「サイコ」とか「鳥」とか鑑賞済だったんです。それこそ叔父に連れて行ってもらってね。
つまり上質なホラーを体験している人間にとっては、たとえ子供であったとしても、こう言っちゃナンだけど「地獄と極楽」なんて漫画は子供騙しですらない。つか、んなもんで怖がるわけないっつーか、悪いことをしたら地獄行きになるんだ!とか思うわけがない。
ま、これこそ今となればですが、ここまで絶望的に娯楽へのセンスのない父親のことを、ちょっと哀れに思う。たぶん、娯楽の楽しみ方を知らないまま大人になったんだなぁ、と。
そう考えると、この漫画を思い出したことで、父親への憐れみの気持ちが強くなってしまった。ってこれもオカルトなのかもね。