アタシはね、そりゃあ小学生以下の子供でもいりゃ別かもしれないけど、大人なんだったら別に、誰がどんなYouTubeの動画を見てようが知ったこっちゃない。
ただ、たったひとつだけ、これは見ない方がいいんじゃないかなぁ、と思うものがあって、それがいわゆる「スカッと系」と言われるヤツです。
非常に簡素なアニメで、そのほとんどは男女の揉め事を描いているのですが、正直何じゃこりゃ、と。もう、辛辣に言えば「アホらしくてとても見てられない」って感じなんですよね。
典型的なパターンは旦那が浮気かなんかしていて、それまで奥さんは耐え忍んでいて、ある日突然家を出てね、んで旦那は後悔しきりで奥さんは自由を得て悠々自適、みたいな。
別に男性側が蔑まれているから「くだらない」と思ってるわけじゃなくて、たまに逆バージョンもあって、それはもちろん奥さんがトンデモでってパターンです。
どっちにしろ、すべての面で非現実だし、そもそも「やり返す」という発想が幼稚すぎる。そりゃ生死を彷徨うような仕打ちを受けたのならやり返すって心理もわからなくないけどさ。
何よりイタいのが相手側があまりにも馬鹿すぎるのです。
何というか、こんなヤツがいるとは思えないくらい馬鹿で、メチャクチャ都合良いキャラクターというか、チャンバラで言えば「振り下ろした刀のところに敵が都合良く飛び込んできた」って感じでね、つまりフィクションとしても0点なんですよ。
いやね、アタシは繰り返し書いてるように、体験談なんてフィクションだろうがノンフィクションだろうがマジでどうだっていいんです。しかし「フィクションだからリアリティが必要」というのも間違いなく、フィクションなのにリアリティ皆無とか致命的としか言いようがない。
つかね、離婚なんてしょうがないと思うし、そんなのいくらでもある話です。
でもさ、言っても相手は結婚までした人間ですよ。そんな相手にたいして「二度と関わりたくない」というのはわかるんですよ。でも「ざまあみろ」というのは本当にわからない。ましてや子供がいたりして、その子供の父親でもある相手を叩き潰すようなことをするってのがもう理解出来ない。
仮にその旦那の方に非があったとして、子供にとっては永久に父親であることには違いないんです。つまり自分は離婚したら関係ない人になれるけど子供はそうはいかない。どれだけくだらない父親でも血のつながりは消せないんだから。
そうこう考えたらとてもじゃないけど「ざまあみろ」とはなれないと思うわけで。
これは間違いなく言えると思うんだけど、こういう動画で「スカッと」する人間は極端に想像力とか共感力がないんだろうな、と。理由はさっき書いた通り、子供のことを考えたらスカッとなんかするわきゃないから。
だからね、アタシがこの手の動画を見てメチャクチャ腹が立つのは要するに「子供の立場」で見てしまうからなんです。
ウチの両親は離婚しています。んで母親に引き取られた。ま、よくある話です。
正直言えば父親にたいして好ましい感情は一切ない。大人になって「100%母親が正しいわけでも、100%父親が悪いわけでもない」というのはわかったけど、父親に何一つ尊敬出来る箇所がない、というのは50代なかばになった現在でも変わっていない。
でもね、そんな、尊敬出来る箇所皆無の父親であろうと「血のつながった親子である」ことは変えようがないんですよ。
あんなサイテーな人間の血を引いてることが許せないと思ったこともあったけど、いつしか諦めの境地に入った。
だって、どうしようもないから。
誰かを憎みながら生きていくのはしんどいです。ましてや幼少期に「あれは憎むべき人間だ」と植え付けられて育った場合は確実に歪む。
そういうね、苦い記憶というか苦い体験があるから、あんな動画を見てスカッとするなんてあり得ない。むしろ「この女は自分さえ良けりゃいいんだな」としか思えない。
もう一度言います。結果、離婚するのはしょうがない。でも、どれだけサイテーな父親だったとしても、母親は子供が父親を憎むような言動はしちゃいけない。それは離婚する上で親権を持つ側がやらなきゃいけない最低限の教育です。
よく離婚して片親になってね、父親(母親)がいなくて<寂しくて>かわいそう、なんて言いますが、寂しいなんてたいしたこっちゃないですよ。それは遅かれ早かれ終わることだから。
そんなことより「憎しみのある人間と血がつながった親子」って方が大人になっても付き纏う問題で、それを抱えて生きていくのがどれだけ大変か。いや面倒くさいことか。
つまり「相手は嘘臭いサイテーさ」で「主人公はリアルなサイテー」なわけで、そりゃあね、誰であってもこんな動画見て欲しくないのも当然というか。