ハタから見て儲かってそうな
FirstUPDATE2023.9.19
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こないだね、パラパラと元吉本興業の大崎洋の著作を読んだんですがね。ま、ダウンタウンとの秘話とかはわりとどうでも良くて、それよりも内圧と外圧の話のが圧倒的に面白かった。

これは「複眼単眼・吉本」でも書いたんだけど、戦後しばらくの吉本興業は寄席経営会社でも芸能タレント事務所でもなく、ボウリング場の経営や不動産で利益を得る会社だったんです。
それが1959年に再び興行会社へと転じ、1980年頃に巻き起こったマンザイブームで勢いに乗って1990年に入る頃には松竹芸能を圧倒して関西の芸能事務所のトップになってたし、んで誰の目にも「お宅ら、最近儲けてはりまんなぁ」という感じで急成長を遂げたわけです。

1990年代前半、というと大崎洋は吉本興業のトップでもなんでもない。一定の力を持ってるのは承知する人は承知してただろうけど、誰しもが「吉本興業は大崎洋が牛耳っている」というふうには思われてなかった頃の話です。
しかしすでにその頃から大崎洋宛に、手紙でも電話でも脅迫がひっきりなしだったらしい。ま、ズバリ言えば「ナニ調子に乗ってんねん。お前、コロしたる(=コロされたくなければカネを出せ)」というような内容です。
要するにですね、ハタから見て儲かってそうなところには必ずハイエナが寄ってくる、という当たり前すぎるくらい当たり前の話でしかないのですが、そんなタイミングでこんなニュースを目にした。


もうひとつ、YouTube絡みでこんなニュースもあった。


これ、一見「YouTubeつながり」以外、何の関連性のなさそうなニュースふたつですが、大崎洋の話というフィルターを通せば一本の筋が見えるはずです。
ご存知の通り、当然トップランクに限るとは言え、ユーチューバーと言えばとにかく「儲かってる」イメージが強く、ユーチューバーがテレビに出ると必ず「どれくらい儲かってるか」という話になる。
でもね、本来であれば「異様に儲かってそうな、個人でやってるトップユーチューバー」なんてハイエナの格好の餌食のはずなんですよ。だからコムドットが脅迫されて、とか聞いても一番に出てくる感想が「え!?今までそういう事態になってなかったの!?」てことになるわけで。

ユーチューバー事務所であるUUUMに所属するメリットがない、と数年前に退所者が続出したことがありました。
たしかにね、事務所経由で案件の依頼があるにせよマージンを払わなきゃいけないし、財務関係は結局ユーチューバー本人(もしくは本人に委任された人間)がやるしかない。
となると個人で案件を取ってこれるユーチューバーや、そもそも案件をあんまり受けたくないユーチューバーにはほぼメリットはない。ましてやよく言われるように所詮は「Googleの胸先三寸」なわけで、事務所に所属しているからといってYouTubeというプラットフォームで優遇を受けられるわけでもない。

それでもアタシは、ユーチューバーが事務所に入る意義を見い出していた。
昔はタレント本人が仕事の折衝をするのが当たり前だった。当時はまともな芸能事務所がなかったし、マネージャーも個人で雇っているケースがほとんどでした。
それを変えたのが渡辺プロダクション創業者の渡辺晋です。
渡辺晋はすべてをシステマチックに変え、タレントの育成、売り出し、マネージメントを一括でやるという近代的な経営で「ナベプロ帝国」と恐れられるほどの影響力を築いたのです。
しかし当時は、興行と言えば「裏社会との密接な関係」が当たり前だった。地方で興行を行なうためには土地の親分に仁義を切ってから、というのが当たり前だった。
それを渡辺晋は「裏社会の人間ではないが裏社会に顔が効く」某氏を間に立てることによって裏社会の人間と直接交渉をしなくても良い、という施策を実行したのです。

渡辺晋は功罪半ばで語られることが多い人です。
竹中労の「タレント帝国」を読めば如何に渡辺晋があくどいやり方だったかわかるんだけど(ま、あの本はあまりにもナベプロ憎しの観点すぎてまったく公平性はないけど)、少なくとも渡辺晋には「ハイエナたちとの交渉や追っ払いは全部自分たちがする」という胆力があったのは間違いない。だからタレントはあまり脅迫を受けずに芸能活動を行なうことが出来たんです。
アタシはね、てっきり、ユーチューバー事務所ってのは<そこ>をやる存在だと思っていた。つまり「何故それなりの額のマージンを支払うか」の答えが、事務所に所属さえしていれば「ハイエナたちとの交渉や追っ払い」をやってくれる存在だと。

もちろんね、ユーチューバー事務所も顧問弁護士を抱えているとは思うんですよ。んで何かあったら動くことは動いたとは思う。
でもその程度だったらユーチューバー当人が顧問弁護士を雇うのとほとんど変わらない。渡辺晋レベルで、とは言わないけど、ハイエナが寄り付けないシステムを作るのが、もしかしたら案件を振ったりするよりも重要な仕事だったんじゃないかと。
だからね、コムドットが脅迫されたのはどこの事務所にも所属してなかったからだ、と言えるのか、と思うんですよ。もしユーチューバー事務所にコムドットが所属していたらこんな事件は起こらなかったのか、と。

これを言うとアレだけど、そういう意味ではまだ芸能事務所のが信用出来る。たぶんノウハウはだいぶ薄れたではあろうけど、それでも芸能事務所の方が裏社会やハイエナとの接触の仕方を心得ているはずです。
たまたまそういうニュースがあっただけで別にUUUMだけをやり玉に挙げるつもりはない。どこであろうとユーチューバー事務所がやるべきことって、何を置いても一番は<そこ>ですよ。<そこ>さえ本当にしっかりやってくれるのであれば多少割高なマージンでも、仮に案件なんかなくても事務所に所属する意味があるし、どれだけ案件があってもハイエナたちから守ってくれないなら事務所になんか所属する必要がない。

まァね、もしハイエナにタカられたくないのであれば「ハタから見て」儲かってるように見せないことですよ。
もしくは所属する事務所のトップに「顧問弁護士が出てくるなんて最後の最後。基本的には相手が誰だろうと自分でやる」という胆力があるかどうか。
あればそれでいいですよ。本当にあるのであれば。







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