鎌田敏夫への決着
FirstUPDATE2023.9.1
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これ、Scribbleでやるか、もうちょっとちゃんとした文章にするか迷ったのですが、たしかに「残しておきたい」類いの内容ではあるんだけど、そんなに長々書けるわけじゃないのでScribbleでいいや、と。

2017年、アタシは「鎌田敏夫に花束を」というエントリを書いてます。(連作のためScribbleからはオミット)
このエントリは、アタシの高校時代を彩った人に鎌田敏夫という脚本家がいたんだけど、何故か、突然、狐が落ちるようにハタチの頃に突然興味が失われた、というようなね、まァ言えば「出会いと別れ」を書いた、というか。

一応は当該エントリで分析めいたこともしているんだけど、ま、要するに「登場人物の青臭さが魅力になっていた」とし、別れ、を招いた原因として「青臭さが自分の恥部を見せられいるようで恥ずかしい。だから離れたんじゃないか」としています。
その辺にかんしてはというか<別れ>にかんしては、ま、たぶんそんな感じだろうな、とは思う。しかし問題は「出会い」の方で、たしかに、青臭さが魅力となって、というのもあるんだけど、それを主因にするにはちょっと弱いんですよね。

別にそんなことを考えていたタイミングってわけじゃないんだけど、先日偶然、こんな記事を見つけた。2019年の記事なので4年も前になるのですが、ああ、もう、結局そういうことだわ、と。


珍しく鎌田敏夫がガッツリ自作について語っているのですが、重要なことを引用しておきます。

速水:鎌田さんのドラマでは、舞台も脚本家が自分で想像して「ここ!」と決めることも多いのですか?

鎌田:多いと思います。他の多くの脚本家が、あまりそこに関わっていないのが不思議なくらいで。

(中略)

鎌田:僕が特殊だと思います。歩くのが好きなので日頃からあちこち歩いて、その時の記憶と結びつく作品を撮ることになれば「あそこにしなよ」とか。


つまりね、鎌田敏夫作品ってのはまず<街>ありきなんですよ。
もちろん大枠は脳内でやるんだろうけど、その大枠に相応しい<街>を決めて、その街にフィットする細かい設定だったり、ストーリーラインを決めていくタイプというか。
「複眼単眼・男女7人夏物語」というエントリでも書いたんだけど、設定やストーリーのオマケとして街があるわけではなく、まず街があって、そこから設定やストーリーが派生する形なので、必然的にロケーションの位置関係が『何のツッコミどころもない』ということになるんだと思う。

街ありき、ではない作家の場合、やはり「そこからそこに移動するのは無理があるだろ」みたいなことがわりと頻発したりします。
要は、とても歩いて行けないような場所に瞬間で移動したり、みたいなことなんですが、たかがテレビドラマ、たかがロケーションの場所として割り切れば、まァそれでもいいのかもしれないし、その手のツッコミ自体はアタシも嫌いです。
しかしツッコミようもないくらいロケーションの位置関係が完璧、というのは街好きを自称するアタシからすれば、やはりもう、それだけで点数が上がる。

結局ね、そこだったんですよ。
アタシが鎌田敏夫にハマった最大の原因、それはアタシが街好きだったから。街好きな人間にとって街ありきのドラマを作る鎌田敏夫脚本作品が果てしなく魅力的に映ったからだと。
当然ですが、関西に住む10代だったアタシは、そのロケーション感が如何に完璧だかはわかってなかったんですよ。関西の人間である以上というか東京の人間でなかった以上、隅田川を挟んで明石家さんまと大竹しのぶの住むマンションの位置関係や、それが持つ意味などわかるわけがない。
しかしもう、これは<直感>ですよね。少なくともこの作家は<街>をいい加減に扱っていない、みたいな。

いや、そもそも、当時は自分が無類の街好きという意識なんかなかった。
ただ、登場人物やストーリー以上に惹きつけられたのは<街>そのもので、「俺たちの旅」の吉祥寺、「俺たちの朝」の湘南、そして「男女7人夏物語」の清洲橋付近、といったロケーション場所に強烈な興味をおぼえたのも事実で、吉祥寺はともかく、湘南と清洲橋付近は実際に居住したことがあるほど、そして今でも本当に大好きな場所で、それはつまり、鎌田敏夫の影響です。
要するにです。アタシは鎌田敏夫のストーリーテリングに惹きつけられたわけじゃなかった。鎌田敏夫による「街の描き方」に惹き寄せられていたんです。

そう考えれば、鎌田敏夫が手掛けた大河ドラマである「武蔵 MUSASHI」の評判が芳しくないのも当然で、時代劇である以上、街ありきの作家からすれば手足を縛られたようなもので、ま、向いてない仕事に手を出してしまった感が出たんじゃないかね。知らんけど。







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