オコボレを頂戴出来なくなる時代
FirstUPDATE2023.8.21
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何で今になって急に、と思うのですが、こんなネット記事を見かけたもので。


2018年、てことは今から5年前にアタシは「TSUTAYAやブックオフがなくなっていくことへの危機感」を文章にしています。(ココ
しつこいですが5年も前ですよ。5年前の時点で「こりゃいよいよTSUTAYA(とブックオフ)が街中から消滅するぞ」と思っていたわけで、そうなるとどうしても「何だって、今になってこんな記事が」と思ってしまうというか。
で、さらにはこんな記事もあった。


さすがにこれはショックだった。そして同時にこう思った。

「あんな超一等地に超マニア向けの店舗があったこと自体がおかしかった」

と。
これは何度も書いてますが「サブスクで十分」と思う層がマジョリティであり、「サブスクなんて見たい聴きたいのがぜんぜんない」というのがマイノリティ=マニア、という図式は確立されたように思う。
ましてや渋谷TSUTAYAなんて、もうとっくの昔に廃盤になったVHSソフトやCDソフトがレンタル出来る、というとんでもないマニア向けな店舗だったんです。
そういや同じく超一等地にあった新宿TSUTAYAもなくなった。あそこも、いやアタシが足繁く通っていたのは新宿三丁目に店舗があった頃だけど、これネットオークションで買えばン万するな、というソフトが当たり前のようにレンタルされていたのです。

アタシはね、こうしたマニア向けの店舗がなくなることにたいして、やっぱ「悲しい」という気持ちはあるんだけど、こうした店舗が渋谷や新宿にあったこと自体無理があったんじゃないかと。
もう「なくなる」という決定を覆すことは不可能なんだろうけど、だからといって「また渋谷か新宿に同じくような店舗を」とは思わない。つかあきらかに渋谷や新宿はそうしたマニア向けの店舗を構えるのに似つかわしくない。
もし無理矢理、可能性のある場所を探すとなると、中野か神保町しかない。いや中野か神保町なら相当レベルのマニアックな店舗でも成立するとは思うんですよ。
でもさ、TSUTAYAもそこまでマニアに合わせる義理もないわけで、もう一回ディスコン商品をかき集めたようなマニア向けレンタルショップなんか、そりゃあやるわけないよ。

つかね、全体的に、ジャンルにかかわらず、マニアが減ってるような気がする。
こないだファミコンのバトルラッシュってソフトについてちょろっと書いたけど、結局オークションの値段を釣り上げているのは外国人なんですよ。要するに日本人ではない。
こういうことを言うと怒る人がいるに決まってるけど、30年前に比べるとオタクやマニアの<深度>はキープしているとしても<分母>は確実に減ってるような気がする。<分母>が減ると商売にならないので、どんどんオタク/マニア向けの商品が減ってる。
これはね、30年前の時点でもマニアックな中でもさらにマイナーなジャンルのオタク/マニアは関係ないんじゃないかと思えるかもしれないけど、反対なんですよ。

これは朝日新聞出版から発行された「黒澤明DVDコレクション」なんて最たる例です。
かつて黒澤明作品をマニアックという人なんていなかったけど、それはもう、時代が変わってね、ある種マニアック扱いされるのはしょうがない。
でもやっぱり、黒澤明のネームバリューは相当なもので、こうしたDVD付きムック本が成立するほどなのです。
で、です。
初期は文字通り「黒澤明<監督>作品」のみがラインナップされていたわけですが、売れたのかなんなのか、脚本のみの作品や戦前期の「制作主任」(肩書きは立派だけど、実質は助監督くらいの扱い)などとクレジットされた作品までシリーズに加えられることになった。
そのおかげで、これまで一度たりともDVD化されたことがない、いやメディア化されたことがない戦前期の音楽喜劇映画までラインナップに入ったのです。

アタシは狂喜乱舞した。いやぁ、ついにこうした作品がムック本とは言えDVD化されたってことに。
もちろん、本当は「エノケンDVDコレクション」とか「ロッパDVDコレクション」とか「P.C.L.音楽喜劇DVDコレクション」なんかが出ればベストなんですよ。でもそんなの無理に決まってる。ただでさえマニアが少ないジャンルで、しかもマニア自体が減ってる現状、スカパーですらほとんど放送されない程度の映画を集めて、とかそんなのが商売になるわけがない。

これがアタシの言うところの<オコボレ>なんですよ。
TSUTAYAをはじめとしたレンタルショップもね、そりゃメインはいわゆる<新作>扱いのDVDやCDでしょう。しかし<かさ増し>を兼ねて年間でひとり借りたら良い方レベルのソフトも置かれていたわけで、アタシなんかは<新作>などに目もくれず、ひたすら<オコボレ>を狙っていたし、店舗によってオコボレの種類が違うってのもあって本当にいろんなTSUTAYAに行った。もちろん最上級のオコボレがあったのが渋谷と新宿のTSUTAYAだったのは言うまでもありません。

つかさ、もうこうなった以上、ジャンルが違ってもマニア同士反目しあってる場合じゃないよ。
実際「東宝・新東宝戦争映画DVDコレクション」なんていう戦前の音楽喜劇マニアからしたら関係なさそうなムック本シリーズに何故か「音楽大進軍」なんてマニアックなのがラインナップされてたしさ、アタシからしたら特撮マニアも<仲間>ですよ。

ま、こちとら、どこまで行ってもオコボレを頂戴させていただく側で、オコボレを分け与えることなど出来ないんだけどさ。







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