現役ドラフトってさ
FirstUPDATE2022.12.5
@Scribble #Scribble2022 #プロ野球2022年 単ページ 現役ドラフト 制度 改革 失敗例

えと、今週末ですか、に現役ドラフトが行われるようですが、いや別に水を差すつもりはないんだけど、やっぱね、どうも意味がない気がして。

現役ドラフトに加えて、来季以降の導入を目標にマイナーリーグFAなんてのも選手会が提案しているみたいですが、やっぱ、これも、無条件では賛成出来ない。
何かね、ダメなら改正していけばいい、とにかくやることが大事、みたいな意見も多いのですが、いやいや、これはそういうことじゃないだろ、と。

前も書いたように、アタシは「ええい、ままよ!」という精神というか、やけっぱちや開き直りってすごく大事だと思うんですよ。でもさ、これって、やけっぱちでやるようなことじゃないでしょ。やけっぱちってのは当人が「だめでもともと」みたいな感じでやることであって、でも現役ドラフトって決める当人はほぼ無関係、ルール作りに関与してない人間が巻き込まれるってことなんだから。

そもそもですが「何もやらないより、とりあえずやってみる」ってのが、まずおかしい。
というのも、NPBは今回の現役ドラフトに近いことを行った実績があるんですよね。
1度目は1970年に導入された選抜会議、2度目は1990年に導入されたセレクション会議です。
どちらも現役ドラフトと若干システムは違うとはいえ目的は同じであり、つまり「他球団なら出場機会のある選手を入れ替えることによる活性化」を目的として導入されたわけです。

しかし、選抜会議、セレクション会議ともに惨憺たる結果に終わり、どちらも短期間で事実上廃止になっている。
もちろん、どちらのケースも、おそらく導入時には「問題点があるのであれば、都度改正していく」ということを想定されていたんだろうけど、結局、ほぼ改正されることはなく消滅している。
何で大幅な改正出来ないか、というか大幅な改正を施してでも継続出来なかったのか、これは簡単です。こうした現役選手をドラフトにかける、というのを優先したら、他も変えなきゃいけないことが多すぎるのですよ。

今回の現役ドラフトはメジャーリーグで導入されているルール5に触発されたものなんだろうけど、まずメジャーリーグとNPBでは球団の数が違いすぎるし、マイナーリーグを含めると一球団あたりの保有する選手数も違いすぎる。
さらにメジャーの新人ドラフト会議はいわゆる「完全ウェーバー」であり、新人選手は望む球団に入ることを想定されていない。
つまりね、メジャーの場合はルール5(≒現役ドラフト)を導入しやすい下地があるわけなんです。

しかしNPBの場合、どこをどう切り取っても現役ドラフトをやれる下地がない。
もし現役ドラフトを改正していこうと思えば新人ドラフトやFAの制度、さらに選手の保有数までも、あまりにも大規模な改正、いや大改革が必要になる。
でもそれは無理だよ。新人ドラフトもFAも保有数も、いろんな経緯、いろんな絡みで現今の制度になったのにさ。

いやもっとそもそもの話をします。
これね、一回目の1970年、そしてギリギリ、2回目の1990年であれば現役ドラフトに相当する制度は意味があったのかもしれない。
まだこの頃は球団の抱えるスタッフの数が少なく、スコアラーも同一リーグなら必ずひとり一球団先乗りスコアラーがいる、という時代じゃなかった。
だから一軍でも二軍でも同一リーグではない球団の埋もれている選手のことなんか把握しきれなかったわけで。

今は違う。先乗りスコアラーもそうだし、今では当たり前のように各球団にプロスカウトがいる。もっと言えば環境が整い、何なら素人でもインターネットやスカパーで二軍戦を観戦出来たりする。
要するに、もう今の時代「埋もれている選手」なんかいないんですよ。
阪神の岡田彰布監督がトライアウトを指して「あれは卒業式みたいなもんやろ」と発言したらしいけど、トライアウトを見て獲得を決める、なんてほとんどない。何故ならトライアウトなんか見なくても各球団のフロントはその選手がどんな能力なのか、すでに完全に把握しているんだから。

正直、こんなことをするくらいならば、普通に各球団の編成が集まって「あの選手が欲しいんだけど」「いや出せない。でもこの選手なら出せる。で、交換要員は誰?」「ウチはこの選手を出せるんだけど」みたいな話し合いをする場所にした方がよほど有意義な「話し合い」に、そして「トレードによる活性化の場」になるんじゃないか。
というのもね、トレードってやっぱり、球団同士の「付き合い」みたいなのが優先される傾向にあり、どうしても特定球団同士のトレードになりやすいんです。
本サイトでも書いたけど、例えば阪神とヤクルトに限れば、ヤクルトが球団を保有してから「ただの一度も」交換トレードが成立していない。でももし、入札ではなく保有選手のトレードを目的とした場があれば、こういうことも解消されるんじゃないでしょうかね。

というかさ、いい加減「メジャーがやってんだから」みたいな理由は理由にならないって学ぶべきなんですよね。何もかも違うメジャーの制度をまんま、いやまんまじゃなくてもNPBに当てはめるなんて、そんなの無理に決まってるでしょうが。ねぇ。







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