コンチェルトってのに意味はない。半年ほど前に「文珍くんセレナーデ」ってエントリを書いたんで、それに合わせただけです。って「セレナーデ」にも意味はないんだけど。完全に語感で決めただけで。
いやね、先日、BSよしもとで花王名人劇場の再放送をやってて、んで、どうも、桂文珍が創作落語をやってそうな予感がしたので録画しておいたのです。
しかし予感は半分外れた。ま、古典ではなかったけど、何というか、メチャクチャ長いマクラというか、全体の筋立てのようなものがないネタでした。
じゃあつまんなかったのか、というと違う。今さらと言われたらアレだけど、結構、衝撃を受けるくらいに面白かった。
というか桂文珍という芸人の能力をまざまざと見せつけられたというか。
正直言って桂文珍は「こだわってる」芸人ではありません。
「文珍くんセレナーデ」で書いたように、中学生くらいの頃に「花王名人劇場」他でよく創作落語をやっており、それらは本当に面白かった。で、アタシの「落語の入り口」になったこともたしかです。
でも、まァ、そこ止まりというか、文珍もテレビで創作落語をやらなくなったし、何しろ中学生の頃に見たきり、成人後にいろいろと落語会には行きましたが、何故かナマで一度も文珍を見たことがなかったわけでね。
んで、もう本当に、ふと、ですよ。たしかに中学生の頃に文珍の創作落語にハマってたなぁってのを思い出して「文珍くんセレナーデ」なんてエントリを書いたんだけど、再見する術もないしなぁ、なんて思っていたタイミングでちょうど花王名人劇場の再放送があったと。
この回の放送で文珍が演じたのは「テレビが丹波にやっと来た」という噺で、しかしタイトルに沿う内容なのは序盤だけ。あとはひたすら昭和30年代の、主に子供向け番組についてひたすら語る、という内容でした。
でもこれは「思い出話」ではない。
おそらくこの回が放送された1983年と言えば空前の「第一次レトロブーム」の頃で、つまりちゃんと時代に即したネタをやっているんです。
けしてマニアックにはなりすぎず、しかしディテールは<そこそこ>リアリティを保たせて演じる。まだ「ディテールを深く掘り下げる」ほどレトロが成熟してなかったので文珍の「浅く広く」は妥当です。
そして何より感心したのがテンポの素晴らしさです。
マンザイブームの後、ダウンタウンの本格登場の前、ということもあり、基本的にテンポはかなり速い。
しかし速い中にも見事な緩急があって<笑い>の波が一定間隔で来る。と言っても花王名人劇場の場合、ほぼ全部の回であきらかに<笑い>を足してるので笑い声はアテにならないんだけど、それでもちゃんと笑えるレベルのギャグというかクスグリが一定間隔で入ってくるのは間違いない。
まァ、ホント、お見事!と拍手したくなる<芸>でした。
そうは言っても今現在の文珍がどんな感じかはぜんぜんわからないんだけどね。
たぶんもう、完全な創作落語はやってなさそうだし、しかしあの<芸>は確実に古典をやっても活きてるはずだから。
うーん、やっぱ一回、ナマで見ておきたいな。