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インターネットメディアの行方
FirstUPDATE2022.5.8
@Classic #2000年代 #電脳 #インターネット #物申す 全2ページ ネチケット 捨てアカ eメール 独自ドメイン Gmail リアル社会との紐付け 正義マン

 何故捨てアカが無限に作られるのか、これはアカウントを作る<仕組み>に致命的な欠点があるからです。

 ほとんどのSNSはメールアドレスさえあえばアカウントが作れる仕組みですが、ではメールアドレスを作るために何か必要か、と言うと、ほとんど何も必要ではない。
 メールアドレスが無限に作れるのだから、理屈としてTwitterでもなんでも、SNSのアカウントも無限に作れてしまうわけです。
 Page1にてアタシは「今もってインターネットは黎明期」と書きましたが、無限メールアドレス作成の問題は2003年くらいまでの、いわばインターネット勃興期の名残りとも言えるんです。

 おそらく2000年くらいまでだったと思いますが「名刺にEメールのアドレスが入っていることがステータス」だった時代がありました。
 今考えると何じゃそりゃですが、Eメール(って言わなくなったけど)を持っている=インターネット環境が使えるパソコンが使えるヒト、みたいなね。ま、デジタルに強いビジネスマン、みたいな印象を与えられるというか。
 そのうちiモードが普及して、メアドを持ってるってのはステータスではなくなったけど、今度は「フリーメールではない、ちゃんとしたドメインを使ったメアドがステータス」になったんです。
 もちろん、一番ステータスが高いのは、社員しか使えない一流企業の名前が入ったドメインで、次が独自ドメインのメアドで、これはフリーランスの強力なステータスになった。
 次が一流でなくてもいいからとにかく社名が入ったドメインのメアド、さらに次がプロバイダがくれるメアド。で、iモードなどのケータイメアド。
 正直「信用に足る」のはここまでって感じで、後は、というか後はフリーメールしかないんだけど、遊び用ならともかく仕事でフリーメールなんて絶対にやっちゃイカンって感じだったんです。

 信用に足る、のラインを越えているものはすべて「何らかの組織に属している」もしくは「毎月それなりのカネを払うことでメアドを維持出来る」ものです。そしてどちらにも言えることですが、自分に与えられているのは基本的にひとつだけ、アドレスを変えることも不可能ではないがそれ相当のリスクもあるってのは共通しています。
 ところがこの壁を軽々と破ったのがGmailで、Gmailとてどこから見てもフリーメールでしかないんだけど、おそらくはGoogleパワーで「フリーメールっちゃフリーメールだけど、Gmailなら何となく許される」ムードになった。
 アタシはね、ここが「インターネットの秩序が大幅に崩壊した序章」だと思っているのです。というかもし、Gmailがなければ、ここまで自殺者を生むほどのインターネット世界にならなかったのではないか、と。

 Gmailの登場は2004年です。この2004年というのは個人的にターニングポイントになったと思える年で、Gmailの登場の寸前まで「フリーメールはもうダメだろ」みたいな空気がたしかにありました。
 かろうじてまだ認知が高く、使っている人も多かったのがYahooIDを作れば自動的に使えるヤフーメールでした。
 当時はYahooと言えばナンバーワンポータルサイトで(今もか?)、Yahooの認知度はすこぶる高かった。そういうこともあって、ま、ヤフーのメアドならまだマシじゃね?って感じはあったんです。
 しかしYahooIDはともかくヤフーメールは使い勝手が非常に悪く、とくにブラウザ上から見るウェブメールはとにかく使いづらかった。
 さらにスパムメール対策も不十分で、ちょっと放置しておいたらスパムメールが無限に溜まっている状態になる。これではどう考えてもメインのメアドとして使うのはしんどい。
 ま、ヤフーメールだけをこと上げにするのもどうかと思うわけで、当時のフリーメールなんて大抵こんなもんだった。だから評判も悪く、マジでフリーメールを使うなんて「捨てアドレス感覚で使う時だけ」もしくは「マイサイト(当時の言い方ならホームページ)に掲載する用」って感じでした。

 そこにGmailが登場した。Gmailの最大の利点は「1GBもの受信容量」で、今なら1GBなんてたいしたことがないのもいいところだけど、当時としては大容量で、開始当初のGmailの謳い文句はたしか「もう古い受信メールを消していく必要はありません」みたいな感じだったはずです。
 ということはつまり、それまでのフリーメール、に限らずプロバイダから提供されたメアドであろうが「古い受信メールを消していかないと受信容量がいっぱいになって新しいメールを受信出来なくなる」という欠点があったんです。
 それこそ独自ドメインのメアドなら受信容量を設定出来るし、プロバイダのメアドもそこまでではなかったけど、フリーメールなんて、ホント、すぐに受信容量がいっぱいになる。これも「フリーメールは利便性が劣る」と思われた原因だった。
 さらにGmailはスパムメール対策もかなりちゃんとしており、メアドのブラックリストが作れるのはもちろん、やり方によってはホワイトリスト形式にも出来る、とフリーメールとしては破格の高性能だったんです。

 しかしこれで、めでたしめでたし、とならないのが面白い。
 もう一度、「信用に足る」というラインをしっかり見てみたい。
 「信用に足る」のラインを越えているのはすべて「何かしらリアル社会との紐付けがされているもの」なんです。
 会社のメアドは言うに及ばず、プロバイダのメアドだってプロバイダ会社に本名も住所も伝えた上で契約しているわけです。
 ところがGmailはというよりはGoogleはですが、Googleはそうした個人とのリアル社会の接点がない。どこまで行ってもGoogleはアメリカの企業であり、日本でプロバイダ事業をしているわけでもなく、つまりリアル社会との紐付けが不可能ではないけどかなり難しかった。

 今はどうか知りませんが、当時のGoogleはほぼ広告ですべての収益を賄う企業であり、Gmailも最初から無料というコンセプトで作られ始めたものなのは間違いないわけで、と言うか広告がメインならばプライバシー云々とは関係なく、そこまで個人名や住所などのリアル情報にこだわる必要がありません。
 今のGmailはログインのために電話番号を要求してきますが、これも不正ログインを防ぐ、つまりセキュリティのためであり、発行したメアドの所有者がどこの誰なのかには無頓着です。
 広告メイン、となると、それこそどこの誰であろうが関係ない。とにかくいっぱいの人が使ってくれたらGoogleは潤う。だから、かはわからないけど、Googleはそれ以前のフリーメール同様「誰でも簡単に、何の個人情報を用意しなくても」アドレスが作れたのです。

 いったいどのタイミングだったか記憶があやふやなのですが、おそらく2000年代くらいまではGmailも他のフリーメール同様「何かの登録には使えない」=Gmailを使ってSNSのアカウントが作れない感じだったように記憶している。
 ところがスマホの登場がこれをも変えた。
 もはや、かつてそれなりに信用のあったケータイメアドはスマホの登場で使っている人がどんどんいなくなる状況になった。もちろんそれはLINEなどの普及もあるのですが、仮にメアドを使うとしてもスマホのメアドになってしまった。
 iPhoneというかAppleの発行するメアドは「icloud.com」もしくは「me.com」ですが、これも一種のフリーメールです。しかしこれらのドメインを登録に使えないとiPhoneユーザーは相当な不便を強いられる。
 となるとAndroid用に用いられたGmailも、弾く理由がない。
 かくしてGmailはスマホ用メールとしても使われたために「もはや信用せざるを得なくなった」のです。

 こうやって説明すれば「無限に作れるGmailでSNSの登録が出来ないようにする」というのが事実上不可能だとわかっていただけると思います。
 しかしね、結局、捨てアカの問題を解決しない限り、何をやっても意味がないとも思う。
 インターネット上のヘイトの話になるとすぐに実名化の話題になるのですが、それよりも捨てアカがなくなるだけでかなりインターネットは平和になるはずなんです。もちろん中には実名でイタいことを書くヒトがいるのも事実ですが絶対数は少ない。罵言を撒き散らしている人間のほとんどは「ヘイト専用のアカウントを持っている」か、もしくは「都度捨てアカを使っている」と思う。

 正直言ってアタシは実名化には反対です。
 このサイトだってハンドルネームを使っているように、リアルでの自分とネット上での自分は、やはり、使い分けたい気分がある。
 だからと言って、ま、極端ですが、警察には籔似というハンドルネームを使っている男と兵庫県に住む何某が同一人物だとバレても構わない。
 アタシの考えとしては、サブアカ、裏アカがあってもいいと思うのですよ。ただし本アカもサブアカも裏アカも、いやYahooIDであろうがどのメアドだろうが最終的にリアルと紐付けしておかなきゃ、もうどうしようもないんだろうなってところまで来てるのは理解している。つまり「完全匿名」は事実上不可能だと。
 アタシはヘイトがすべてダメだと言ってるんじゃありません。これまた極端な例だけど、実名を出してのヘイトはまだ許せる。ところが今は「覆面を被った名もなき人間」が「対象となった人物を自殺にまで追い込む」のが問題なんです。
 せめて、表面上はリアルとネット上の紐付けが行われてなくても、公的機関が調べたら一発でどこの誰かがわかる<仕組み>がないとどうしようもないんじゃないかと。

 2020年に「正義マン」なんて言葉が流行りましたが、本当に正義だと思って対象者を叩きたいなら顔を出せよ、と思う。と言うかお前ら月光仮面かよ。
 ココにインターネットについて『自由な世界の扉を開けてみると、そこはただ無秩序で人間のエゴが剥き出しの世界だった、なんて三文小説にありそうな筋書きですが』と書きましたが、無秩序が無秩序のままでずっと栄華を誇る、なんてあり得ない。つまりもう、インターネットの進む道は「ずっと無秩序のまま成熟期に入ることもなく廃れる」か「秩序が出来てきて生き延びる」かのどっちかなんです。

 ほらな、お前らが自由を!自由を!って叫ぶから自由な空間を与えてやったら、結局こうなったじゃあねぇか。だから秩序を保つために管制塔が必要なんだよ、なんて言われかねないことになったことに、情けないと思わないのか。
 くだらない「正義」なんてもののために、実態はただのストレスの捌け口なだけの罵言を理由を付けて正当化してさ、そのせいで自由がどんどん失われる結果になっていくなんて、本当に悲しい。
 昔はモラルが無茶苦茶だ?今はモラルが行き届いているだ?フザけんじゃないよ。少なくとも昭和の頃は覆面を被って石を投げ続ける莫迦はいなかったぞ!

 ・・・とまあ、それはそうには違いないんですが、最後に少し違う見方をしてみます。
 もしかしたら、これ、つまりインターネットがこれほど無秩序のまま放置されているのは、何かの社会実験なのでは?と。実はかなり早い段階で、捨てアカを含めてすべてリアルとの紐付けが完了していて、つまり罵言を撒き散らしているヒトは何にも知らずに、社会実験のサンプルにされてるんじゃねーの?とね。
 で、実験が終わったと同時にそういう人が一斉に粛清される、と。

 ま、ただの陰謀論というか、いや陰謀論でもない妄想ですが、妄想だったらいいねぇ。アタシの妄想だったら、ね。

このエントリ、マジで二転三転しており、エントリする直前になってロシアとウクライナの紛争が始まったりね。
当初コレのエントリタイトルは「複眼単眼・インターネットメディア」だったんです。
しかし読み返すうちに「これ、複眼単眼ってほどでもないな」と。何というか、そこまで御大層な内容じゃないよな、と。
それでタイトルを「インターネットメディアの行方」にしたんだけど、タイトルの変更に合わせて、内容もより<ざっくり>させた。
ま、結局、アタシが本当に書きたかったのは「2000年代なかばのインターネット界隈の<感じ>」なので、そこさえちゃんと書けてればね、って感じで。




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