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カセットテープレクイエム
FirstUPDATE2021.10.10
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 ちょっと待てよ。プロが歌わないまんがのうたって何だそりゃ、と言うキモチもわかるのですが、まァアタシの話を聴いてください。

 えと、あれは例の病気が完治して、つまり退院してすぐくらいだったと思います。
 もう完全に記憶が欠落しているけど、親か親戚からか、どっかの店で仮面ライダーのカセットテープを買ってもらったのです。何しろアタシは仮面ライダーが大好きだったからね、しかもコレクションレベルで買い漁っていたから、仮面ライダーの「見たことがない」カセットテープが売ってたら、そりゃ欲しくなりますよ。
 中身は歌とドラマが入ってたんだけど、これが酷いシロモノで。
 ライダーの声は藤岡弘じゃないし、歌っているのも子門真人でも藤岡弘でもない。しかもまったく聴いたこともない歌詞とメロディー。つまり「レッツゴーライダーキック」なんかは収録されてなくて、かといって菊池俊輔が作ったには違いないけど劇中で使われてないマイナーな曲でもない。たぶん東映とも石森章太郎とも菊池俊輔とも何の関係もない、売れない作詞家と作曲家のオッさんがテキトーに作った、みたいな曲で。
 ま、子供心に、それはそれで楽しめたんだけど、とにかくこれがアタシの「パチソン」との出会いだったんです。

 てなわけで、ここから趣旨がガラッと変わります。
 便利な時代になったもので、ちょっと検索してやるだけでいくらでもパチソンが聴ける時代になりました。
 ちなみにパチソンとはパチンコソング、なわけがなく(んなもん軍艦マーチとひらけ!チューリップくらいしかない。いや、我がクレージーキャッツの「ちんじゃらボッサ・ノバ」もあるか)、パチモンソング略しての<パチソン>です。
 で、ですね、とにかくアタシが個人的に腹筋崩壊したパチソンをご紹介しようと。
 パチソンに馴染みのある方なら「今さら」と思われるでしょうが、気にせずやります。
 動画を貼り付けていますが、これ、著作権に反してないと思うんですよ。ま、細かくは各各の説明を見て欲しいけど、メロディや譜割りさえ違うものを「同一の楽曲」として見做してよいのかって話で。とにかくオリジナルと受ける印象が絶望的に違うわけで、関係性で言えばフランクミュラーとフランク三浦に果てしなく近い。
 ま、なにはともあれ、各説明は是非とも動画を見てから読んでください。

 まずはPage1で名前を出した、つまり入院していた時に確実に<ホンモノ>を聴いていた2曲から紹介します。

◇ ゲッターロボ

 ゲッターパンチ並みの先制パンチですが、もういきなり「パチソンの破壊力」を思い知ったことと思います。
 とくに前奏の破壊アレンジ(≠破壊的アレンジ)は脳天ブチ抜きレベルで、あの畳み掛けるような原曲の素晴らしさを「ひとっつも、再現しようという気さえない」のが強烈すぎる。

◇ 魔女っ子メグちゃん

 言っておきますが、これはパチソンとしては相当マシなレベルです。いや破綻も無意味な個性がないだけでもマシなのですが、この曲は「前川陽子に近づけようとしている」ってのが良心的というか、オリジナル歌手に似せようとしているのは相当珍しい。
 それでも、どこか1970年代前半の<場末のスナック感>が漂うのが悲しい。ま、良く言えば哀愁があるというか。

◇ グレートマジンガー

 こんなん、YouTubeのコメントにもあるように、いくら聴いても「石橋貴明が半分フザけて歌ってる」ようにしか聴こえない。というかコージー冨田でもここまで誇張してない。
 ま、だから、きわめてレベルの高い石橋貴明のモノマネ歌手、と言えなくもないのですが、何がすごいと言っても、パチソン版グレートマジンガーがレコーディングされたのは、おそらく石橋貴明がデビューするはるか前になるんですよ。
 本人よりモノマネ歌手の方が先に世に出ていたなんて空前絶後です。

◇ デビルマン

 もう、たったひと言で言い表すなら「面白すぎて腹が痛い」になるのですが、ブラスもギターも歌の邪魔をするかの如く割り込んでくるアレンジはある意味画期的です。
 にしてもね、このボーカルの人、歌唱力自体はあると思うんですよ。でもメロディがところどころ違うのは「そもそも渡された楽譜自体が間違ってた」としか思えない。
 ま、それでも、何でこんな焦ったような歌い方なんだろ。オシ○コしたすぎて早く終わりたかったんでしょうか。

◇ バロム・1

 これも焦ってる。いや焦って歌うってパチソンの専売特許か?
 にしても口三味線ならぬ口擬音のところが面白すぎる。ブロロローは足りないし、ズバババババーンは多すぎる。これは陣内智則のツッコミとともに聴きたい名作です。

◇ キカイダー01

 パチソンには「あまりにもクオリティが低すぎて面白い」ものと「無駄にすごくて面白い」の二種類あるのですが、これは完全に後者です。
 アレンジも原曲とは違うけどそれなりに凝ってるし、何より歌唱がすごい。たぶんクラシック系というか声楽関係の人なんだろうけど、まさしく「千の風に乗ってやってきたキカイダー01」です。
 にしても「♪ トォラン<ペッ!!>とのォ」と「ゼロワーン、ボデェエ<イー!>」は面白すぎるわ。

◇ マジンガーZ

 「ちょっとクセはあるけどマトモな方かな」と油断させておいて「♪ 正義の心をパイルダァ<ウォォオォォォン!!!>」は卑怯だわ。

◇ ドラえもん

 途中までかなり頑張っているのですが、ま、もうどうしようもないのは百も承知だけど「はいたけこぷたあ」の棒読み加減よ。いや棒読みは百歩譲って許すけど、いくらなんでも覇気がなさすぎる。
 出来ることならセリフのところだけ錦糸町のクレープ屋さんの店員の声に差し替えたい。

◇ 仮面ライダーV3

 パチソン特有の採譜ミスはあるんだけど、ボーカルはマジで上手い!YouTubeのコメント欄にも書かれているように、申し訳ないけど本家の宮内洋さんよりも上手い。でもそれが面白い。

◇ ウルトラマンA

 採譜もそうだけど「歌詞の聴き取り間違い」が多いのもパチソンの魅力です。
 それにしてもこれは強烈すぎる。「♪ 今だ!変身!北斗とみィなァ<ベェ>~」って。南部って誰だよ。

◇ 仮面ライダーアマゾン

 これは面白いというよりも<謎>と言った方がいい。
 おそらくテープの早回しでボーカルの録音をしてるんだろうけど、パチソンでそんな凝ったことするか?「帰って来たヨッパライ」をレコーディングするわけでもあるまいに。
 そして何より謎なのか、早回しで声は高くなってるのに、とにかくボーカルが異様に上手い。単純に上手さだけで言えばさっきのV3よりも上手い。
 しかもですよ、本来テープ早回しってすごい難しいんですよ。テンポを落として歌わなきゃいけないからアラも出やすいし。それでこの歌唱力は尋常じゃないわ。いったい何者なんだ。

◇ 宇宙戦艦ヤマト

 これはもしかしてテープ遅回しか?いやまさかな。ちゃんとしたレコードでテープ遅回しは前例がほとんどないし。いやこれはそもそもレコードですらないけど。
 にしてもヒョロロロ音が邪魔だなぁ。シンセ?いや時代的にはエレクトーンかなんか使ってるのかね。エレクトーンってわりとああいうヒョロロロ音出すの得意だし。

◇ 忍者ハットリくん

 いやもう「忍者ハットリ<ハ>ンゾウ」って言っちゃってんじゃん。それ元ネタだから。
 パチソンとしてはかなり後期のものですが、しかしここまで来ると「目をつけられないように随所にアレンジを施した」のか「採譜ミス、歌詞聴き取り間違い」か「ただたんに音痴なだけ」なのか、さっぱり区別がつきません。

◇ 秘密戦隊ゴレンジャー

 いやこれは、ゴレンジャーだと思わなければすごく面白い。面白いっても笑えるって意味じゃなく純粋に音楽として「へぇ、こういうのもいいんじゃない?」という、つまり肯定的な意味での面白さです。
 アレンジもどことなくフラワーロックっぽいし、女性コーラスも当時(いや当時より数年前か)の流行りの男女混成フォークグループっぽくていい感じです。
 問題は実はこれが「戦隊ヒーロー物」の主題歌(のパチソン)だというところで。


 こんな感じかな。いや面白いパチソンまだ無限にあるけど、個人的ベスト選集というか「やぶにらパチソンアンソロジー」(略してYPA)になったので、もうこれでいいや。
 てなわけでパチソンの話は終わり。次に参ります。
 え?まだやるのかって?やりますよ。当たり前じゃん。つかパチソンで終わるんだったらエントリタイトルも「パチソン大全」にするよ。

 さてここからは、アタシが生涯で一番笑ったコラムの話なんですが、どの雑誌に載ってたかも忘れたし、作者が誰かもわからない。「スタジオボイス」だったような気もするけど、何の自信もありません。
 ま、そんなにたいしたことが書いてあったわけじゃないんだけど、とにかく「引き出し式カセットテープ収納ラック」のことを書いてたんです。
 憶えている限り、そこで書いてたのとまったく同じことを書きたいのです。ってもパクるってよりも全面的同意というか、アタシもまったく同じ体験を<何度も何度も>してきたからね。
 というか、そもそも引き出し式カセットテープ収納ラックってわかります?写真を見てもらえれば一発だろうけど、大抵3列で、引き出しを開ければ一列に10~15本くらい入るようになっている。つまり収納ラックひとつで約30~45本のカセットテープをまとめておくことが出来るのです。
 全体のサイズもミニコンポくらいの大きさで、重ねて置くことも出来る。これでカセットテープが何本あっても安心さ!


 ところがね、それはちゃんと整理整頓出来る人に限った話。モノグサな人間にとってはこんなムカつくモノもないんです。
 例えば・・・カセットテープのケースの内側には紙のラベルが付いていますが(画像参照)、この<背>のところにアーティスト名とアルバムタイトルを書いておくのが普通でした。
 それを見てね、お、今日はサザンの「ステレオ太陽族」でも聴くか、と収納ラックから取り出せば

カ ラ


 つまり、ケースだけ。中身が入ってない。これが最初のムカつきポイント。
 しゃーない。サザンは止める。よし、ブルーハーツのTRAINTRAINにするか。これはちゃんと中身が入ってるな。よしよし。さっそくラジカセにセットして・・・

「♪ 道にィ倒ォれてェ誰ェかのォ名をォ~」

・・・違う。誰が聴いてもブルーハーツじゃない。誰が聴いても中島みゆきだ。これが2番目のムカつきポイント。
 クソっ!結局ちゃんと整理しなきゃいけないのか。とりあえず収納ラックから全部出してケースと中身を合わせていくか。まるで洗濯した靴下を揃えるように。
・・・ケースがあるヤツは全部中身がない。中身のまま入れてあるヤツは全部ケースがない。これが最後のムカつきポイント。
 つまり下手にこんなのに収納したばっかりに、余計グチャグチャになっちゃってたのです。

 いやね、わかっているんです。使いこなせないのは全部自分の責任です。几帳面な人はバッチリ使いこなしてたんだから。
 にしてもこんなことが起こるのはカセットテープだけですよ。レコードでもCDでも、中身が違うとか、ケースはあるのに中身がない、なんてモノグサなアタシでも早々起こらない。
 ましてや今はこんなことが起こりようがない。そもそも物理メディアから直で聴くことは滅多にないんだし。普段聴くのはエンコードされた、パソコンに取り込んだヤツだし。

 あー、長々とカセットテープのことを書いてきたけど、やっぱもう、カセットテープなんて懲り懲りだわ。
 何のことか、近年になってまたカセットテープのチープな音質が見直されてきてるっていうけど、アタシは二度とゴメンだね。カセットテープなんてパチソンだけで十分。ま、そのパチソンも動画サイトで聴いてるんだからカセットテープなんか関係ないんだけど。

いやさ、マジでパチソンだけは動画サイトから消さないで欲しい。んなもんちゃんとしたメディア化なんて無理に決まってるんだし、でもあれだって立派な文化だと思うんですよ。
アタシは違法動画には基本的には良くないと思ってますがパチソンだけは例外。というかああいう立ち位置のものがあってもいいんじゃないかね。
あ、あとひとつ。Page1のコンパクトカセットとエルカセットとVHSのテープサイズの比較、あれ、おかしいんだよな。エルカセットとVHSの高さは2ミリしか違わないのに、ずいぶんエルカセットの高さが高い。解像度を合わせてやったんだけど、どうしてもああなるんだよ。画像の縦横比が間違えてるのか?うーん。
で、ここからは2023年になってからの追記。
えと、エントリタイトルですが、元は「やぶにらのカセットテープ大全」にしていたんだけど、あまりにも「やぶにら大全」らしくないので「カセットテープレクイエム」に変更しました。
いやそもそも「やぶにら大全らしいって何なんだ」とか言われたら答えようがないんだけど。




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