当エントリはちょっと違った主旨でやります。
たぶんこういう分け方をするのはYabuniraの長い歴史の中でも初めてだと思うけど、二部構成で「コマソン」(コマーシャルソングの略)を大々的に語ってやろうと。
第一部が「非リアルタイム編」で第二部が「リアルタイム編」です。
非リアルタイムってのはアタシがそのCMをリアルタイムで見たことがないものをより集めた形でやります。
生まれる前はもちろん、生まれて以降も、例えば大学までは関西に在住だったので、1980年代までに関東ローカルで放送されていたCMはリアルタイムで見ているわけがない。
だからそういうのも第一部の非リアルタイム編にカテゴライズします。
で、第二部のリアルタイム編はどうしても、昔のは関西ローカルのCMが中心となる。ただやっぱ「子供の頃の記憶」って強いので、数的には第一部と第二部でだいたい同じくらいになっております。
それでは第一部から、どうぞ。
◇ やっぱり森永ネ(作詞・作曲 三木鶏郎、歌唱 中村メイコ)
テレビCM黎明期の作品ですが、映像もちゃんと残っており、個人的にもものすごい歌です。
とくに映像付きで聴けばよくわかるんだけど、ある意味常軌を逸した1950年代的<ほのぼの感>と<桃源郷感>には見るたびに心を揺さぶられます。
◇ 僕はアマチュアカメラマン(作詞・作曲 三木鶏郎、歌唱 灰田勝彦)
アタシが、もう最初の発声を聴いただけで「あ、灰田勝彦」とわかる貴重な人。植木等でさえこんなに簡単にはわからない。つまり、それくらい灰田勝彦の歌唱は特徴的なのです。
ハワイで生まれた灰田勝彦のベースがハワイアンなのは当然かもしれないけど、鼻にかかった特徴的な歌声と併せて、とにかくこの人、不必要なくらい<甘い>んです。スピードワゴンどころの騒ぎではないくらい<甘い>。
戦意高揚映画の中でさえ、んな存在が許されるわけもないのに、この人が出てくると<甘>くなるんだから。まさに唯一無二の人ですよ。
◇ くしゃみ3回ルル3錠(作詞・作曲 三木鶏郎、歌唱 伴久美子)
これもかなり長いバージョンの映像が現存してるけど、これもまさに「1950年代的ほのぼの」です。ま、「やっぱり森永ネ」ほどじゃないけど、こういう感じが「この頃を舞台にした近年作られたフィクション」では絶対再現出来ないんだよね。
◇ 船橋ヘルスセンター(作詞・作曲 三木鶏郎、歌唱 楠トシエ)
♪ チョチョンのパ!ですが、ちゃんと見ていただければお判りの通り、ここまですべて「作詞・作曲 三木鶏郎」なんですよ。
んで歌唱がコマソンの女王、楠トシエ。ということはつまり、この曲はゴールデンコンビの力があって長く歌い継がれる名曲になったってことです。
◇ うちのテレビにゃ色がない(作詞・作曲 三木鶏郎、歌唱 榎本健一)
これまた三木鶏郎作詞作曲だけど、1950年代のエノケンの歌のほとんどは三木鶏郎が手掛けており、いわば座付きコンポーザーと言える存在だったんです。
このCMの放送は1965年ということなので、久しぶりにタッグを組んだ、ということになりますか。
さすが三木鶏郎はエノケンのことがよくわかっているので、だいぶ衰えているとはいえ(もうエノケンの晩年だからね)抜群のリズム感と<アク>を上手く入れ込んであります。
◇ 鉄人28号(作詞・作曲 三木鶏郎、歌唱 デュークエイセス)
え?これ、アニメの主題歌じゃないの?と思われるかもしれないけど、アタシにとってはこれも一種のコマソンなんです。
神戸の新長田に鉄人28号の馬鹿デカいモニュメントがあるのですが、それを見るたびに脳内に浮かぶのは「♪ 夜ゥの街ィにガオーッ!」ではなく「♪ グリコ グリコ グーリーコー!」なんですよ。
というかこの歌は「グリコ」まで含めてひとつの楽曲です。となると、やっぱ、コマソンでいいんじゃないかと。
◇ サクマ チャオ(作詞・作曲 郷伍郎、歌唱 天地総子)
いったい何の関係者なのか、それとも超古参マニアなのか何もわからないのですが、某YouTubeに「メーカーや制作会社でさえ映像を残してなさそうな、音源すら残ってなさそうな」1970年代、さらにそれ以前のCMをガンガンアップされている方がおられます。
中でももっとも印象に残ってるのがサクマ製菓の「チャオ」というキャンディのCMでして、とにかく「♪ サクマのチャオ 食べェチャオ!」というフレーズが異様に耳に残る。
あ、これ、映像はともかく音源は現存していますし、CD化もされています。(「天地総子・フーコのコマソンパラダイス」)
◇ レナウンイエイエ(作詞・作曲 小林亜星、歌唱 朱里エイコ)
まさか、ねぇ。あのレナウンがなくなる時代が来るなんて、どうも信じられない。
レナウンのCMと言えば日曜洋画劇場を思い出すけど、どのCMも、洒落た洋画の間に流れてもヒケを取らないクールさがあったんです。
「イエイエ」はさすがに知らないけど、これだけサイケ感が爆発してる。にもかかわらず、今見てもほとんど古臭くないってのは驚異的ですが、映像だけでなく音楽もすごい。オルガンサウンドのR&Bって感じだけど、トラックのクールさも歌唱のクールさも映像にヒケをとってないのはすごすぎます。
◇ テル(作詞・作曲 越部信義、歌唱 楠トシエ)
これ、映像もないし、何の商品のCMかもよくわからなかったんだけど(どうも洗濯洗剤らしい)、単純きわまる歌詞と楠トシエの相性が良すぎて、やたら耳に残ります。
◇ 福助足袋の歌(「どなたになにを」作詞 サトウハチロー、作曲 三木鶏郎、歌唱 岸井明)
福助足袋の歌と言えば「鶴瓶上岡パペポTV」です。
例の如く、上岡龍太郎が突然この歌を歌いだして鶴瓶が「何でんねん、その気持ち悪い歌」とツッコむお馴染みのパターンで登場したのですが、その後の放送で詳細なスタッフや歌詞が番組中にあきらかになる、という珍しいパターンでした。(たいていはその手のフォローはない)
しかしこれはいろいろ無敵です。
作詞が奇才・サトウハチロー、作曲がコマソンの神様・三木鶏郎、そして歌唱が戦前からのミュージカルコメディアンの岸井明なんだから。
岸井明の名前は現今残ってるとは言い難いけど、この人はすごいですよ。出来ることなら「唄の世の中」(1936年・P.C.L.)か「孫悟空」(1940年・東宝)、それが無理ならせめて戦後の「銀座カンカン娘」(1949年・新東宝)は是非見て欲しい。
◇ 安さ爆発カメラのさくらや(作詞 さがらよしあき、作編曲 小林亜星、歌唱:山川ユキ)
何故か関西に住んでた頃から知ってるのは知ってた。
何で知ったかの記憶はさっぱりないし、たぶんこれは入ってなかったと思うんだけど、植田まさしの初期の短編ギャグ(4コマ漫画ではない)の中に「やたらCMのフレーズを言う」ってギャグが入ってたんですよ。
そのほとんどが関東ローカルのCMで、ギャグの面白さがわからなかった。わからなかったけど、とにもかくにも「そういうCMがある」というのは刻みこまれたわけでして。
・微妙なライン5選
ここから挙げる5つは実に微妙なラインでして「バージョン違いはリアルタイムで知ってる」「CMとは違う形で歌としては馴染み深い」「リアルタイムなのかどうかはっきりしない」5種を並べてみました。
◇ ヨドバシカメラ(作詞 藤沢昭和、賛美歌(「リパブリック讃歌」)、歌唱 不詳)
今も同様のCMソングが使われているわけで、知らないなんてあり得ないレベルなのですが、少なくとも初期の、歌詞が「♪ まァるいみどりの<やまてせん>」というバージョンは100%リアルタイムでは知りません。
<やまてせん>と<やまのてせん>の呼びが混在していた期間が長く、国鉄(現・JR)は1971年の時点で<やまのてせん>(つまり現今と同じ)に統一を図ったようですが、ヨドバシカメラのCMソングは1985年バージョンまで<やまてせん>と歌われていたらしい。
これが<やまのてせん>に改められたのが1991年、アタシが初めて東京に居住したのが1994年だから、ま、「間に合わなかった」ということになります。
言うまでもないけど、ヨドバシカメラは1990年代の終りまでは関東(というか新宿)以外に店舗がなく、居住経験のある大阪に出来たのが2001年、博多に出来たのが2002年だからね。もうその頃にはどっちにも住んでなかったし。
ただし大阪の日本橋にあった「エキサイト」(ジョーシン系列)はリパブリック讃歌の替歌で、どうも一時期ヨドバシカメラとジョーシンが提携していて、そういうことになったらしい。
◇ ビックカメラ(作詞 新井隆司、賛美歌(「まもなくかなたの」)、歌唱 不詳)
もちろん「♪ ふッしぎなふッしぎないッけぶくろ~」ですが、メロディはヨドバシカメラと同じく賛美歌。日本では「♪ たんたんたぬきの金時計~」の歌詞でもお馴染みですよね。
これ、最初に聴いた時、これってもしかして?と思ったんだけど、その話はPage2にて。
◇ セブンイレブンいい気分(作詞 中村昭雄、作曲 橋本公彦、歌唱 不詳)
これはもう、コマソンというよりは、いわゆるサウンドロゴってヤツなんだけどね。
あとこれはコマソンとは関係ないのですが、当時、斉藤ゆう子っていう元祖メガネっ娘タレントみたいな人がいてね。この人がセブンイレブンのCMで「飛びませんねぇ」ってフレーズをやって大ヒットしたんです。
ところが当時、セブンイレブンは関西に進出してないから当然このCMは関西ではやってない。当時の芸人(誰だったかは忘れた)が「関西で「飛びませんねぇ」ってやってもさっぱりウケなかった。斉藤ゆう子は関西のタレントだったし、まさか関西でこのCMをやってないとは夢にも思わなかった」みたいな話をしていたのを鮮明に憶えています。
今回はオミットしたけど、似たような話としては河内家菊水丸の「カーキン音頭」(フロム・エーのコマソン)も同じパターンで、当時関西でフロム・エーは発行されてなかったから関西芸人の河内家菊水丸の歌なのに関西人は誰も知らなかったという。
◇ メガネドラッグ(編曲 小林亜星、歌唱 大和田りつこ)
これ、Wikipediaを見ると『原曲は「隣組」(作詞 岡本一平、作曲 飯田信夫)』となってるんだけど、違うよなぁ。正直<酷似>ってレベルにも行ってない。
当然、このCMが流れていた頃は東京に住んでなかったので長らく知らなかったんだけど、2003年頃、アタシが新宿のオフィスに勤めていたのですが、オフィスのわりと近くにメガネドラッグがあってね。そこでしつこいくらい聴かされたんだよね。だからもう<CM>ですらなく、自分の中でのカテゴリはドン・キホーテの歌(♪ ドンドンドン ドンキー ドンキーホーテ~)とかと同じく「店内(店頭)BGM」に近いのですがね。
◇ ニュー弁天(作詞・作曲・歌唱 不詳)
完璧な関西ローカルCMだけど、どのタイミングで聴いたのかの記憶がないんですよ。
もしかしたら後年、YouTubeとかで?とも一瞬思ったんだけど、1997年の時点では100%知ってるって証拠はある。当然その頃はYouTubeはおろかアタシがインターネットを触るはるか前だし。
となるとリアルタイムで、しか考えられないんだけど、どうも自信がない。普通はこの番組で、とかあるんだけど、それがない。
ネット情報によると「サンテレビでよく流れていた」とあったんだけど、違うような気がするなぁ。何となく関西テレビくさい。
てなわけでPage2、んで第二部に移行します。