狂った打線プラスアルファ
FirstUPDATE2017.5.8
@Scribble #Scribble2017 #プロ野球2017年 単ページ 阪神タイガース 広島東洋カープ 福留孝介 大逆転

凄い、凄すぎるわ!いやぁ、もうそれしかいえない。いえなくないですか?だって広島相手にあんな結果ですよ。誰が予想しましたかって話ですよ。

前回広島と戦った後のエントリタイトルは「恐怖の失策責任追及打線」でしたが、とにかく今年の広島は相手の隙につけ込むのが上手い。いやもう上手いというレベルではないくらい、ミスやエラーをしたら100%の確率でつけ込んでくる印象でした。
この前の三連戦は「エラーをしない」ことによって、つけ込む隙をなくし勝ち越した。ま、当たり前っちゃ当たり前の戦い方です。
ところが今回の三連戦はそれをも超越してしまった。エラーしようがミスしようが「ン?だから何?」みたいな感じでスルーしてしまうって感じで戦ったのです。

エラーは単純に出塁を許すだけじゃなく、とにかくチームの空気が悪くなる。投手はガッカリもすれば怒りもするし、何よりリズムが狂う。野手は野手で、エラーした当人は引きづるし、悪い空気が他の野手にも伝染してしまう。
そんなことを繰り返しているチームは当然弱い。これが野球の、いわば「常識」でした。
広島は「隙につけ入るのが上手い」というよりは「悪い空気につけ入るのが上手い」という感じだった。そしてそれが出来るチームは強い。これも「常識」だった。

ところがこの三連戦で、野球の常識を完全に覆してしまった。エラーしたら空気が悪くなるのが当たり前のはずなのに、空気が悪くならない。こうなると広島側が動揺する。え?何でコイツら、エラーしたのに空気が悪くなんねーの?普通空気悪くなるっしょ、と。
しかも阪神は空気が悪くなるどころか、ミスを取り返そうとするのか、エラーをすればするほど打線に火がつく。まさに前代未聞、ひと言でいえば「狂った打線」としかいいようがありません。

しかし単に「狂っ」てるだけではなく、阪神はポイントで非常に大きいことができた、広島はできなかった、というのも見逃せない。
まずは歴史的大逆転勝利をした第二戦です。6回、3点を返してなお二死満塁。打席には途中から守備に入った原口の場面です。
はっきりいって原口の調子は、昨年一軍に上がって以来、一番悪い。この打席もまったく打てそうな感じがなかった。
代わったばかりの中田廉にたいし、タイミングはあってるのに甘い球をぜんぜん前に飛ばせない。開きが早く捉えきれないのです。
ここまで調子が悪いと普通は終わりです。良い結果が生まれるはずがない。ところが原口はボール球は一切振らずに四球をもぎ取った。中田廉も結構いいところにフォークを投げてるのに反応しない。何度もいうように調子最悪の原口が、です。

ネットなんかでは「阪神は相手のコントロールの悪さに助けられている」といいます。しかしこれは違う。
投手というものはストライクだけ投げていても成立しません。つか如何に上手くボール球を振らせることができるかで投手の価値が決まるといっていい。
中田廉はコントロールを乱してボール球を投げていたんじゃない。打者が振りたくなる、けどボールゾーンだから当たらないところに投げていただけです。
ところがこれを振らない。これじゃあ、ね、投手はたまったもんじゃないですよ。全部ストライクゾーンで勝負するなんて不可能なんだから、原口もいくら調子が悪くてもストライクゾーンならバットに当たるんだから、ボール球を混ぜないとどうしようもないわけで。

もうひとつは三戦目の福留の打席です。
広島先発の九里亜蓮は序盤からフォークが良かった。空振りをとるフォークとストライクからストライクになるフォークを実に上手く投げ分けていました。
しかしいくらなんでもフォークが多すぎた。一般的にフォークはもっとも体力を消耗する球だと言われています。正確には体力というより握力なのかな。
とにかく6回に入ると、あきらかにフォークの抜けが多くなっていました。
北條にはフォークを拾われてヒット、糸井にはフォークが抜けまくって四球。そして福留です。
1球目2球目ともにフォークが抜けてボールになった。はっきりいって限界です。しかし一戦目二戦目で中継ぎを使いまくった広島は九里を交代できない。

もうフォークが抜けてストライクゾーンに一切いかない状況なんだから、素人考えではストレートを投げるしかない、と思うわけです。
アタシは当然福留はストレートを待っている、と思っていた。それがセオリーだから。
ところが驚いたね。福留は「高めに抜けるフォーク」を待っていた。あれ、もしストレート狙いならファールになっていたと思う。
もうさすがベテランというか、読みのレベルが違う。若いチームってのは楽しいんだけど、要所にベテランを配している強みが活きた、というか。

一方広島はね、たしかに菊地がいない、ジョンソンがいないというのはあるし、エラー(とくに二戦目の西川の度重なるエラー)やミス(二戦目の田中の謎のホーム突入)もあったけど、それより「出てくる投手が全員同じタイプ」ってのはかなり根本的な問題だと思う。
敗戦処理のオスカルや高橋以外、揃いも揃って「荒れ球の速球派の右投手」なんですよ。技巧派も左もいない。たしかにみんな球に力があるので最初は苦戦するけど、一度タイミングを取られてしまうとつるべ打ちにあってしまう。二戦目なんかとくにだけど、岡田が引きづりおろされて、次に出てきたのが中田廉。そして薮田。これは対処しやすいですよ。

アタシはこないだホメたように、九里も岡田も加藤も良い投手だと思う。でもあまりにもタイプが似すぎているのが辛い。何というか、これは編成の問題です。
かといってオスカルや高橋を大事な場面で投げさせるってのもね。オスカルから髙山や鳥谷が簡単に盗塁を決めたように、あまりにもクイックが遅すぎて勝負所で使うには怖すぎます。
広島は打線にかんしては、実にバラエティに富んだタイプの違う良い打者がいっぱいいる。反面投手は同じタイプばかり。この三連戦では投げなかったけど、ジャクソンも今村も、抹消中の中崎も同タイプだし(ま、野村は右とはいえタイプは違うけど)。しかもこれ、簡単に何とかなることでもないような、ね。

広島の防御率はいずれ改善されると思うし、阪神もいくらなんでもこんな失策数がいつまでも続くわけがない。
つまり両方とも改善されるといえばされるんだろうけど、それでも「阪神の守備は酷い」とか「広島は同じタイプの投手しかいないから打たれだすと止まらない」ってイメージは簡単に覆せないと思う。
アタシは今年の巨人はまったく買っていないので、結局争うのは阪神と広島だと思う。思うんだけど、どっちも「両方強い」ってレベルじゃなくてね、どっちも致命的な欠陥があるレベルだと。

ま、最後まで楽しめそうな感じがした三連戦だったってだけで十分なのですが。歴史的大逆転勝利も見れたしね。

歴史的大逆転勝利の試合の録画は残しており、ってもあまりにも長過ぎるので5回からだけど、たまに見るのですが、今見てもワクワクします。
だから結果としては和田政権や矢野政権に劣るけど金本政権は嫌いになれない。結局2010年代で一番ワクワクしたのは金本政権の時だもん。




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