えと、アタシが中学の頃、ガンプラブームが巻き起こりました。ってな話はこないだも書いたのですが。
ガンダムのプラモデルを手に入れるために、早朝から模型店やデパートに並んだ、アタシと同世代の人もおられるんじゃないでしょうか。もちろんアタシもそのひとりです。
でね、今も、小物関係をちょちょいと塗装したい、となったら、それはもう、タミヤの塗料でってことになってしまうわけで。
どうも、タミヤの塗料でないと好みの色合いが出ないっていうか、タミヤなら混色したとしてもアタシ好みの色合いになっていうか。もちろんGSIクレオス製も試したことはあるんだけど、何か違うんです。
余談ですが、今はガンプラの塗装はクレオスの塗料を使うのが主流みたいですね
塗料だけじゃない。筆もやっぱりタミヤの筆を使っています。
これも散々いろんな筆を、それこそ絵画用のやつからプラモデル用でも他社製のものも含めて試したんだけど、タミヤ製の筆はもうぜんぜん質が違う。タミヤの塗料だからタミヤの筆、というわけでもなく、何に使うにしても、とにかく良く出来てる。
その結果、最近あまりプラモデルを作ってないにもかかわらず、タミヤへのリスペクトはかなり強いのです。
タミヤ製なら大丈夫、絶対安心して使える。
だから、あのお馴染みの星のマークは「絶対安心品質保証マーク」に思えるわけで。
カメラマンが「突然のトラブルが起こる可能性が低い」という理由で高価なカメラを使うように、アタシも(別にタミヤ製品は高くはないけど)信頼という意味でもタミヤ製品を使うのです。
さて、以前「模型に捧げる」というエントリを書いたことがあります。
模型界に多大な貢献をしてきた井田博の著書を取り上げたのですが、この本の巻末に井田博と当時の社長で現会長の田宮俊作との対談が掲載されています。
で、今回は、最後まで「ファン目線」で模型界を支えた井田博とは反対の、「メーカー目線」で模型界の発展を支えた田宮俊作の著書「田宮模型の仕事」です。
この本は、静岡の超弱小模型会社が世界的大企業にのし上がるまでを描いており、一種のビルドゥングスロマン・ノンフィクションとしても読めるのですが、もうこれが滅多矢鱈に面白い。
大丈夫。プラモデルにたいして興味がない人でも十分面白いです。何よりアタシが、今現在プラモデルにはさほど思い入れはないにもかかわらず面白かったんだから。
何だか、読んでて、とにかく胸が熱くなる。
まだ田宮模型がまったく軌道に乗らず、もし次作のプラモデルがコケたら会社の存亡に関わるような頃の話です。
田宮俊作は起死回生を賭けて、当時の人気画家で超多忙な小松崎茂(絵物語作家としても有名)にボックスアートを描いてもらおうと手紙を書くのですが、その時の小松崎茂の返事がアツい。アツすぎる。
私があなたの会社を救ってあげましょう!
くぅゥ!!こんな言葉、なかなか言えませんよ。カッコ良すぎるじゃありませんか。
他にも田宮俊作自ら、アメリカやイギリスの実物の戦車が展示してある博物館に行って、写真を撮りまくる話も、共感できすぎて困ってしまいます。
といってもアタシは別に戦車には興味はないんだけど、マニアが本当に目的のものに出会えた瞬間の興奮、仕事には違いないんだけど、趣味も仕事も超越して熱中しまくる感覚は痛すぎるほどわかります。
この本には、模型に限らずマニア心理をも包括するような貴重な示唆もいっぱい書かれています。
マニアが増える喜び、反面ビギナーを遠ざけているんじゃないかという恐怖、いったいどこに向いて「モノ」を作るべきなのか、こだわりが時には逆に作用することも具体的に書かれており、本当に勉強になります。
良いモノを提供していく、それはモノを作る側としては当たり前なのかもしれません。しかしそもそも良いモノとは何なのか、何を見て進めばよいのか、そこまで示唆してくれる本はなかなかない。
そしてプラモデルだけではなく、塗料や工具類に至るまで、今もタミヤの姿勢は貫かれているわけで、こうやって信頼を得ていくんだな、と思える。
最後に話は逸れますが、ロンドンでも、あの星のマークを見ることが出来るのですが、それだけで「ああ、この店はわかってる」と信頼することができる。信頼って連鎖するんですよ。
ここからは令和からこんにちはですが、小松崎茂の話、実は後の話が面白くてね。
上記エントリは仕事用として書いたものなので、まァいや「いい話」で終わらせているのですが、2019年にアタシが書いた文章を併記しておく。もちろん「後の話」です。
って結局、タミヤがわりと早めに小松崎茂のボックスアートを止めているのもすごい。せっかく男気で応えてくれたのに。
アタシなんか「ああ、これは仕事そのものだなぁ」って思っちゃう。尋常じゃない熱量と尋常じゃない冷徹さ。このふたつがあって<仕事>なんじゃないかと思ってみたり。