リオオリンピックの閉会式の日本のパート、わりと評判が良かったみたいですね。アタシはリアルタイムで見れなかったので後でYouTubeで見ましたけど、たしかになかなかの出来でした。
こうなってくると、本チャン、つまり2020年の開会式をどうするかは人々の興味を惹くところですが、その前に。
アタシは1960年代後半の生まれなので、1964年の東京オリンピックにかんしては知識としてでしか知りません。
それでも、あのオリンピックの空気感は市川崑による空前絶後の傑作「東京オリンピック」を見るだけで十分「後追い体験」は出来ます。
市川崑が手がけた「東京オリンピック」は公開当時から評価が真っ二つに割れた作品としても有名で、「賛」の意見としては「あれだけ見事に、人間と舞台となる街を描き切った映画はない」、「非」の意見は「あまりにも競技内容や結果を蔑ろにしすぎている」といったものがほとんどです。
アタシは完全に「賛」側ですが、実際「賛」も「非」も、どっちも正しいのです。というか「非」側の言いたいこともよくわかる。(たとえば作家の山口瞳はこの映画をコキ下ろしています)
しかしこの手のドキュメンタリー映画に正解はないわけで、「非」を覚悟の上で、突っ切った映画に仕上げた市川崑はやはり素晴らしい。
オリンピックは国民的行事ですからね、と書くとカラまれそうで嫌なんだけど、国民的行事にしなければイコール失敗なんだから、それでいい。
ただ国民的行事である以上、どうしても無難に、というか、「非」を恐れるあまり「賛」を得られない、要するにつまらないものになってしまう可能性が高いものだとも思うわけで。
さて、言うまでもなく1964年の東京オリンピックの頃は、今のような派手な開会式ではありませんでした。良くも悪くも「粛々とした」ものでしかなかった。
それがロサンゼルスオリンピックの頃からかな、一気にショウと化した。アタシは前回のロンドンオリンピックはロンドンに滞在する直前だったのですが、あの開会式を見て「ああ、こんなにエンターテイメントがわかった国に滞在するんだ」と感慨のようなものを覚えたものです。
実はイギリスとかアメリカのような国が「国そのものをエンターテイメントで魅せる」というのが一番難しい。彼らの作ってきたものはスタンダードになりすぎて、その国ならではのカラーを出しにくいのです。
そういう意味で今回のブラジルなんかは、わりとやりやすい。ま、あくまで開会式のショウに限った話ですが。
さて日本の場合、です。
「日本という国の文化」をショウとして表現するのは、簡単なようで、あまりにも難しい。たとえば最悪なのが、歌舞伎や能、相撲、和太鼓なんかの日本固有の文化に固執することで、そんなもんは「今の日本文化」の1パーセントも表現できていない。歌舞伎や相撲が悪いのではなく、メインストームでないものをメインにもってくるのは、ある種の「嘘」で、諸外国はもちろん日本国民にすら支持を得られない。
そういった意味では、リオの閉会式でゲームやアニメのキャラクターをフィーチャーしたのは正解で、短い時間でナマの日本を見せることは成功したと思う。
でも開会式はもっと時間が長い。いくらなんでもゲームやアニメのキャラクターだけで時間を埋めることはできない。ではどうしたらいいのか、です。
アタシは日本文化とは「西洋文化の日本的解釈」という言葉に尽きると思っています。
和洋折衷ともちょっと違う。どうしても和洋折衷となると「和」の比率が上がってしまう。でも、実際はそこまで「和」は強くはない。あくまで好きな人は好きだけど、というレベルです。
そうじゃなくて、日本人は如何にして西洋文化を日本人のためのものにしてきたか、を語らないとダメだと思う。
そのためには江戸時代以前のことは、せいぜい前史に止める必要がある。明治時代以降に、どういった形で西洋文化が流入し、ただ流入しただけではなく、日本人にフィットするようにアダプテーションさせてきたか、その歴史を「ショウ」でやるのです。
で、アタシは思うわけです。こういうショウを仕切れるのは東宝しかない。日本流のショウは東宝の存在なしには語れないのです。
映画版「東京オリンピック」は東宝の製作・配給でしたが、もし1964年の時点で開会式がショウアップ化されたものだったとしたら、やっぱり東宝が仕切るべきだったと思う。
もうだいぶノウハウは薄れてるかもしれないけど、それでも資産が山のように残っているのは東宝なんです。
昔の、それこそP.C.L.時代の音楽劇なんかの映像を巧みに織り込みながら、今のクールジャパン(て言葉は胡散臭いけど、この際しょうがない)までを結びつけるショウ。
そんなのアイドルが出てきて、とか絶対無理な話ですよ。見たくないとかという以前に荷が重すぎる。
もうさ、利権とかどうでもいいから、ちゃんとしたヤツをやろうや。マジで。こんな機会は滅多にないことなんだから。「非」を恐れずに「賛」を目指しましょうや。ね。
とまあ、いろいろ書いてますが、結果はご承知の通り、としか言いようがない。 いったい何がどうだったかはココに書いてます。 |
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