ここんところ戦前戦中の文献や映画を調べ倒しているのですが、当時をリアルタイムで体験したわけではない世代、もちろんアタシも含むのですが、ひとつ強烈な疑問を持ってしまうのは当然だと思うのです。
それは「何故軍部はあそこまで国民を縛り上げたのか」です。
軍部の暴走、というのは簡単です。もちろん一部にはガチガチのそっくり返った考えで「ただ縛り上げればいい」と思っていた連中も、いたのは間違いない。
それでも国政として、娯楽を取り上げ、質素な食事を強要し、とにかく小市民の楽しみを片っ端から排除していったのは理解できなくて当然です。
でも、戦争なんてもんをやらかそうと思えば、少なくとも日本人が戦争をやるとなったら、もうそうするしかなかった。
戦争の是非についてとやかく言う気はさらさらない。でもこれは確実だと思うのは、はっきりいえば「日本人は戦争には向いていない」ということです。
そういやサッカーの元日本代表監督であるフィリップ・トルシエが面白いことをいっています。
日本代表監督をやり日本人に対しての印象が変わったのは事実。一番驚いたのは日本人は不真面目だった事。本気になる事を格好悪いとでも思っているかのよう。本気になる選手がいてもその選手を周りの選手が茶化すような素振を見せたときはこれでは勝てないと思った。
これ、トルシエだけじゃなしにアタシもロンドンに滞在していた時におんなじことを思ったんだよね。
学校であれ仕事であれ、休んでも文句を言われない、後ろ指を指されない、となったら真っ先に休むのが日本人でした。
全部の国の人が、ではありませんが、それでも多くの国の人が「やりたいからやる」のにたいし、日本人は「やらなきゃいけないからやる」なのです。
だから「やらなくてもよい」となった途端にやらなくなる。
たぶんこれは日本人の気質です。自由にやっていいよ、となったら何もやらない。さすがにはっきりとしたっていうか強烈な目標があれば自主的にやりますが、少しでも目標がボヤけていたら能動的に動かないのです。（ま、言い方を変えるなら、いろんなことが漠然としているのが日本人といえるのかもしれない）
しかしそんな人でも、やらないことへの罪悪感は持っている。
そんな国民性の日本人をひとつにまとめ上げようと思えば、もう、異様なまでに縛り上げるしかない。
縛り上げることによって強く罪悪感を持たせる。その結果、全員が右へ倣えの状態になり勤労や国益になることへ遂行するようになる。
情けない、といってしまえばそれまでですが、そんな国が、というか国民が戦争なんてもんに向いてるとは思えないのです。
それはもう、ずっと昔からそうだと思うんですね。
内紛というか、まァ戦国時代とかですね。当時の武将の兜や鎧とか異様に派手でしょ。諸外国の甲冑の地味さからすれば実用性より見栄え、とすらいえてしまう。
あれだって、ただ単に戦うってよりも「自慢の武装姿のお披露目」の意味もあったんじゃないかと。
根っからの戦闘民族ではないからね。戦うことへの意義っつーか、気分が高揚する何かが必要だったんじゃないでしょうか。
話を戻しますが、太平洋戦争中、国が映画を統括して検閲にパスしたものしか制作できませんでした。
これはドイツに倣ったといわれていますが、こんな無意味な政策もない。
日本人は右へ倣えですが、フィクションを見て感化されるってのは自我が強くて初めて成立するものです。
つまりどれだけ「お国の為に」と映画の中で訴えたところで、家族だったり友人だったりが「どう考えているのか」の方が重要なのです。
作る側としても、先ほども書いたように戦闘民族ではないのですから「どうやったら戦争を肯定的に描けるか」という感覚が欠如している。
戦時中に限らず日本で作られた戦争映画に高揚感がないのは、そもそも戦うことの意義や、語弊があることを承知で書けば、戦争の面白さをわかっていないから、だとしか思えないんです。
またまた話が逸れましたが、とにかく日本人は不真面目です。欧米式の「自由に、やりたいことをやりたいようにやる」ってのがとことん向いていないんです。ルールからはみ出すことは出来るけど、ルールを意識しながらはみ出している。
もう一度いいます。戦時中の軍部が正しいなんて思っちゃいませんよ。もちろん戦争が正しいとも思わない。
そういうことじゃなくてね、日本人は戦争には向いていない。某政党は戦争をやりたがっている、なんて莫迦なことを言いたがる人がいますが、残念ながら（残念でもなんでもないけど）日本人でそういう気質の人はいない、と言い切れる。
そーゆーの、もうちょっと日本人自体が認識しておいても良いんじゃないかと思うんだけどね。
