以前、箱根の北原おもちゃミュージアムに行ったって話を書きました。(現注・当該エントリはオミット)
そもそも何で箱根まで行こうと思ったかといえば、どうしてもモーションディスプレイの実物を見たかったからに他ありません。
そもそも「モーションディスプレイとは何ぞや」ってな話ですが、その前に別の話を。
今、一番簡単に稼動の立体ミニチュアを作ろうと思ったら、レゴという素晴らしいおもちゃがあります。
レゴはアタシが幼少の頃からある定番のおもちゃ(知育玩具といった方がいいのかな?)ですが、最近はとんでもない進化をしていて、モーターを使ったパーツなんかが出ているんです。
前にテレビ番組で日本のレゴ界の大御所が集結して壮大な「動くジオラマ」を作っているのを見たことがありますが、これが感動的なまでにすごかった。観覧車が回ったりとかいろいろするんだけど、何がすごいといっても、全部レゴのパーツだけで構成されているんですね。
レゴ自体、本当に慣れ親しんだおもちゃで、アタシにとって原点です。だから語りたいことは山ほどあるけど、その辺のことはまた今度。
ではレゴを使わない完全オリジナルの世界観で「動く」立体ミニチュア作品を作っている人といえば、なんといってもムットーニでしょう。
ムットーニこと武藤政彦氏の世界観は本当に圧巻で、ただ人形やセットが動くだけではなく音楽付きのストーリーになっている。いわば立体ミニチュア作品でありながら物語を紡ぎだしているのです。
こんなことをやろうとすれば、もうとんでもない緻密な計算と、世界観を形成したいという強い意志がないと不可能で、ちょっとした思いつきで出来るものでは到底ない。
ムットーニの作品のような、ああいうすごいのを見せつけられると、これは真似できるものじゃないな、と悟ったわけでね。
動く立体ミニチュアは実はかなり古い歴史があり、とくに一世を風靡したのがモーションディスプレイでして、これは主にアメリカにおいて1930年代に流行ったもの、という話を北原照久氏から直接うかがったことがあります。なので以下の知識はすべて北原氏からの受け売りです。
時計屋や貴金属店は高価なものを販売する店ですが、ショーウィンドウは地味になりやすい。高価な商品をショーウィンドウに並べるわけにはいかないからです。
そこでモーションディスプレイというアドバタイズメントが流行った。つまりショーウィンドウに「動く立体ミニチュア」を置いて人々の目を惹こうとしたわけですね。
ところがもう、実際に稼動するモーションディスプレイはほとんどないらしい。とにかく古いものですし、何せアメリカでも3人くらいしか修理が出来る人がいないんだから、大半が壊れて廃棄された、といいます。
が、ここが北原照久氏のすごいところで、ちゃんと稼動するモーションディスプレイをいくつも持っておられる。しかし何しろモノがデカいので、スペースの広い箱根の北原おもちゃミュージアムにしか置いてないという。
となったら、もう、行くしかないわけで。
実物を見てね、こんなもんが本当に1930年代に作られたのか、と感嘆しか出ませんでした。
1930年代といえば、アタシの大好きな戦前モダニズムの時代です。我が国日本でもこの時代、簡易立体ミニチュアであるペーパークラフトを児童雑誌のフロクとして同梱し、簡易、なんて言葉が不必要なくらい本当に良く出来ています。(現注・児童雑誌のフロクのペーパークラフトの話はココにちょっとだけ書いてます)
だけれどもこれはさらにすごい。立体ミニチュア特有のせせこましい感じがまったくなく、大きいものはもちろん、小さいものも、ダイナミックなんですよ。
どうしても立体ミニチュアといえば女性や子供が喜びそうなイメージがあると思いますが、これは大人の男性向けです。というかモーションディスプレイの用途を考えたら、宝石なんかを欲しがるのは女性、あとはどうやって男性の興味を惹くことが出来るかです。
となったら、ダイナミックな男性的なものにした方がいいに決まってる。といっても、女性や子供が見てつまらないかといえば、もちろんそんなことはない。
モーションディスプレイこそ立体ミニチュアの究極形なんです。クレイアニメとかもあるけど、作品だけですべて完結するモーションディスプレイには敵わないと思うのですがね。