アキバスピリット
FirstUPDATE2015.2.25
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 なんだかんだといってもね、やっぱり秋葉原は面白い街だと思うんですよ。そりゃあ、今はつまらなくなった、昔は今とは比べものにならないくらい面白い街だったと言う人はいくらでもいるんだろうけど、今は今で、まだ独特のニオイはありますから。
 
 1980年代前半、アタシは神戸に住む一介の高校生でしたが、当時はマイコンなんてものに淫していましてね。
 だから三宮にある星電社(正確には<せいでん>)には足繁く通った。とにかくマイコンコーナーが充実していたからです。
 とはいえ当時の神戸で、マイコンを扱っためぼしい店はと言えばこの星電社とニノミヤ無線くらいしかなかった。
 もっとマイコンをっつーか、パーツ類やマイナーな製品を求めたいとなると日本橋に行くしかない。あ、もちろんお江戸日本橋じゃないよ。通称でんでんタウンのある、大阪の日本橋です。
 
 神戸から日本橋まで電車で2時間ほど。遠いっちゃ遠いけど、高校生くらいになれば余裕でひとりで行ける距離です。
 2時間もかけて行ってたくらいだから、そりゃ当時の日本橋はマイコン少年にとって心踊る場所だったことには違いない。何しろ日本で二番目の規模の電気街なんだから三宮とは比べものになりません。
 しかしあくまで「二番目の規模」です。一番ではない。では一番は、もう書くまでもありませんが当然秋葉原になります。
 当たり前ですが、秋葉原があるのは東京。神戸に住む一介の高校生が易々と行ける距離ではない。それでもマイコン雑誌を読んでるといやが上にも「秋葉原つちゅうのはどんだけスケールがデカいねん」みたいなイメージは膨らむだけ膨らむわけでして。
 
いつかは秋葉原に行ってみたい・・・。
 
 そういやこの頃「いつかはクラウン」なんてキャッチコピーを用いたCMをやっていましたが、当時のアタシにとっては「いつかは秋葉原」であり、しかしどれだけ想像を逞しくしても秋葉原に行くようなプランが見えなかった。
 
 大学に入ってから、ま、大学は大阪の大学だったけど、それでも何度も東京に遊びに行くようにはなった。なったんだけど、もうこの頃はマイコン熱みたいなのが醒めた頃だったので、まったく秋葉原に行こうと思わなくなっていました。
 しかしその後アタシも様々な流転があり、パソコンを使った仕事をするようになったり、インターネットが普及しだしたなんてこともあって、再び秋葉原で扱うようなモノに興味が出始めた。21世紀に入った頃です。
 この頃には東京に住んでいたし、「いつかは秋葉原」というような憧れみたいなものは完全に消えていたけど、それでも行けば行くほど、これは面白い街だな、と思うようになった。アタシが憧れをもった1980年代の秋葉原や、怪しいムードが立ち込めていたといわれる1990年代の秋葉原とは違うのかもしれないけど、十分すぎるくらい楽しい街だったわけで。
 
 21世紀になってからずいぶん経ったけど、最初に書いたように、いまだにアキバは面白い。アタシは萌えに何も興味ないけど、やっぱあそこでしか売ってないものも多いし、あのニオイ(っても鼻で嗅ぐニオイじゃないよ)は独特ですから。
 え?AKB48?ああ、そんなのもあるか。
 いや実際に秋葉原に行ったことがある方なら理解してもらえると思うけど、秋葉原は別に、AKB48の聖地感みたいなのはまるでありませんからね。
 つか、AKB48自体に秋葉原のニオイがないんじゃないかと。当然地下アイドルに近い時代のAKBは知らないけど、AKB48のニオイと秋葉原のニオイは違いすぎるぞ、というか。
 どっちかっていうとあれは池袋のニオイに近い。だから「BKR48に改名した方がいいんじゃね?」みたいにすら、思ったことがあるくらいです。
 しかしアタシは考えをあらためた。やっぱ、よくよく考えたら、AKB48は実に秋葉原らしいアイドルなんじゃないか。
 
 秋葉原に行くとね、毎回見事なまでに「こんなもん誰が買うんだよ」みたいなモノに出くわすんです。
 大半の人にとってはタダでもいらねーよ、と思わせるモノがあちこちで、しかもそれなりの値段で売られているわけで。
 知らない人からすればゴミでしかないもの、秋葉原はそれこそ数十年も前からそんなモノを扱う店が集まってきて発展した街です。
 例えば知らない人からすれば全部同じにしか見えない細かい細かいパーツ類。でも知ってる人からすれば秋葉原にしか売ってない大変希少なモノであるわけで。
 アタシ事でいえば、「こんなの誰が買うんだよ」と思った後に「買うのは自分だ、自分が買わなきゃ誰が買う」と思ってしまう。こんなの、いくら秋葉原といえど誰も欲しがらないよ。でもアタシは、そりゃ全力で欲しいかといえば嘘だけど、完全にスクラップにされてしまったら、それは哀しい。
 だったら、買ってしまえ!となってしまうわけでね。
 
 別に歴史を紐解こうってわけじゃないけど、秋葉原は表層的な<街の顔>を変えながら生き長らえてきた街です。
 戦後から、そして1960年代までの秋葉原は電気部品を扱う、業者や極度のマニアが集まる街だった。それが1970年代に入ると電化製品を扱う店が増え出す。しかも乱立したために価格競争が起こり、結果的には「家電を安く買える」街になっていったんです。
 これが1980年代になると急速にマイコンが勢力を拡大していった。気がつけば大小のマイコンショップが軒を連ねるようになった。
 
 さっきから書いてるようにアタシはこの頃アキバには行ったことはなかったけど、当時発行されていた「I/O」って雑誌(今もあるにはある)に秋葉原のマップか載っていて、それを見れば今でも容易にどれほどマイコンショップが鈴なりだったかはわかります。
 21世紀以降は<萌え>が街の顔になってしまったけど、んでそれにたいして批判的な意見は多いんだけど(アタシだって萌えに興味はないし)、それでも秋葉原が萌えの街になったのは理解出来るんです。それは単にパソコン繋がりみたいなことではなく、ああいうのこそ秋葉原という街でなければ扱えないというか、実は萌えって、ちゃんと秋葉原の伝統に則ったモノなんですよ。
 秋葉原の伝統なんていうと大仰だけど、あの街には芯が通っているんです。ま、<アキバスピリット>といっても過言ではない。
 
「こんなもんを愛おしく感じるのは自分しかいない」
 
 これがアキバスピリットなんです。
 細かいパーツ類だって、古い古いパソコンの周辺機器だって、もちろん萌えだって、世間的に言えば、やっぱね、限りなくゴミに近いものなんですよ。
 しかし、だからなんだ、世間がこれをゴミだと思うなら思えばいい。オレひとりがわかっていれば十分じゃないか。そう思わせたもの勝ちなのがアキバという場所なんです。
 これね、心理学でなんていうか知らないけど、みんなが求めるものを得ることが安心だとするなら、自分だけが求めているものを得るのも、安心とはまた別のよくある心理で、この場合、できるだけ世間から罵倒されているモノの方がいい。
 
 AKBはまさにそれで、ネット上では散々ブスしかいないと叩かれ、挙句はメンバー自身が自ら私はブスと公言する。
 実際、AKBのメンバーが美人やアイドル役でドラマに出ても違和感が凄いでしょ。つかなんでそんな使い方するんだろうといつも思う。
 これ、誤解されそうなんだけど、AKBはブス扱いされればされるほど光る。ドラマの中でさえブス役の方がいい。「AKBはブス?言っとけ言っとけ。あの子の可愛さはその辺の奴らにはわかるわけないんだ」みたいなアキバ的心理を利用しようっていうね、その発想には舌を巻く。
 
 おそらく秋元康は最初から、いくら「秋葉原発のアイドル」といっても地元密着型、要するにオタク向けではダメだと見抜いていたと思う。ここはそーゆー街じゃない、と。
 それよりも、世間から疎んじられている、もっと言えば大多数にはゴミでしかないけど、ごく一部には熱狂的に受け入れられる、つまり「秋葉原のムードをまるまるパッケージングしたアイドル」みたいなのが浮かんだと思うんです。
 AKBが出来た時にはすでにインターネットは普及していた。だけれども「ネットで叩かれる」ことまで計算していたのかはわからない。しかし、ことAKBに限ってはネットで叩かれることは実はプラスなんじゃないか、ブスしかいないと思われる=世間的にはゴミに近いと思われた方がよりアキバ的なんじゃないか、もっと言えばその方がより儲かると気づいたはずなんです。
 いやぁ、これをアキバスピリットと言わずしてなんといおう。
 
 となるとAKBも萌えも、叩かれなくなってスタンダード化しかけた時が一番のピンチだと思う。その瞬間「自分だけの」存在じゃなくなるからね。
 パソコンなんてまさにそうでしょ。「みんなが持ってるのが当たり前」になった現在、パーツ屋や中古屋はともかく、純粋なパソコンショップは秋葉原駅電気街口側はほぼ壊滅し、中央口側のヨドバシカメラに集約されてしまった。つまり普通のパソコンは「わかっているのは自分だけ」なモノを扱う秋葉原では扱いきれなくなったっていうか、生活必需品までランクアップしたんだから、秋葉原から「卒業した」といっていいかもしれない。
 
 パソコンは生活必需品レベルまでいけたからいいけど、AKBっつーかアイドルは所詮は趣味の話だからね。
 何としても「わかっているのは自分だけ」をキープする必要がある。でも崩れるのも必然なんです。
 「マイナーがマイナーをキープしたまま長期間持続させる」ってのは、マイナーをメジャー化させるよりはるかに難しいことだから。それは歴史が証明している。
 さすがにね、もうAKBがデビューしてから10年以上経っているわけで、人気も派生グループにとられた感もあるしさ。つかなんかみんなAKBを叩くのに飽きてきてるでしょ。AKBだけでなく萌えもね。散々やってきたからね。
 
AKBはブスだらけ!
萌えキャラとかキモすぎ!
 
 これからもそうやって薪をくべていかないと。秋元康が指原莉乃を指して「ゲロブス」といって自ら薪をくべたように。
 それがアキバスピリットなんだから。

「ぞわぁっとする快感のはなし」「孤独のシノギ」の日付を見てもらえればわかるですが、これ、実はすごいんですよ。
何たって元エントリは「ぞわぁっとする快感のはなし」「孤独のシノギ」の翌日に上げたものなんです。つまり3日連続でリメイクされているわけで。
たぶんこの頃は調子が良かったんだな。
え?アキバの話?もう関東から引っ越してきちゃったからねぇ。でも2020年に出張で東京に行った時はいの一番でアキバに行ったくらいだから、まだまだ思い入れはあります。




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