ぞわぁっとする快感のはなし
FirstUPDATE2015.2.23
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 ネットスラングで「優しい世界」ってのがあって、語源は諸説あるようでよくわからない、しかも諸説あるどの説の語源の世界もアタシはよく知らないのですが。
 ま、今回書くのは「優しい世界」ならぬ、どっちかっていったら「優しい<機械>」の話なんだけどさ。
 
 あの、どう説明したらいいのかわからないんだけど「ぞわぁっとした快感」みたいなのってあるでしょ。普通<ぞわぁっと>なんていうと気持ち悪い時なんかに使う表現ですが、性的快感とかアドレナリン出まくりとかみたいな強度の快感じゃなくて、もっとふわっとした感じ、とでもいうのかね。
 アタシは洗車機って好きなんですよ。昔のクルマが傷だらけになる硬いブラシでガガッとやるやつじゃなくて、最近のはなんかすんげぇソフトな感じでしょ。ふわっとしたブラシと水圧で優しく優しくクルマのボディを洗ってくれる。もちろん終わったらキレイになってるし。
 最近の洗車機はみなそうだけど、あれって乗車したままじゃないですか。つまりクルマの中からガラス越しにふわぁんと洗ってるのを眺めることになるんだけど、あれ、なんともいえない「ぞわぁっとした快感」があるんですよ。
 
 当たり前だけど洗車機ってくらいだから機械です。機械っつったらどうしても硬いイメージがあって、それこそ先の昔の硬いブラシの洗車機みたいな感じ。
 でも最近のは「機械なのに」「優しい」というフシギな感じになってる。しかも人間のような感情がない分(まあ調子はあると思うけど)、常におんなじ感じでやってくれるのが、より一層「ぞわぁっとした快感」を増幅してる気がするんですね。
 
 話は変わるようですが、実は変わってません。
 どうもね、アタシってヤツはある時から散髪にそこはかとない恐怖心と苦手意識をおぼえるようになってしまいました。
 理由ははっきりしている。それは藤子不二雄A作の「不器用な理髪師」を読んでからです。
 いわゆるブラックユーモアに属する短編なんだけど、ブラックユーモアの名に恥じないブラックなオチが用意されています。
 正直、展開的には藤子不二雄Aの他のブラックユーモアと比べても特別優れているわけじゃあ、ないんだけど<理髪店>が舞台って設定は新鮮で、身近な、男性なら誰でもそれなりの頻度で通ったことがある理髪店、つまり床屋で後味の悪い展開ってのは、やっぱ、結構クルわけで。
 そうは言っても、ま、言っても漫画っちゃ漫画ですよ。あんなふうに床屋で命の危険に晒されることなんて常識的にはあり得ないわけです。
 しかしあの椅子に座ったら最後。こっちはなされるがままです。手足の自由がないんだから何も抵抗出来ない。
 しかも、当たり前すぎる話だけど、こっちは丸腰で相手さんは刃物を持ってるんですよ。となるとこっちとしては「相手さんの常識性を信じるしかない」んです。
 
 んで、もうひとつは苦手意識の方なんだけど、どうもね、もう数え切れないくらい理髪店にも美容院にも行ったけど、こちらの要望を完全に伝えきれて、完全に望むようなカット(パーマも)をされたことが一度もないんです。
 いやこれは店側が悪いわけじゃないと思う。たんにアタシの伝え方がヘタクソなだけなんでしょう。それにしても、一回くらい、気持ちいいくらいにこっちのニュアンスが伝わってもいいんじゃないかとはずっと思ってて。
 
 とにかくこんな感じだからね。相手が日本人でも要望を上手く伝えることが出来ないのに、外国人に要望を伝えるなんて、それこそ脚立で空の星を掴むようなものです。
 だからね、アタシは2012年に半年ほどロンドンに滞在していたんだけど、これは無理だわと。つまりロンドンで床屋に行くことをあきらめていたんです。
 そうは言っても滞在期間は半年もある。さすがに半年の間、一度も散髪しないってのは無理がある話でして、アタシは<ある策>をこうじた。
 それが「自分でバリカン大作戦」です。
 
 つまりはですな、日本であらかじめ海外対応のバリカンを購入しておいて、散髪が必要とあらば自分の手でバリカンで散髪してやる、という。
 もちろんツーブロックとかに出来るわけがないですよ。だからもう、基本は丸坊主。それしか無理。しかし丸坊主ではあっても、所詮は素人&自分で刈ってるわけだから、どうしても虎刈り気味になる。
 そこで虎刈りが目立たない作戦として「ブリーチで髪の色を抜いてやる」=金髪にするってのを思いついた。たしかに金髪なら少々の虎刈りも目立たない。
 だからもう、当時の写真を見ると金髪丸坊主のオッサンが写ってる。何でこんな髪型に?まさか小堺一機リスペクト?それとも春風亭小朝リスペクト?
 なんては言われなかったけど。そもそもイギリス人は小堺一機も春風亭小朝も知らないしさ。
 
 話が逸れてしまった。
 とにかく恐怖心といい、要望を伝えきれないという苦手意識といい、床屋にいいイメージがなくて。
 ただ、もうホント、若干もいいところですが、まだ個人経営の店よりはチェーン店の方が安心感がある。つか恐怖心が薄い。「不器用な理髪師」が個人経営の店だったし、上手い下手は置いといて、さすがにチェーン展開をしているような、それはつまりどこかのそれなりの規模の企業がやってるんだろうし、そこまで下手な真似はしないだろうと。
 ま、床屋のチェーン店となれば、いわゆるクイックカットになるんだけど、クイックカットなんてはじめから要望もクソもない。というかどのみちごくごく簡単な要望しか出せないので、変なコンプレックスを感じなくてもいい。
 そんなわけで、アタシは結構長い期間、クイックカットを愛用しておったのです。
 
 さて、とある日、急に髪を切らなきゃいけなくなって、出先の近くにあったイレブンカットってのに入ったんですよ。
 んでメニューを見ると「カット&さわやかシャンプー」とある。なんだよ「さわやか」って、と思ってたんだけど、これから人に会わなきゃいけないし、まさかカットしてシャンプーもせずに会うわけにもいかないので、そのセットにしたわけです。
 
 まあカットはいわゆるクイックカットなんで予想通り。しかし「さわやかシャンプー」は度肝を抜かれました。
 軽く手洗いした後、なんか頭に機械みたいなんをガチャっとはめ込まれて。んで次の瞬間、四方から水、正確にはお湯だけど、が出てくる。
 つまり機械が水圧で頭皮マッサージを兼ねて髪を洗ってくれるというわけです。
 これが意外にもメチャクチャよかった。気持ちいい。これは完全にアタシが求めてた洗車機の生身版です。まあ頭髪だけですが。
 そうそう、これだよこれ!これがいいんだよ!!
 
 そういえば、1970年に大阪で開催された万国博覧会のサンヨー館(家電メーカーのサンヨー。のちにパナソニックに吸収合併)に人間洗濯機、題して「ウルトラソニックバス」なんてのが展示されていたらしい。
 アタシはね、一応大阪万博には行ってるんですよ。でもまだ2歳にもなる前だったんで記憶がまったくない。写真が残ってるんで行ったことは間違いないんだけど。
 でもさ、よしんば多少記憶があったとしても、1歳児が人間洗濯機なんてのに興味を持つわけがない。んなもんそのトシで「ぞわぁっとした快感」に関心があったらコワいわ。
 
 それにしても、どうしても人間洗濯機とやらを一度味わってみたい。
 メチャクチャ後年になって、というか21世紀に入ってから介護用として人間洗濯機を市販したらしいけど(万博当時も一応市販したらしい。ただし価格は800万円!)、サンヨーが吸収合併されて販売も中止されたそうな。
 惜しいなぁ。いやそりゃ800万円は出せないけどさ、もちろん当時のじゃなくて最新の、つまり今の技術で人間洗濯機とか開発したら、かなりすごいモノが出来るんじゃないの?という期待がある。
 だって今ならニューロとかファジーとかあるんでしょ?え?古い?そうか。つかニューロとかファジーはどうなったんだ。ご苦労さん!
 
 いやいや、マジで、もうちょっと安価で人間洗濯機を開発して欲しい。
 目的は「身体を全自動でキレイにする」ってことじゃない。ただただ「ぞわぁっとした快感」が味わいたいだけ。仮に自分で購入出来なくても(んなもん家に置くスペースとかないし)、設置された店舗があったら行くからさ。
 
 クルマですら、んで頭皮だけですら、あれだけ快感があるんだから、全身となったらもっと凄いんじゃないかとね。
 むろん全裸で洗車機に飛び込む勇気はありませんがね。

良くも悪くもアタシには「行きつけ」という場所が存在しないのです。
行きつけのバーとか行きつけの病院とか(ま、病院の場合は「かかりつけ」だけど)、そんなのがぜんぜんなくて、それもこれも流転をやりすぎたせいだなと反省しておるのですがね。
だからもし、行きつけの床屋があれば、こんな感情は芽ばえなかったと思う。一時期原宿の美容院や湘南台の美容院が行きつけになりかけてたけたど引っ越しで結局ダメになっちゃったし。
ま、今さら行きつけを無理矢理作るってのもアレなんで、とりあえずはクイックカットで我慢しますが。




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