白鳥の歌
死ぬまぎわに白鳥がうたうという歌。その時の声が最も美しいという言い伝えから、ある人が最後に作った詩歌や曲、また、生前最後の演奏など。(大辞泉)
きのうめでたく阪神タイガースが2年ぶりのリーグ優勝を決めました。選手のみなさん、そしてスタッフコーチ陣のみなさん、なにより岡田監督おめでとうございます。
と書いたところでなにやら焦げ臭いにおいがすると思ったら、ふとんが燃えてました。どうやらたばこが下に落ちていたようです。というか落ちてました。みなさんもたばこの火の始末にはくれぐれもご注意を。
なに書いてるんでしたっけ?あ、そうそう、阪神のことですね。
もちろん今日のスポーツ紙は一通り読ませてもらいました。その中でもデイリースポーツ(アタシの友人に何度注意しても「デイリー新聞」という馬鹿がいる。お前のことだよ;;;)の改発博明報道部長執筆による、岡田監督へ向けた記事が一番おもしろく感じました。
個人的には金本とか今岡とか球児に関する記事に目を奪われるだろうなと予想していたのですが、意外にも岡田監督の記事が一番熱いモノがこみ上げてきました。
去年アタシは「岡田更迭」を支持しましたが、まぁアタシもせっかちだわな、とあらためて思った次第です。人間あせっちゃダメだよ。
ま、岡田監督に関することはまたおいおい書くとして、今日は藤川球児について書いていきます。
冒頭の「白鳥の歌」に関しての辞書引用、これは藤川球児に捧げたものです。
なにを馬鹿なことをいってるんだ、本当に球児がこれで終わっていいと思ってるのか、とお叱りを受けるかもしれませんが、アタシだって球児がこのまま終わってほしいわけがありません。
しかし同時に、アタシはどうしても使い捨てのストロボ(昔はあった。今は知らんけど)みたいなものを感じてしまうのです。たった一回、猛烈に強い光を放つって意味でね。
アタシの知ってる球児は、ひたすら怪我の多い、ひとことでいうなら「ひ弱」という言葉がピッタリくるような選手でした。しかも醸し出す雰囲気もいかにも気が弱そうで情けない。こんなピッチャーがプロで大成するとはとても思えなかったんです。
みんな球児の球速にばかり目を奪われていますが、たしかに球速は速くなった。アタシが見てきた選手の中でも、ストレートだけとれば間違いなくナンバーワンです。しかしそんなことより、人間、ここまで醸し出す雰囲気を変えることができるんだ、ということに一番驚いているのです。
あの情けなくみえた顔が、今ではとてつもなく不敵に見える。ヘラヘラに見えた顔が宍戸錠ばりのニヤニヤに見える。もちろん球速が速くなって、その自信からくるのかもしれませんが、それでも驚かずにはおれないのです。
過去、タマの速い投手などいくらでもいました。しかしいくら自慢のストレートを持ってしても、自信なさげにマウンドに上がってはノックアウト、そして球界から消えていったピッチャーも腐るほどいます。だから「球速が速くなったから顔に自信がでてきた」とか、そんな単純なものとはとても思えない。
しかし彼は変わった。何もかも別人になって帰ってきた。どうしてそんなに変わったのか、それはアタシなんぞには到底わかる問題ではありません。ただしこれが「神様の気まぐれ」とするなら、ちょっとは納得がいくのです。
とにかく今年の球児は輝いてました。それも半端な輝きじゃない。さっきストロボという形容詞を用いましたが、きのうの登板でスタンドから無数のストロボが焚かれ、注意をうながす場内アナウンスまであったのは、なにやらそれを象徴してる気がします。
しかしいくらスタンドでストロボが焚かれても、そんなものはもろともしない輝きを放っていたのは球児であり、ここまで強烈な光を持ったピッチャーは今まで見たことがありませんでした。
こんな輝きが何年も持続できるほどプロは甘くないと思っています。そしてそのことは球児自身が一番わかってるはずです。だからこそ「腕が折れても今年はマウンドに立つ」と決心したのでしょう。
アホな発想ですが、これは完全に漫画の世界です。漫画では「目の前の一試合に、1シーズンに勝ちたいために、投手生命をフイにする」なんて展開はよくあります。もちろん昔には、元・南海ホークスの杉浦忠がそうだったように、同様のケースが皆無というわけではありません。
ただ平成の世で、まさかこんな選手があらわれるなど想像できるはずもなく、しかも新人や実績のある選手ではなく、言い方は悪いですが、去年までくすぶっていた選手です。
そんな選手が突然、もう信じられないような輝きを放った一年。もう「神様の気まぐれ」としか他に説明つけようがないではありませんか。
もし来年も「神様の気まぐれ」が続くのなら、こんなうれしいことはありませんし、できれば「日本プロ野球界に球児あり」といわれるような実績を残してほしいとも思う。
でももしそうならなくても、この輝きが今年限りのものであったとしても、けして文句はいうまい、と心に誓いました。プロ野球人気の低迷が叫ばれる中、彼は「人間がこんなスピードボールを投げれるんだ」ということでスポーツとしての野球のすばらしさをひとりで証明し、暗くなりがちだった野球界に強い光を照らしたのですから。
今年の阪神のリーグ優勝、それは金本の力であり、今岡や赤星、下柳の力であり、なにより全員の力の結合のおかげで成し遂げられたものです。しかし「選手生命」をかけて仕事したのは藤川球児ただひとり。神様の気まぐれとはいえ、何もかもなげうち、渾身のストレートを投げ続けた彼に、いくら称賛してもしたりない気がします。
ありがとう球児!あんたがいたから阪神は優勝できた。いっぱい、本当にいっぱいの人を幸せにしたんだ!!アタシはいつまでもこのことは忘れないし、みなさんの胸にもぜひ刻み込んでほしいと切に願います。
正直この時点では、あそこまで息の長い投手になるとは思ってませんでした。というか絶対に不可能だと思っていたわけで。 藤川球児のことはココに長々と書いたけど、トミージョン手術があったとはいえ結局あれだけ長持ちしたのは「センス」に尽きる気がする。 すごい球を投げる投手は数いれど、最後の最後まで球児は「ゴマカシのセンス」が抜群だった。ゴマカシなんて書いちゃうと感じ悪いけど、ピッチャーってゴマカシ能力がないと成績を安定させられないと思うからね。 |
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