かんさいにおける吉本新喜劇の立ち位置
FirstUPDATE2005.3.14
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昔、高木ブーと何度か飲みにいったことがあることがあるって話を書きましたが、この時アタシは何度も「関西にもドリフファンが多い」ということをブーさんに力説していたんですけど、いくらいってもブーさんは怪訝な顔をしているのです。

「ホントにドリフって関西でもいまだに人気があるんです。若手芸人でもリスペクトしている人も多いんですよ」

と。
するとブーさん

「でもねぇ・・・。やっぱあっちは吉本新喜劇が強いからねぇ・・・。」

吉本新喜劇!いくら全国で無数の舞台を踏んでいたブーさんとはいえ、関西における吉本新喜劇のポジションはなかなか理解し難いものなのかもしれません。
いや、ブーさんですらこうですから、他の地域に住み、関西を遠くから眺めているだけの人には、もっと理解できないでしょう。

設団時は花菱アチャコ、笑福亭松之助、ルーキー新一、平参平などがひっぱり、その後も、花紀京、岡八郎、間寛平、木村進、山田スミ子、池乃めだか、近年では藤井隆や山田花子などの全国区のスターをも輩出しています。しかし東京出身の小林信彦が「郷土愛の象徴」と評したように、その内容は何十年ほとんどかわらず、土着的で閉鎖的な集団でもあります。
この不思議なコメディ集団をひとことで語るのは至難の業です。やってることは同じでも、メンバーは体内のように新陳代謝を繰り返し、土着的でありながら業界人の、とくに舞台を中心にやっているような役者にもファンが多い。たとえば東山紀之や市川染五郎は熱心な吉本新喜劇ファンを公言し、とくに市川染五郎は安尾信乃助というかなりマニアックな人のファンであることを告白しています。

で、です。では舞台人からそこまでリスペクトされる理由は、となると、アタシもわからないのですよ。だって、まぁいえばテレビのようなもんなんですから。あって当たり前、みたいなね。しかもドリフとは違ってずっとおなじような感じで存在している。(やめよっカナキャンペーンの時も結局なくならなかったし)
ただおとなになって感じるのは、主力と呼ばれる人の舞台での動きのきれいさであったり、笑い抜きの部分、つまり単純に芝居のうまさだったり。そういうのは子供じゃわからないし、ずっとみていると意外と気がつかないことなんですけど、幸いアタシは東京に行ったり九州に行ったりしてたんで、うまい具合に再認識することができたんですけどね。

さてさて、肝心の部分です。
いったい関西の人は、吉本新喜劇というものをどういう風にみているのか。
無条件でリスペクトしている(「吉本新喜劇で笑えないような人とは話が合わない」)と思っているのは、ほんの一握りの人だけです。テレビとかじゃおもしろがって、こういう人たちを大きく取り上げますが、絶対数は少ない。アタシの少ない人間関係の中では、こういう無条件肯定派の人にお目にかかったことは一度もありません。
かといって、その逆、つまり無条件否定派もやはり少ない。また市川染五郎のようにマニアックな目で追いかけている人も、やはりマイノリティにすぎません。

ではどういう人が多いかといえば、ずばり「どうでもいい」、「まったく意識したことがない」という人が多いと踏んでいます。
テレビでやっていれば見るけど、わざわざ時間を合わせたり、ビデオに録画してみるまでもない。ギャグやメンバーは知ってるけど、けして深く入り込んだりはしていない。もしなくなっても、なくなるのは悲しいけど、それはほんの一瞬の話、みたいなね。
関西人が入ってくる時、「おじゃましまんにぇやわ!」とか「ごめんください!どなたですか!」とかいうと思ったら大きな間違いです。そんなイタいヤツは関西でも相手にされません。でも「おじゃましまんにぇやわ!」は井上竜夫だとか、「どなたですか!」は桑原和男だということは知っている。

わかりますかね。吉本新喜劇とは世代を問わず共通体験であるのと同時に、吉本新喜劇を好きと公言したり、ギャグを口にすることは少し気恥ずかしかったりするような存在なんです。まるで「昔トシちゃんが好きで」とか「子ニャン子クラブに入ってたんです」と告白するのに近いものがあるんです。
関西以外の人で「相手は関西人なんだから、吉本新喜劇を褒めておけば喜ぶだろ」なんて思っている人がいれば、即刻そんな考えは抹消してください。もしアタシに吉本新喜劇の話でも振ろうものなら、おそらく果てしなく困り果てたように苦笑いを浮かべることでしょう。

だからといって嫌いになったわけじゃなく、今も心のどこかで応援していたりするんですね、これが。実際見てて、笑ったり関心したりすることも多いし。
なんかわかったような、わからないような話ですが。

吉本新喜劇って典型的な「何も期待せずに見ると意外と面白い、期待して見るとちょっと残念な気持ちになる」って感じの存在なのですが、なんでそんな感じになったのかはココに書いてます。




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