えと、このエントリはアタシのYouTubeチャンネルである「Yabuniraチャンネル」との連動になっています。このエントリが完結編となるのですが、ま、何しろこのテキストが完結編となりますので、是非ともまずは動画の方をご覧いただきたいなと。
まァね、正直この2回はかなり手抜きです。いや動画の編集はいつもと同じくらい頑張ったし、中身も相当濃いものになってると自負しています。
なのに何が手抜きなのかというと調査にかんしてで、それでも裏取り=精査はそれなりにやったけど、今回新たにわかったことは何もないと言ってもいい。
つまりですよ、何しろネタがクレージーキャッツなんですよ。アタシはここ、つまり「CRAZY BEATS」なんてクレージーキャッツの非公式ファンサイトまで運営しておるわけですよ。んなもん「クレージーメキシコ大作戦」なんかさんざっぱら調べており、もう改めて調べることなどほぼない。
たとえば動画内で引用した「ハイ!やりました」の広告なんか「植木等ショー!クレージーTV大全」の調査の時のヤツを引っ張りだしてきただけです。

だから本当、オタク的というかマニアックな意味での新しい発見はまったく入ってないのですが、では何もなかったのかというと、中身、つまり映画本編への感想としては「あ、そういう要素があるんだ」と気づいたことがあった。
そもそもの話をします。
クレージーキャッツは1960年代、ま、黄金の60年代(シックスティーン)、なんて言い方もされますが、とくに1960年代前半の象徴的存在です。
アタシもこの頃の邦画は数え切れないくらい観たけど、この時代の空気感を知りたければ東宝クレージー映画を観るのが一番手っ取り早い。これはアタシがクレージーキャッツファンであるとか関係なく、もう単純な比較ですよ。あんな時代の空気が濃厚に閉じ込められた映画は他にないと言い切れる。
たぶん1960年代前半というのは「アメリカへの憧れ」が頂点に達した頃で、それこそ植木等も出演した「君も出世ができる」の「アメリカでは」というナンバーに<想い>が詰め込まれている。

言い方を変えれば「アメリカへの憧れの象徴がクレージーキャッツ」みたいなところもあったと思う。でなければ、もともとコメディアン志望でも何でもなかった人たちが、あそこまでのマネーメイキングスターになれるわけがない。それは仮に植木等や谷啓が天才だったとしてもです。
クレージーキャッツの、あの何とも言えない<アメリカ的>なモダニズムは今見てもすごい。それは<ヨーロッパ的>(パリ的、とも言えるけど)なモダニズムだったエノケンとはひと味違っていた。
ところが黒船ではないけど、だまってないのがヨーロッパ、というかイギリスで、そう、ビートルズというかビートルズ旋風が1960年代後半になって吹き荒れるのです。

ビートルズ旋風が如何ほどにすごかったか、それは当時の雑誌をあたれば嫌でもわかります。
アタシはロックに疎いので、ビートルズがどれほど音楽的にすごかったのかはわからない。しかしその<存在>としてのビートルズは圧倒的で、イギリスはイギリスでもロンドンではなくリバプールという片田舎から出てきた「成り上がりの田舎者」が世界中の音楽シーンのみならず世界中の<芸能>を引っ掛し回したんだから、既存の煮詰まった芸能にウンザリしていた人たちも心密かにエールをおくっていたはずです。
とにかく、本当に久方ぶりに文化の発信地としてヨーロッパが浮上した。太平洋戦争以降はとくに「もうアメリカ以外から文化は生まれないんじゃないか」という空気を一気にブッ潰し、いわば「古豪復活」を印象付けたのです。
この頃アメリカは大資本主義の真っ只中で、今で言うところのインディーズからメジャーにのし上がる図式が成立しづらくなっていた。もちろんモータウンサウンドなどの有色人種発信文化は依然としてインディーズ的でしたが、いろいろな問題で彼らはメジャーシーンに登場しづらい状況だったことは間違いない。
つまりアメリカは、こと文化ということにたいしては若干「糞詰まり」だったと言ってもいい。世界中の若者は自分たちで曲を作って自分たちで演奏して歌うアメリカ的大資本主義とは真逆の存在に熱中し、日本でも大資本の言いなりではない(=台本に縛られない)、自分の言葉で喋るラジオのディスクジョッキーが若者の間で浸透していった。
つまり1960年代は「黄金のシックスティーン」と言われてはいるんだけど、あきらかに「アメリカ的大資本主義への憧れ」が目減りした時期だった。もはやアメリカは憧れる存在ではない。それよりも個人が声を上げて世界中に届ける、それがカッコ良い、そういうふうな風潮が生まれかけていた頃なのです。
当然、1960年代後半から1970年が近づくにつれ「アメリカへの憧れの象徴」だったクレージーキャッツは少しずつ時代とズレ始めていた。そして1968年の「クレージーメキシコ大作戦」でその余波を感じるに至った、というのがアタシの結論です。
ではクレージーキャッツが、というかクレージーキャッツにかかわるスタッフが手をこまねいていたかというとそうではない。少なくとも時代の空気を無視してはいなかった。それは次回作である「日本一の裏切り男」でより鮮明になるのですが、すでに「クレージーメキシコ大作戦」の時点で時代の空気を取り込もうとした形跡が見えるのです。
メキシコ、というのは、まァ、言うまでもなくアメリカ合衆国の南に位置する、という意味でアメリカ文化も流入はしてきているんだけど、歴史的経緯からヨーロッパの匂いがアメリカより濃厚で、とくにスペインの文化の匂いが濃かった。
だからクレージーキャッツがアメリカでロケーションをする、というのとメキシコでロケーションをするというのはまったく意味合いが違う。アメリカは「本場に乗り込んだ」という感じなのにたいしメキシコの場合は「異文化への接触」なのです。
【挿入歌全曲解説】人生二万五千日王は誰だ!「クレージーメキシコ大作戦」挿入歌全曲解説【MovieOn Falla】でメキシコの代表曲として劇中で歌われた「シェリトリンド」とメジャーリーグ中継や「アホの坂田」でお馴染みの「メキシカンハットダンス」を取り上げましたが、たぶんクレージーキャッツはこの2曲をジャズ喫茶時代に演奏したことはないと思う。
当時は客のリクエストで演奏曲を決めることがよくあったと言われ、「アホの坂田」を作曲したキダ・タローもバンドマン時代に「メキシカンハットダンス」をリクエストされて演奏したことがあり、その記憶と関西弁の「アホ」のイントネーションが結びついて「オマージュとして引用する」ことを思いついたらしい。
だから可能性はゼロではない。谷啓はワールドミュージックに興味を持っていたし、桜井センリとか石橋エータローは世界の音楽に詳しいので諳んじてたとは思うけど、あまりにもクレージーキャッツのカラーと違いすぎて取り上げたとは思えない。
「クレージーメキシコ大作戦」はこうした色合いの違いというか、違和感というか「馴染めなさ」が如実に出ている。というかいくらメキシコでオリンピックをやるからって理由だったとしても、んで先ほども書いたように時代の空気的に<反アメリカ的大資本主義文化><ヨーロッパ的文化の復権>だったとしても、それでも「いやぁクレージーキャッツとメキシコはなぁ」と思ってしまうのです。
それもあってか、クレージーキャッツのメンバーにそこまで無理強いはしない設定になっている。一応扮装はそれっぽくはあるし、それまでのシリーズ作を考えたらかなり異色の悪漢的にはなっているんだけど、いつもの、というかずっと積み重ねてきた「アメリカ的モダニズム」のライン上にはいます。
ただしその分、浜美枝がそれまでの「アメリカ的ヒロイン」とはまったく異なる設定になってるのは注目に値します。
カレシのことを「君」付けで呼んだり、如何にもアート系らしい天然なんだけどフシギな意思の強さがあったり、これまで浜美枝が演じてきたヒロインとはまったく違う。そしてちゃんと、ものすごく浜美枝がキュートに見えるように描かれているのがすごい。
動画内では言わなかったけど、この「クレージーメキシコ大作戦」の<芯>は浜美枝のキャラクターであり、途中からあまり浜美枝が登場しなくなることで点数を下げている。
だとしてもクライマックスでの海に飛び込んだ植木等と浜美枝のやり取りは本当に素晴らしく、結局は浜美枝の存在で点数が上下しているんです。
浜美枝のアート的、ヨーロッパ的存在感をもっと全面に押し出して、上手くクレージーキャッツのメンバー、とくに植木等との対比をもっと上手く表現出来ていたら、もっともっと面白い映画になったと思う。
浜美枝はどちらかと言うと「日本一」シリーズのメインヒロインであり、全員出演の「作戦」シリーズはあまり出ていない。だから「作戦」シリーズが主戦場だった坪島孝監督作品にはそこまで出てないんだけど、坪島孝監督作品でも谷啓の相手役をつとめた「喜劇負けてたまるか!」や、珍しく良妻賢母を予感させるラストの「日本一のワルノリ男」の浜美枝は本当にいい。
もうアタシの好み以外何物でもないんだけど、正直言えば浜美枝ってあんまり好きな顔立ちじゃないんです。でもとくにこの「クレージーメキシコ大作戦」の浜美枝は本当にかわいい。日本編のメガネをかけて長めのワイシャツだけを羽織って「酒森くぅん」と呼ぶ時の浜美枝のキュートさったらない。

ただし、忘れてはいけないのは、こうしたヒロイン像はそれまでの東宝クレージー映画ではあり得なかったことで、それは相性の問題があったから。植木等の相手役としてこうしたヒロイン像は「止めておいた方がいい」という感じだったと思う。
それでも時代の空気に抵抗し切れなくなってってことなんだろうけど、無理矢理のわりには上手く行ってる。それもこれもこれまで積み重ねてきた「植木等と浜美枝のカップル」というイメージがあればこそです。
というかこのふたりの「お似合い感」はいったい何なんだろう。マジでフレッド・アステアとジンジャー・ロジャースに匹敵する。植木等本人は映画制作にかなり不満があったようだけど、このカップルを生み出しただけでかなり恵まれていたと思うのですがね。

異文化にチャレンジするクレージーキャッツの面々、異文化とクレージーキャッツをつなぐ存在の浜美枝、、さらにその両者をつなぐ植木等と浜美枝のカップル感含めて、リアルタイムではともかく今の目で見ればそれはそれで魅力的で、動画内でも言ったけどメキシコに入ってから若干ダレること以外はよく出来た映画だと。それが正直な感想です。
だからね、いやアタシの動画はどうでもいいよ。映画本編は是非ご覧になっていただきたいと思うわけでして。
| 本当はScribble用に書き始めたんだけど、長くなるし、ちょうどぽっかりと更新するネタがなかったりしたので、だったら、と徹底的に補足しながら長文に仕立て直しました。 いやこれは動画内でも言ったんだけど、失敗作のイメージが強すぎてクレージーキャッツのファン以外あんまり観てないんじゃないかなぁと。でもそれはもったいないですよ。少なくとももっとも有名な「ニッポン無責任時代」よりは絶対に面白いから。 |
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