そりゃあね、年齢的には「そうなる頃」だとは思うんですよ。んでアタシは名実ともに阪神タイガース贔屓です。でもそんなことは関係ない。何故ならこうやってアタシが「阪神の試合を観戦するという楽しみを享受出来る」のは全部長嶋茂雄のおかげだと思ってるから。
そんなわけで今回は長嶋茂雄追悼という感じで書いて行こうと思うのですが、その前に、本当に軽く今週の阪神を振り返っておきます。
今週は5勝1敗。結果もそうですが内容も完璧に近かった。まさに日本ハムとオリックスを「粉砕した末に勝った」という感じだったから。
にしても今週、得点はほとんどホームランなんですよ。ま、エスコンはともかく甲子園でこんな空中戦で勝ち切れるチームになるとは、という感じで、とくにオリックス戦、中川や紅林の打球が届かず、森下サトテルの当たりが当たり前のようにフェンスオーバーしていく様は「ちょっとレベルが違うな」と思わざるを得なかった。
いつからこんなチームになったんだ!
てなわけで長嶋茂雄なのですが、長嶋茂雄は長年メディアの王様に君臨していたテレビジョン最大のソフトウェアで、ファミコンで言えば「スーパーマリオブラザーズ」にあたる。プロ野球の、というよりはテレビジョン、ひいてはメディアの代名詞にまでなったのは長嶋茂雄ただひとりです。
もし長嶋茂雄の存在がなければ間違いなくプロ野球という<興行>はもっとうらぶれた存在だったはずで、つまり今の選手もこんな年俸をもらえていない。だからすべてのプロ野球選手は、そしてテレビ関係者は長嶋茂雄にたいして最大限の敬意を払うべきだとずっと思っていたんです。
どうしても今の基準で考えてしまいがちなのですが、テレビジョンは長嶋茂雄がいたからメディアの王様になれた。長嶋茂雄がいたからプロ野球は絶対的なコンテンツになれた。そこまで絶対的なコンテンツになれたからこそテレビが衰退してもインターネットでも存在感を示すことが出来る。
たったひとりで、日本の文化をまるっきり変えてしまったと言い切れるのは長嶋茂雄と手塚治虫くらいで、手塚治虫がいなければ漫画がこんな隆盛を誇らなかったと簡単に想像出来るように、長嶋茂雄がいなければ、今でも「野球=高校野球や六大学」というイメージのままだったと思う。
だからね、長嶋茂雄が基点になって生み出されたカネがどれほどか、もう想像も出来ない。天文学的と言いますが、マジで長嶋茂雄が直接的に生み出した娯楽、そして長嶋茂雄に影響された人々、さらにそれらの人々に影響された人々まで考えれば、もういくらカネが動いたかなど計算出来るわけがない。
つまり長嶋茂雄は稀代のマネーメイキングスターだった。長嶋茂雄本人はたぶんカネの計算なんか一切したことなかっただろうけど、ま、それが面白いところなんですよ。
スーパースターであり、トリックスターでもあったのは、それほど長嶋茂雄がプロ野球選手としての実力が突出していたからです。
時代を越えて単純に数字を比較しても意味がない、比較するべきは「傑出度」だと言われています。
実際、長嶋茂雄の傑出度は飛び抜けており、2割台前半ヒト桁ホームランの選手が上位打線にいるのが当たり前だった時代に平気で3割30本塁打を打っていた。ここまで圧倒的に傑出した選手はプロ野球史上唯一無二で、つまり長嶋茂雄にとって「ただ一流に相応しい成績を上げる」ことなどきわめて容易いことだったんです。
ここからが長嶋茂雄のすごいところで、プロ野球というのはどういうものなのか、誰よりもわかっていた。
アタシは常々、プロ野球とは「スポーツ=50、興行=50」というバランスだと言ってますが、スポーツ選手としてもうこれ以上やることがないレベルなら興行として価値のある選手になるしかない。
長嶋茂雄は「藤村富美男に憧れていた」と言ってましたが、元ミスタータイガースのケレン味たっぷりのトリックスターぶりに魅了されていた。だから本人も「どうやったら観客を魅了出来るか」に心血を注いだ。そのことは藤村富美男も認めていたと言います。
興行としての価値が上がればもっとプロ野球が隆盛を誇れる。ひいては自身の、というよりは全選手の年俸も上がる。儲かるとなったらプロ野球選手を目指す子供が増える。
他にもそういうことを意識した選手がいなかったとは言わない。それこそ藤村富美男もそのひとりでしょう。でも完璧に実行出来たのは長嶋茂雄ただひとりだけです。
だから「元プロ野球選手が亡くなった」というレベルで済むわけがない。というかマジで、何で国民葬にしないんだ、と思う。
そんなのプロ野球に興味がない人間には関係ないだろ、という考え自体が間違ってる。だって日本の文化が根本的に変わったんだよ?もしかしたら今普通に生活出来るレベルで稼げてる人も回り回って「商売として成立してなかった」かもしれないんだよ?つか日本という国で生まれた以上「まったく無関係」な人などただのひとりもいないと言い切れます。
長嶋茂雄さん、あなたという存在があったからアタシはプロ野球という「スポーツ兼興行」に興味を持つことが出来、毎日阪神タイガースの戦いに一喜一憂することが出来たんです。
もしプロ野球がなければアタシの人生はメチャクチャつまらないものになった。さらに今でこそ見てないけど、テレビがあれほど隆盛を誇らなければやっぱりもっとつまんない人生だったと思う。
だから本当に、心の底からありがとうと言いたい。あなたは間違いなく「ミスタージャイアンツ」ではなく「ミスタープロ野球」、そして「ミスターテレビジョン」でした!