こないだ本屋で久々にパソコン雑誌をパラパラと立ち読みしたのですが、いや立ち読みってほどでもねーな。ホント、ただめくってみただけというか。
いやね、本当に、ディスるつもりはまったくないんだけど、令和の今、雑誌の編集に携わる人のモチベーションは並大抵ではないのではないか、と。
言っときますけどアタシは雑誌というメディアが大好きです。もし自分が雑誌を立ち上げるなら、類いの妄想をしたのは一度や二度ではない。というか今でも「雑誌の編集長、やる?」と問われたら二つ返事で引き受けてしまいそうなくらい魅力的なメディアだと思っている。
ただそれでも、パソコン雑誌なんだけど、と言われたら、やっぱ一瞬躊躇してしまう。いやいや他の雑誌ならともかく、よりによってパソコン雑誌かよ、と。
それこそね、ぜんぜん興味のない釣りとかバイクとかロックとかよりはパソコンの方が断然興味があると言い切れる。でも、うーん、パソコン雑誌ねぇ。それだけは、マジどうやっていいかわかんないよな、と。
というのもですよ、他の雑誌なら「この手の情報はウチの雑誌に任せてね」みたいなスタンスでイケるんですよ。でもパソコン雑誌の場合「雑誌で情報を得る?今キミの目の前にあるものは何だい?」という話になってしまう。
つまるところ、パソコン雑誌ってのは「雑誌で情報を得るような、そんな旧世代の人間ではなく、もっと広い世界(=インターネット)から情報を得た方がいいよ」というスタンスにならざるを得ない。そうなったら「でもウチの雑誌だけは買って読んでね」とはなかなかなりづらいっつーか、そういう方向ってダブスタに近いような気がするわけで。
いやね、そもそもパソコン雑誌の編集部のに人たちはライバル誌の動向を監視する以外の目的で、情報収集のため、もしくは純粋な娯楽のために他社のパソコン雑誌を読んでるとはとてもじゃないけど思えないのですよ。
つまり自分たちは一切雑誌になんか頼っていない。雑誌なんかなくても生きていける世界で生活しているのに、あくまで仕事として雑誌の編集に携わるって、これ、かなりメンタル的に辛いことのような気がするんです。
アタシは地方タウン誌の編集に携わったことがあるけど、かなり昔の話です。時代で言えばまだ1990年代。大半の人が「インターネット?知ってるよ。使ったことはないけど」というような時代です。
そんな時代だったから、当然のようにアタシは「情報を得るために」もしくは「純粋娯楽として」他社から発行されていた雑誌を買っていた。んで他の雑誌を読むことは仕事のモチベーションにもなった。それははっきり憶えています。
そうしたモチベーションって雑誌作りにおいてメチャクチャ重要だと思うんですよ。
アタシの短期間の経験で言っても、雑誌作りは本当に大変だった。人生の中で「三日間連続完徹」をやったのはこの時だけです。
そんな過酷な職場で唯一モチベーションになったのは「自分が雑誌作りに携わっている」という喜びです。もう、本当に、それだけで仕事をしていたと言い切ってもいい。
たぶんこれほどモチベーションだけがすべて、と言い切れる仕事はあんまりないと思う。
だからこそ、なんです。
今の若い人が「雑誌作りに関われるなんて至福の喜び」と思えるような人がどれだけいるか。むしろ「今どき雑誌で情報収集?あの、今、令和なんですけど」って感じなんじゃないか。
それでも直接インターネットとは結びつかないような趣味の雑誌やファッション雑誌であれば、それなりのモチベーションは保てるのかもしれない。でもこれがパソコン雑誌となると、言ってることとやってることが真逆に近く、メンタルがおかしくなってしまうんじゃないかと穿ってしまうのです。
たしかにね、インターネットメディアで記者or 編集やってます、てのと、ちゃんと製版される雑誌で、とだったら<箔>のようなものは違うのかもしれない。
それにしたって、何かそういう<箔>にこだわるってのがあきらかにイマドキではないような気もするわけで、もっとそもそもの話をすればアタシなんかグラフィックデザインをやってると言っても「紙に印刷される前提」のものが主で、WEBにかんしてはサブでしかない。つかいまだにWEB制作にかんしては本質的なところで自身がない。
そうであれば、パソコン雑誌の編集者も、アタシのように「インターネットメディアにたいしてイマイチ自信が持てない」からなのか?いやいや、そういうことでもないような。
マジで一回、トックリとパソコン雑誌の編集者の人に、それも出来るだけ若い人に話を聞きたいわ。いったいモチベーションの源はなんですか?と。
そんなこと聞かれても困るだろうし、もしかしたら今の雑誌の編集部は三日間連続完徹なんてあり得ない、フツーのホワイトな環境かもしれないし。
それでもですよ、アタシは叶わぬ夢と自覚していながらも、一回でいいから徹頭徹尾、自分のカラーを押し出したような雑誌を作りたい。それが仮にパソコン雑誌だとしても、うん、はい。どうかなぁ・・・。