ホワットイフ映画「歌う無責任」
FirstUPDATE2025.4.8
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 ま、これはたぶん、クレージーキャッツのファン全員が思ってることだと思うのですが、何でクレージーキャッツ映画はあんなに出来不出来の差が激しいのか、とね。

 もちろん中には狂信的なファンがいないとは言わない。とにかく批判許すまじ、みたいなね。
 でもそれはあまりにも公平ではない。つかそういう人は「映画」とか「エンターテイメント」が好きじゃないと思うんですよね。
 ある程度、本当にある程度で構わないので、せめて当時公開されていた映画とクレージーキャッツ主演作品を見比べれば嫌でも「ああ・・・、何でこんな感じになっちゃったんだ」と思って然るべきだと。残念ながらそれほどクレージーキャッツの主演作はは突出した出来じゃないよ、と。
 もちろん中には、傑作まで行くかどうかはともかく、ま、これもある程度はですが「他人さんに勧められる」作品もあるのですが、結構好みが分かれるのも事実です。
 とくに古澤憲吾が監督をつとめた「日本一」シリーズ、中でも「日本一のホラ吹き男」と「日本一のゴマすり男」はわりと評価が分かれる。
 ま、アタシは、で言えば、どちらもベスト5に入るほどじゃないけど、きわだって出来が悪いわけでもない。良くも悪くも中庸、という感じです。

 というのを前提にしてですね。
 植木等単独主演の「無責任」モノ初期2本と「日本一」シリーズは、言ってもまだ上位に挙げる人は多いんだけど、では「作戦」シリーズと呼ばれる、クレージーキャッツ全員主演作品はどうか、というと、ランキングの上位に入れる人はあんまりいないと思うんですよ。
 河崎実なんかは「大冒険」をイチオシしてるけど、さすがにあれだけバラバラな映画を上位には挙げづらいし、「クレージー黄金作戦」はあのラスベガスのダンスシーンだけ、個人的にベスト3に入ると思ってる「クレージー大作戦」や、東宝量産体制末期ならではの、ノーテンキいい加減ノリが充満した「クレージーの大爆発」など、正直アタシ以外にランキングに入れてる人を見たことがない。
 つまり「出来不出来が激しい」と言われる東宝クレージー映画でもとくに出来不出来が激しい、いやもっと辛辣に言えば「良い出来の作品がほとんどなく、大半が悪い出来」なのが「作戦」シリーズってことになるのですが、何でこんなことになったかです。

 まずは「監督が固定ではない」ことが挙げられます。
 初期の「ニッポン無責任時代」と「ニッポン無責任野郎」の2本、そして末期を除いた「日本一」シリーズは監督が古澤憲吾に、脚本は田波靖男か笠原良三に固定されていた。だからまァ、安定してるっちゃ安定した出来です。
 しかし「作戦」シリーズ(シリーズ外ながらも全員出演作を含める)は本当にバラバラで、途中からメイン監督扱いになった坪島孝、そして古澤憲吾以外にも、久松静児、杉江敏夫、山本嘉次郎などが監督をつとめており、脚本家もバラバラです。
 それでもルーティーンというかフォーマットがあればまだ良かったのですが、そして初期の「作戦」シリーズは何とかフォーマットを作ろうと苦心した跡があるのも事実ですが、結局最後までフォーマット<らしきもの>すら作れなかった。となると一作毎にゼロから設定を考えなければならず、これが出来不出来の差を大きくしている最大の原因です。

「ニッポン無責任時代」から派生した植木等単独主演の「日本一」シリーズは、音楽喜劇の要素は残しながらも基本はサラリーマン喜劇です。となるとクレージー全員主演映画は、サラリーマン喜劇の要素(風刺なども含まれる)を抜いて、完全な音楽喜劇=シネミュージカルにするしかなかったように思う。
これなら「物語の土台」は何もいらない。というかストーリーも至極単純なもので構わない。ただひたすらクレージーたちが歌い踊っていればいいのだから。(2016年10月29日更新「「クレージー大作戦」徹底解剖」


 これはあくまで私案でしかない。しかし、もともとソロバン勘定ありきで物語のベースなど何もなかったのが「作戦」シリーズなのだから、だったら「そもそも骨格となるような物語などいらない」というのをベースにすべきだった、これはそう的外れな意見ではないと思います。
 んでです。ならば、では実際にどうやったらいいか、というね、もう完全なる妄想ですが、こうやったら全員主演映画も<カタチ>になったんじゃないか、というようなことをしっかり考えてみようと。
 上記引用では「音楽喜劇」「シネミュージカル」と書いていますが、これではダメです。何故なら音楽喜劇やシネミュージカルでは弱々だったとしても、それこそ「日本一」シリーズくらいの物語が必要になるからで、同じ失敗を繰り返す可能性が高い。
 となったらです。さらに物語性の弱い映画、となると、もうレビュウ映画しかない。レビュウ映画の場合、ミュージカルよりも「さらに物語がないがしろ」なわけで、本当にとってつけたようなハナシで十分です。

 レビュウ映画の出来不出来を分けるのは挿入歌の出来とダンスシーンにかかってる。とは言っても別に驚くほど上手いダンスである必要はなく、それこそ「クレージー黄金作戦」のラスベガスでのダンスシーンくらいで構わない。
 しかしインパクトというか、ラスベガスのダンスシーンくらい印象を強くしなければならない。
ロケ地だったり、人海戦術で大量の人に踊らせたり、あと例えば東宝の特撮チームと組んで「特撮とダンスの合体」のような観客が驚く仕組みは絶対必要です。
 ただこれは、衆知を集めてアイデアを出していく、というやり方をしていた渡辺晋が得意なことだったので、物語ありきの映画よりも渡辺晋の考えが反映されやすかったんじゃないかと思う。
どころか、いわば「シャボン玉ホリデー」のデラックス版のような感覚で作れるわけで、少なくとも実際の「作戦」シリーズより面白くなったかどうかはさておき、出来は安定したはずです。

 そうは言っても、軽くでも、本当に「どうでもいいもの」であっても物語は必要です。
 アタシは比較的直近(2025年初頭)にYouTube動画を作るためにまとめて「狸御殿」シリーズを見たのですが、まとめて見るとシリーズの本質がよくわかる。
 「狸御殿」シリーズは音楽喜劇でもシネミュージカルでもシネオペレッタでもない。紛れもないレビュウ映画です。何故自信を持って言えるかと言うと、シリーズ通して、ビックリするくらい<筋>がないのです。
 いや一応は、あることはある。しかしこれが本当にいい加減なもので「シンデレラ」だったり「王子と乞食」だったりをまるまる使っただけ、みたいなハナシしかない。
 中でも一番物語性の弱い、インチキな冒険譚みたいなハナシになってる「花くらべ狸御殿」が抜群の出来であり、つまりレビュウ映画においては「ハナシの面白さ」と「映画としての面白さ」は何の関係もないと言い切れます。


 クレージーキャッツ版レビュウ映画もこれでいい。何なら「狸御殿」シリーズに倣って、テキトーな童話から引っ張ってきてもいい。
 そうなったら、たぶん一番やりやすいのは間違いなく「浦島太郎」でしょう。
 「浦島太郎」の音楽喜劇化はエノケンこと榎本健一がやってる。
 1941年3月、つまり太平洋戦争突入の直前ですが、エノケン主演、日劇ダンシングチーム総出演、作・演出が宝塚歌劇団で辣腕を揮っていた白井鐵造で作られたのが「エノケン龍宮へ行く」で、まさに戦前東宝の粋を集めて作った大音楽レビュウ劇でした。ってもちろん実際に見たわけでないけど。ちなみに「狸御殿」シリーズで常にイジワル役で出ていた草笛美子がヒロインをつとめています。

 たぶん東宝にシナリオくらいは残ってるだろうし、当然「まんま」やる必要はまったくないけど「浦島太郎」のレビュウ劇化の参考くらいにはなるはずです。

 何となくですが配役も見えてくる。
 浦島太郎は当然のことながら植木等、浦島太郎に助けられる擬人化した亀が谷啓、竜宮城の王様がハナ肇、乙姫が浜美枝、と言いたいところだけど、どうも浜美枝さんは歌が苦手だったようなので、植木等とのバランスが取れて、しかも歌える人を。あ、ヒロインではないけど当然草笛美子、じゃなくて草笛<光子>さんにも出てもらいたい。
 ストーリーもね、地上に帰って玉手箱を開けるシーンとかはいらない。つか浦島太郎と乙姫が結ばれてエンドでぜんぜん構わない。あくまで浦島太郎の骨格だけを利用するだけだから。
 竜宮城、なんて言うとどうしてもせせこましいイメージになるし、本家の「狸御殿」でもセット自体はかなり窮屈な感じで正直「あんまり」なのですが、古澤憲吾が監督なら無意味なくらい広々とした奥行きのあるセットを作るだろうから安心です。

 楽曲のバラエティさはね、クレージーキャッツのブレーンとして萩原哲晶と宮川泰の超優秀な二枚看板がいるのが大きい。振り付けも小井戸秀宅と土居甫がいる。これに東宝の特撮チームが加われば「狸御殿」シリーズを凌駕するようなシリーズになることウケアイです。
 重要なのは、あくまで「ハナシなんかなければない方がいい」「上映時間の半分はソング&ダンスシーン」である、ということです。
 だからメインとなる脚本家はいらない。青島幸男を中心に「シャボン玉ホリデー」の作家陣が、それこそ合議制で作っていけば良い。

 東宝クレージー映画のメイン脚本家だった田波靖男に参加してもらうのもいいけど、あくまでいち作家としての参加という形で。
 たぶんね、そこまでしないと、結局は「面白いオハナシ」に寄っていってしまって、そうなると毎回設定を新たに考えなければならず「出来不出来の差」という問題に直面するはずだから。

 もうね、好き嫌いにかんしてはどうしようもないと思うのですよ。
 最初の方で書いた通り「日本一のホラ吹き男」を好む人は多いし、一部の好事家だけとは言え「大冒険」が好きな人もいる。
 いやもっと言えば「東宝クレージー映画自体が肌に合わない」人もいっぱいいるはずです。
 ただ、東宝クレージー映画が合う人も、とくに「作戦」シリーズにかんしてこれだけ評価にばらつきがあるのは、やっぱり「フォーマットが何もない」のが大きい。ま、レビュウ映画自体も好き嫌いはあるので誰にとってもオススメになるとは思わないけど、少なくとも出来不出来だけは安定するはずです。

 いやさぁ、もしクレージーキャッツ版レビュウ映画が出来れば、ほとんど映画というメディアで活かせなかったザ・ピーナッツをもっと活躍させられたんじゃないかなってことなんですが。

ま、エントリタイトルはわかりやすく「歌う無責任」にしたのですが、もし「浦島太郎」を題材にするなら「無責任男龍宮へ行く」か。1960年代としてもちょっとアナクロだけど。
あと「80日間世界一周」とかもイケそうだし、清水次郎長モノも「無責任清水港」よりもずっと単純な筋にしたらレビュウ映画になりそうなんだけどな。




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