ぶっちゃけ初手が何だったかさっぱり記憶にないのですが、廃れるでもなく、大ブームになるわけでもなく、定期的にお古いマイコンやゲーム機の「ミニサイズでの復刻製品」が登場しています。
ただね、これらの製品群を欲しいと思ったことがあるかないかで言えば、もう一切ない。見事にない。つか「こんなの誰が買うんだ」といつも思う。
これね、リアルタイムで欲しかったかどうかもあんまり関係なくて、例えばコモドール64の復刻とかね、当時からメチャクチャではなかったけど、それなりに欲しかったし、今の目で見ても非常に面白いスペックだと思う。微妙に時期はズレるけど国産マイコンによくあった「Z80A(コンパチ)、640x200ドット、8色カラー表示」みたいな横並びの性能じゃないし、とくにCPUが6502系というのが面白い。

でもね、どんな復刻ミニレトロPCにしたところで全部エミュレーションしてるだけなんですよね。
つまり実際の中身はARM系であって本当にZ80Aや6502や6809や68000が搭載されているわけではない。たぶん裏ではLinuxかなんかが動いてて、その上でX68000だったりPC-8001だったりがエミュレータで動いてるだけというか。
それだったら別に手持ちのパソコンでも出来ることであり、何ならRaspberryPi上でレトロPCのエミュレータを動かしてもいい。筐体は?ってのも、ならばこの際3Dプリンタ買うわ。
何と言うか、ファミコンミニとかね、そうしたコンシューマゲーム機の復刻とレトロPCの復刻とはぜんぜん話が違うんですよ。
というのもファミコンミニなりはあくまで「ソフトウェアで遊ぶ」ことが主目的というか、ファミコン自体いわば完全なソフトウェアプレーヤーであり、となれば主眼はハードウェアの性能ではなくソフトウェアに置かれる。
でもレトロPCの場合、つかこれは当然時代への考慮も必要で、この頃のPCっつーかマイコンは間違いなく「ソフトウェアプレーヤーではなかった」のです。つかむしろ「ソフトウェアメーカー」に近い。
こう書くと何だか企業みたいだけど、当時のマイコンは「ソフトウェアで遊ぶ」というよりは「ソフトウェアを作る、開発する」ことの方が主目的だったわけで。
さあ、ここからがポイントです。
たしかにこの頃、つまり1980年代半ばくらいまでの話ですが、パソコン(マイコン)はソフトウェアプレーヤーではなかったし、何しろロクなゲームがなかったので「ソフトウェアとしてのゲームを遊ぶ」ことにたいしてのユーザーエクスペリエンスは著しく低い。
じゃあマイコンは楽しくなかったのか、というとそうじゃない。
この頃の、マイコンユーザーにとってのゲームの<お手本>はアーケードゲームでした。まだ著作権意識が希薄だった時代であり、みな、アーケードゲームをなるべく忠実にマイコンに移植しようとするんだけど、何しろ当時のマイコンのスペックではそんな易々と再現させてくれない。少々のプログラミングテクニックでは到底刃が立たない。ま、たいていはグラフィックもサウンドも動きも似ても似つかないものにしかならなかった。
しかしそれでも、当時のマイコン少年たちはその厚くて高い壁にチャレンジし続けた。
とくにマイコン少年を熱くさせたのが「ゼビウス」の移植で、あまたのマイコン少年たちは「ゼビウス」の移植というとんでもなく高い壁にチャレンジし、そして砕け散った。
だからね、アタシにとって「ゼビウスの難易度」なんて聞くと「ゲームとしての難易度」ではなく「当時の低スペックなマイコンへの移植の難易度」というふうに感じてしまう。
そうなんです。当時のマイコン少年は「ゲームそのものを楽しむ。ゲームテクを磨く」のではなく「ゲームの移植を楽しむ。プログラミングテクを磨く」という<楽しみ方>だったんです。

これは昨今のeスポーツ、いやゲーム実況に近いのかもしれないけど、仮に自分は出来なくてもゲーム上でのすごいテクを見ると感心してしまう、なんてことは普通にあると思います。
これはマイコン時代も同様で、自分にはとてもそこまでのプログラミングテクはないけど、超絶テクニックを駆使してアーケードから移植されたゲームが発表されたら、もうそれだけでドキドキした。ワクワクした。
そういうね、ドキドキワクワクがあればこそ、あれだけ各社からマイコンが発売されて百花繚乱になったと思うんです。
しかして、ミニレトロPCはというと、もうね、何だか真逆なことをしてるとしか思えないんですよ。
これはファミコンの話になるけど、天才プログラマーとして名高いナーシャ・ジベリがファミコン本体のバグを利用して、ちょっとファミコンの性能ではあり得ないほどの高速処理を実現させた、なんて話は有名ですが、当時のマイコン少年たちも、ハードウェアを限界まで叩いてアーケードゲームの再現にチャレンジしたわけです。

ところがミニレトロPCはというと、何しろエミュレータです。つまりエミュレータを介さなければもっともっと高い性能が引き出せる。つまりですよ、ハードウェアが本来持つ性能を徹底的に落としたモノ、とまで言えるわけで。
これは前にも書いたんだけど、当時のマイコン少年たちは「これくらいのスペックだから良いんだ!」と思っていたわけじゃないし、それこそ「ファミコン世代はドット絵が好き」という話に似ている。別にドット絵が好きだからファミコンが好きだったわけではなく、当時比でファミコンの性能が良かったから好きだっただけです。だからこそプレステの時代になるとみんなポリゴンに行ったわけでして。
だからもしね、タイムスリップして、当時のマイコン少年たちにミニレトロPCを渡したら「これ、実はすごい性能が出せるのに無理にスペックを落として何がしたいの?」と思われるに決まってる。
何が言いたいのかというと、こんなの意味がないよって話です。
というかソフトウェアエミュレータではさすがに話にならない。せめてZ80Aそのものとかじゃなくてもいいから、ハードウェアの段階からエミュレーションしてくれないと。
でもそんなの開発費がかさみすぎて絶対無理だよね。つかそこまでやったら売り値がいったいいくらになるんだって話で。
「ハードウェアの限界に挑戦する」って意味ではそれこそラズパイの方がまだ当時のマイコン界隈に近いし、それでも個人がハードウェアを解析するにはラズパイでさえちょっと規模がデカすぎる。
これも繰り返し書いてることだけど、8ビットマイコンって本当にちょうど良かったんですよ。もちろん回路図とかある程度メーカー側が開示する必要はあるけど(実際ほとんどのメーカーはハードウェアの詳細を開示していた)、個人がさらに解析して「ハードウェアの限界に挑戦」なんてことが出来るギリギリの規模だった。
こうした「ハードウェアの限界に挑戦」って<遊び>は非常に奥が深くて面白かったのに、現今は完全に廃れてしまった。もちろんハッカーレベルの人はいるとは言え、到底気軽に一般人が入っていける世界ではなくなったし、そもそもレベル的に<遊び>の範疇を著しく逸脱している。
かと言ってなぁ、新しいジャンルの未成熟なハードウェアもなぁ。HMD然り、どうもドキドキもワクワクもしないんだよなぁ。
それはテメエがトシをとって感性が衰えたからだろうって?いやそれの方がむしろぜんぜん良いよ。アタシがダメになったって方がまだ救いがある。
そうじゃなくてドキドキワクワクする製品群が出て来なくなったって方が嫌だし、怖いわ。