2011年7月、ということは東日本大震災のほぼ4ヶ月後、ニコニコ生放送にて「植木等のボーカロイド「植木ロイド」を開発中、2012年に発売予定である」と発表された、とニコニコ大百科にある。ま、ぜんぜん憶えてないけど。
これ、厳密にはご子息である比呂公一の声をサンプリングして制作されたようだけど、とにもかくにも「初音ミクのボーカロイドのような感じで植木等の声を自由自在に扱えるようになるかも!」というのは植木等フリークには十分すぎるほどビッグニュースであり、大いに期待した。
しかし期待は一瞬で崩れた。何故なら公開されたサンプル音声が「植木等とは似ても似つかないもの」だったからです。
何しろサンプル音声はまだベータ版ですから、そこまでね、完璧でなくても良いんですよ。しかし公開されたものは「あとほんのちょっと調整すればイケる」なんてレベルにも程遠かった。もうぶっちゃけ、これ、無理じゃねーの?と。
実際に聴いてもらえればわかりますが、まったく植木等ではない。というか比呂公一ですらない。あ、比呂公一の声は↓。もちろん若い時の声だけど。
マジで「誰だこれ」という感じで、当然、当時はボーカロイド黎明期で、しかも実在の有名人からサンプルを取るというのはGACKTなど数例しかなかった。
そんな段階で、よりにもよって、何で植木等なんだ、と。つか植木等というチョイスをした理由が知りたいわと。
この時点ですでに植木等が逝去して5年ちかく経っている。「スーダラ伝説」すら20年ちかく前の話です。ご本人の声をサンプリング出来ない(というかこのソフトウェア用に新たにサンプリング音声を収録出来ない)ことはもちろん、正直「知名度」という観点から積極的に選ばれる理由は何もない。
さらに言えば、植木等ってどう考えてもボーカロイドというか機械化が難しそうな<声>であり、また機械化が難しそうな<歌い方>で、むしろ「絶対避けなきゃいけない人選」だった気すらします。
植木等の歌い方は非常に特徴的で、一見モノマネしやすそうなのですが、実は非常に難しいのです。
モノマネ番組で清水アキラが植木等のモノマネをやってるのを見たことがありますが、残念なことにまるで似てなかった。
あと、これは別にモノマネではないけど「植木等とのぼせもん」で植木等役を演じた山本耕史も「シャボン玉が消える日」で植木等役を演じた田口トモロヲも、声から仕草まで、何から何まで違いすぎた。
それはぜんぜんいいんですよ。ドラマの場合はむしろモノマネになっちゃいけないわけで、でも「ここまで違う人を植木等と認識するのは難しいなぁ」と思ったのも事実です。
それはね、アタシが植木等を敬愛しているというか特別な感情があるからってのはわかってるし、どちらもドラマとしては普通に楽しめた。あと当たり前だけど「こんなの植木等じゃない!」と怒ったりもしない。
むしろ、これだけ寄せようとして寄らないって、植木等の個性っていったいなんなんだ、と思ったくらいです。
ああ、もう、植木等のモノマネなんか、誰であっても無理なんだな
そんなふうに思って数年、えと、パンデミックの頃だったから2020年か、に「え!?いやいや、そりゃあ自分くらいのマニアだったら「違う」ってのはわかるけど、これ、そんなに詳しくない人なら「植木等が歌ってる!」と思っても何も不思議じゃないぞ!」と思える音源に出くわした。
しかもその歌った当人は諳んじていた人であり、モノマネ芸人でもない。・・・って引っ張るほどでもないので書きますが、その声の主、それは山本正之です。
山本正之!「燃えよドラゴンズ!」で、いやアタシの世代であれば「タイムボカン」シリーズでお馴染みすぎるくらい馴染んでる、あの山本正之!?。
たしかに山本正之の手掛けた楽曲はコミックソング要素が強い。しかも山本正之の生年的に「コミックソング=クレージーソング」という擦り込みがないわけがなく、冷静に考えれば「もしかしたら植木等ならびクレージーキャッツが好きだったのかな」と推測出来るのですが、そんなことは考えもしなかった。
というか、たぶん公に山本正之が植木等の大ファンと発言したことはないと思う。コンサートなどでは発言してる可能性はあるけど、さすがにそこまではわからない。
しかし一部の楽曲を聴く限り、もうクレージーキャッツ愛、植木等愛が溢れ出ていて「これで好きでないとは言わせない」というレベルなんです。
何つーか、ただたんに「クレージーソングをテキトーに真似して作りました」という感じでは到底ない。青島幸男の作詞のクセ、萩原哲晶の作曲・編曲のクセをよく研究した上で換骨奪胎してるのは、アタシがマニアだからこそよーくわかります。
そして何より、植木等の<声>と<歌い方>をほぼほぼコピーしており、こう言っちゃナンですが清水アキラとは比べものにならない。
てなことを四の五の言っててもしょうがないので、2024年時点でネットにある動画をご覧、いやお聴きいただきたい。ちなみにYouTubeにはなかったのですべてニコニコ動画からです。
まずは、もう如何にもなタイトルの「C調無責任行進曲」から。
続いて「宇宙一のスチャラカ男」。
もう一曲「笑わにゃソン」。
あと一曲「百万節」という楽曲もあるのですが、残念ながらネットにないので割愛します。つかたぶん「ひとりクレージー」の楽曲はこの4曲だけだと思う。
にしても、どうでしたか実際。あくまでパロディとして作ってるのは明白だし、全体的に予算の都合かアレンジはチープなんだけど、もしパロディではなく「正統なクレージーソング」として作っていれば、もしちゃんとジャズのフルバンドを使って制作すれば、アタシでも一瞬勘違い出来るようなモノになった気がするんです。
つかさ、植木ロイドをもう一回作り直すなら山本正之に監修させるべきですよ。地声はぜんぜん違うのにあそこまで寄せられるというのは何かしらの「植木等の声に聴こえる<コツ>」があるはずで、そこを把握しておかないとどれだけ膨大なデータからサンプリングしても結局は「似てない」ってことになると思うから。
しっかし、山本正之は別にモノマネの人でもなんでもないのに、仮に植木等を愛してやまなかったとしても、ここまで似せられるって本当に器用な人なんだなぁって思う。 話は逸れるけど、山本正之にしろ河合じゅんじ(「かっとばせ!キヨハラくん」の作者)にしろ、中日ファンには愛すべき「モノマネや似顔絵が上手い人」が多いんだよな。そういや清水アキラも中日ファンか。何かそういうファン気質、じゃねぇな、ファン能力ってあるのかね。なんだよファン能力って。 |
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