ロンドンライフに花束を番外編・ワン・ダイレクション旋風
FirstUPDATE2024.11.30
#Scribble #Scribble2024 #イギリス #アイドル #音楽 #2010年代 #レトロ #エンターテイメント #芸能人 ロンドン ワン・ダイレクション ビートルズ 法被 きゃりーぱみゅぱみゅ 画像アリ 単ページ

「日本で最初のアイドルは?」という質問に仏像の名前を上げる人はいないと思いますが、実際問題、アイドル=偶像なのでむしろ仏像の方が正しいっちゃ正しいんですよね。

しかしいくら正しかろうが、我が国においてアイドルの話をしているところで熱い仏像の話をねじ込むなんてしたら完全に鼻つまみ者です。
そう、正しい正しくないなんて関係ない。アイドルと言えば見栄えに特化した若年層の芸能人、女性であれば南沙織や天地真理、男性であれば郷ひろみやフォーリーブスあたりから始まった「一連の人たち」を指す。
ついでに言っておけば「坂本九は最初<アイドルボーイ>として売り出されていた」なんて話も関係ありません。

こうした形で、つまり芸能人の<ジャンル>として<アイドル>があるなんて日本くらいで、ま、台湾は近しいタイプの人がいたみたいだし(テレサ・テンは台湾ではアイドル的扱いだったし)、近年では韓国もアイドル的な芸能人がいるようだけど、あんまり知らないアタシからしても、やっぱちょっと、日本のアイドルとは違う感じがします。
つまりですよ、<アイドル>というのは「日本独自の文化」と言い切って差し支えない。他国でも皆無ではない、というだけで、ここまで文化として成熟しているのは日本だけです。

どれだけ歌が下手でも演技がダイコンでも構わない。見栄えと<華>全振りで人々の心を鷲掴みにしていく。
アタシはそういう<ジャンル>があってもいいと思うし、実際鷲掴みされた人からは熱烈な支持を受けているわけですから何の問題もない。
一方、日本の芸能人文化の恥さらしとまで言う人もいる。あんな歌とダンスで世界?笑わせるな。こんなレベルが日本の芸能レベルだと思われたら恥ずかしいわ、と。
ま、それもわからんではないけどさ。アタシはそうは思わないってだけで。

とにかくこんな国なのです。とくにマスコミは十把一絡げが大好きなので、若年層に人気の芸能人というだけで「アイドル扱い」する。
アタシはね、そもそもの話、アーティスト>>>アイドルじゃないと思うんですよ。もちろんエンターテイナー>>>アイドルでもない。

しかし当のアイドルの中には「アイドル扱い」に極端な嫌悪感を示す人もいる。自分はアイドルじゃない、アーティストなんだ、もしくはエンターテイナーなんだ、と声高に叫んでしまう。
でもね、そもそもアーティストもエンターテイナーもそんな高尚なモンじゃないよ。ま、海外にはアイドルというジャンルはないから、とかならまだわからんでもないけど、でもそれなら「自分は世界初のワールドワイドアイドルになる!」って宣言した方がカッコいいのにね。

では、です。過去にワールドワイドな<アイドル>がいたかいなかったかで言えば、いたことはいた。
少なくとも日本においてはビートルズは<アイドル>として扱われた。「Help!」という映画の邦題は「ヘルプ!4人はアイドル」として封切られているのだから、当時のビートルズの扱いが良くわかります。
この頃までのビートルズは「(自称)まともな音楽愛好家」から評価対象にすらなっておらず、あんな雑音を聴くなんて耳がイカれてるとまで言われていたんです。つまり彼らの持つ音楽性はあまり評価されてなかった。

イギリス在住の知人に聞くと、本国でも「あれは田舎のアンちゃんが調子に乗ってるってのがあったからシャレになったんだ」とイギリス人に言われたことがあるらしい。もちろんこの意見が正しいと言い切るつもりはないけど、それでも「リバプールという地方都市で生まれ育った」というのは彼らのアイデンティティだったとも思う。
田舎者だからこそハチャメチャにやった結果のサクセスストーリーが成立するわけで、まことにビートルズはこの図式に当てはまります。

・・・などと前フリが異常に長くなってしまいましたが、ワン・ダイレクションの話です。
ビートルズとワン・ダイレクションに共通点はほとんどない。強いて言えば「男性オンリーのグループで音楽をやってる」くらいしかないんだけど、なかなか日本人はワン・ダイレクションという存在を掴みづらかったようで、初来日した折、よりにもよってこんな格好をさせた。


もちろんこれはビートルズの初来日の↓を被せたわけです。


にしてもさ、さすがにこれはないよ、と思った。
何のことか、ワン・ダイレクションの初来日時、アタシはイギリスにいた。つかロンドンライフの真っ最中でした。
とくに文房具屋なんかにいくと、彼らの顔がプリントされたブツが山のようにあった。当たり前だけど、何しろ<文房具>ですからね。もうこれだけで、ワン・ダイレクションがどういう年齢層に人気だったかをはかることが出来ます。

要するに彼らは小中学生の<アイドル>だったのです。日本に来て初めてアイドル扱いされたわけじゃなくて、そもそも本国(=イギリス)ですでにアイドル扱いだったという。
たぶんイギリスとしては初めて成功したアイドルだったんじゃないか。しかもかなり「日本のアイドル」に寄せた、というか、日本の男性アイドルグループを、もっと言えば旧ジャニーズをよく研究して作られたように思えてしまう。(実際は自発的なグループ結成だったらしい)

楽器を手にしていない、全員が美形など、ぱっと見の<スガタカタチ>は旧ジャニーズのグループと寸分違わない。
そして、やや不幸な形でグループ活動を終了したことも含めて、あまりにも日本のアイドルっぽくありすぎる。
あくまで個人的な話ですが、彼らを思い起こすとありありと2012年当時の、ロンドンで生活していた自分を思い出して何とも言えない気持ちになる。

ああもう、ワン・ダイレクションが席巻していた
あの「ロンドン」はこの世には存在しないんだ

みたいなね。
ロンドンは基本的にあまり変わらない街です。先日もアタシの見てるユーチューバーの方がロンドンに行ってて、歩き撮りで<今>のロンドンの光景をこれでもか、と見せてくれたけど、そりゃあ新しく出来た店とかはあるけど<感じ>は何ひとつ変わっていない。
そんなロンドンでも流行はある。少なくともワン・ダイレクションはいなくなった。それはやはり、少し淋しいんですよね。

ふと思い出したけど、ワン・ダイレクション旋風が吹き荒れていた2012年末、「イギリスで発行された」雑誌の表紙がきゃりーぱみゅぱみゅだったのよ。
そうか、ワン・ダイレクションときゃりーぱみゅぱみゅは芸能人としては同世代なのか。ま、だから何だって話だけど。