Yabuniraチャンネル用に毎回予告編アニメーションを作っているのですが、よくよく考えたら「毎週一本、1分程度のアニメーションを作るって狂気の沙汰だな」と。
アニメーションの制作には時間がかかる。そんなことは手塚治虫が「鉄腕アトム」を始めるずっと前から言われてたというかわかっていたことであり、少しでも時間を短縮させようと思えば、もう人海戦術しか方法がなかったのです。
それかスタッフの中に猛烈なスピードで仕事をこなせるヤツがいるか。富野由悠季なんか若い頃は「絵が下手」と評判だったらしいのですが、とにかく絵コンテを描く速度が猛烈に速かったらしい。だからどんどん重用され、また数をこなすことで上達したらしい。
じゃあ、たいして速度が速くない、ましてや予算の都合上、人海戦術なんか使えるわけもない、アタシのように個人でアニメーションを作る人間は「コツコツ、時間をかけてやるしかない」のです。
言っても今は「鉄腕アトム」の頃とは時代が違う。PCがあれば、あと当然アニメーション作成ソフトがあれば、んでソフトが使えれば、ひとりでもそれなりの速度で作れる時代です。
そうは言っても、所詮は「それなりの速度」でしかない。だいぶマシになったとは言え、大変なことには変わりがないわけで。
アニメーションってね、本当にちゃんとやろうと思うなら、1分どころかCMみたいに15秒でも膨大な時間がかかるんです。
実際CMでは一般人からしたら<たった>と思える15秒のアニメーションを作るのに、相当な時間とかなりの人材を投入する。もちろん「時間」と「人材」が一番予算を削っていくわけで、<たった>15秒のCMを作るのにものすごいカネをかけているのです。
つまり「短いからラクだろ」って話でもないってことなのですが、実はね、短いアニメーションって、それこそ30分のアニメーションとは違う大変さもあって。
何と言うか、アニメーションに限らず動画って、短ければ短いほど<アラ>が目立ちやすいのですよ。
たしかに慣れてくれば慣れるほど、初稿というか粗稿は制作時間を短縮出来るようになります。ただ短い分、不具合が一箇所でもあればメチャクチャ目立つし、ゼロコンマ1とか2のタイミングが気になりやすい。
もう気になったら最後、修正せずにはおれない。当然ゼロコンマ1の箇所だけを修正したら良いわけではなく、一箇所変えると他も全部タイミングを見直さなきゃいけなくなる。
アタシは自分のYouTubeチャンネルを始めるまでアニメーションなんて作ったことがなかった。
で、実際にやってみてわかったのは「こんなの無限じゃん」と。本業のグラフィックデザインもそういうところはあるんだけど、それでも無限ではない。少なくとも自分なりレベルであれば完璧に近いところまで落とし込むことは可能です。
しかしアニメーションに完璧なんてあり得ない。何をどうやっても気に食わない箇所はなくせない。これも経験則っつーかアニメーション作りを重ねれば着地点が見えるかもしれないけど、厳密には仕事でも何でもない、片手間でやってる人間がそこまで到達するのに何年かかるんだって話で。
ましてや、ですよ。
冒頭に「一週間に一本」と書いたけど、仕事ではないので一週間まるまる予告編作りに充てられるわけがない。本当は予告編よりも本編の方が重要なので、予告編作りに、つまりアニメーション作りにかまけてられるのってせいぜい1日あれば良い方なんですよ。
本職でないどころかド素人がひとりで、1日で約1分のアニメーションを作る、これがどれだけ「無理な話」か。
ここまで制作面で制約が多いと、当然アイデア面での制約も大きくなってしまう。
「せめて稚拙な技術はアイデアで補おう」とは思ってるんだけど、実は技術面で出来る出来ないよりも、時間的制約で出来ないことの方がはるかに多いんです。
技術にかんしては、もう、構想段階で自動的に脳内から弾かれるって感じで、能力的に不可能なものはあまりアイデアとしても浮かばなかったりするんですよ。
でも「これ、ああして、こうして、うん、技術的に作れるな」となっても、実際に作り出したら時間がかかりすぎて簡素な感じになってしまうことも多い。
いやまだ簡素になる程度ならいいけど、途中で「時間的に無理!」となってアイデアを放棄して、そこから別のアイデアをひねくり出して、イチから作り直し、なんてこともあるわけで。
アニメーションが面白いのは、技術が低ければ低いなりに、絵が描けなければ描けないなりに、それでもわりと何とかなったりするんですよ。だから意外と技量が足りないというのは考えなくていい。
しかし時間的制約だけは本当に如何ともし難い。ちゃんとやろうと思えばマジ無限に時間がかかるし、ちゃんとやるやらないじゃなくてもちょっとしたアクシデントでも、あっという間にタイトになる。
手塚治虫が24時間テレビ用のアニメが間に合わなくて、もう放送が始まってるのにまだ後半の絵コンテを切ってた、なんて信じ難い話があるけど、自分でやってみてわかった。
ああ、アニメーションって、そういうものだわ、と。
もうこうなると、実はアニメーション制作においてもっとも重要なポストってプロデューサーなんじゃないかと思う。
要するに「ハイ、こだわるのはそこまで!」と仕切ってくれる人の存在というか、ちゃんと制作状況を把握した上で、絶妙なタイミングで「見切り時」を提示してくれる人がね、絶対いると思う。
これがアタシのように「ひとり」でとなると、実制作が「ひとり」なのは当然として、見切り時も自分で決めなきゃいけない。
でもこれが難しいのよ。さすがに、心から満足出来るものが完成するまでは、とかは思ってないけど、それでも毎回毎回「もうこれでいいわ」と投げやりレベルの強制終了になってしまう。
これがひとり制作の難しいところで「あとちょっとこだわろうよ」とか「もうここらでいいんじゃない?」って誰も示唆してくれないし、アニメーション制作の現場なんか知ってるわけがないから適切なタイミングもぜんぜんわからない。
でもね、これ、あんまり突き詰めて考えないようにしている。だって突き詰めたら絶対「そもそも予告編アニメーションとか、いる?」って結論になるのは目に見えてるもん。
いるとかいらないじゃないんだよ。やるって決めたからやるんだよ。何でって?それがアニメーションだから。沼だから。ミドロが沼だから。