今回は<やってる>YouTubeではなく<見てる>YouTubeについて書きたいのですが、つか中途半端であっても<やってる>ってのがね、どうも足枷というか、映画評論家が自分で映画を撮ってしまうと言いたいことが言えなくなるのに近いというか。
なるべくその手の忖度はなしに書いていこうと思うのですが、アタシが好んで見る<チャンネル>というよりは<ジャンル>として「事件系」というものがあります。
事件系チャンネルにかんしては本当に、雑多に、チャンネル問わずにいろいろ見てきたし、んで最終的に「事件系として頭ひとつもふたつも抜けている」と思った「だてレビsideB」さんと「ふくしま事件ちゃんねる」さんに強いリスペクトを覚えたと。
だけれども、今も「雑多に事件系を見る」のは止めていない。相変わらず、いろいろ見てます。
当たり前だけど、何しろ<事件>ですからね、事件を取り上げるイコール、ノンフィクション以外の何物でもない。現実に起こったことなんだから。
んでこれまた当然だけど、ミステリとは本質的に異なる。ミステリは(あくまで<基本的>にはですが)謎が解けるものであり、逆に言えば事件系でも未解決事件の場合、絶対に謎は解けない。どれだけ考察を重ねようが真実なんてわかるわけがないのです。
つまりね、ミステリをはじめとしたフィクションと実際に起こった事件(ノンフィクション)はあきらかに「似て非なる」ものなのです。
というかミステリとは要するにエンターテイメントでして、エンターテイメントである限り、どうやって読者を、視聴者を面白がらせることが出来るか、そこが主眼になる。まず面白くなるプロットを作って、そこから細部を煮詰めるというか辻褄を合わせるわけで。
しかし現実の事件には、わずかな例外はあるとは言え、犯人に「事件に興味を持つ人を面白がらせよう」という意志はまずない。というかエンターテイメントとして人を殺めたり物を盗んだりしてるわけではないのですからこれまた当然です。
そしてミステリとは違い「辻褄を合わせよう」ともしない。これも当たり前なのですが、突発的な犯罪の場合なんか心理面での辻褄もヘッタクレもないわけで、もしそうした、心理面での辻褄が合わないミステリを書いたとしたら、その作家はお払い箱です。
だけれども、いろいろ事件系チャンネルを見ていくと「この人は現実とミステリを混同している」と思える人も結構いる。
いやね、考察するなと言うつもりは毛頭ないんですよ。でもその考察が「真実に迫ろうとした結果」であったり、完全にエンターテイメントに振り切った考察(例・「だてレビsideB」さんのエリツィンさんの「生まれ変わったニート」のような考察というより妄想)であれば、それはそれでいい。むしろ大好きですらあります。
しかしそのいずれにも当てはまらず、あくまで真面目に考察する体なのに、だんだんと「こうであれば面白いのに」という方向に寄って行ってしまう、そういう人がわりといるんですよ。
どう考えても「たまたま」なふたつの事件を「関連性がある」と強引に結び付けてしまったり、証言や証拠の重要性を私見の邪魔になるという理由で選り分けたり、いやいやそれって、事件を面白くしようとしてるだけでしょ?みたいな。
たいていの事件って面白くもなんともない、不愉快なだけのものが多いし、これが「怨恨による犯罪」ならまだしも、流し、つまり通りすがりの人間の突発的な犯行であれば、話を膨らませようもないんです。
ここで陰謀論というか「裏で巨大な組織が動いた結果」なんて持ち出すと、そりゃあ話はいくらでも膨らみますよ。
でもそれって、ただフィクショナルな方向に膨らませただけで、どんどん事件としての本質からかけ離れていく。
アタシが何故、事件、それも未解決事件に興味があるのかと言えば、その事件が起きた時代背景、街、人々、様々な事象が絡み合うのに惹かれているんです。
結局は自分のチャンネルの話になってしまうんだけど、そうしたね、わりとさらっとしか語られない事象を調査してみると意外と面白かったりするし、背景がわかればわかるほど楽しみ方も多層になる。そういうことを「事件」ではなく「映画」の枠でやろうとしたのがウチのチャンネルです。
もしこれが「実は登場人物の◯△男と■▼子がデキていた!」とかなら一気に下衆になるのはもちろん、そもそもそういう楽しみ方をしてないので、自分がしようとも思わないのです。
何だかね、事件のフィクショナル化って、それと似てると思う。
たしかに面白くしようとしてるのはわかるし、それを面白がる人がいるのも理解出来る。でも、アタシは違う。どっちが上か下かって話じゃなくて、アタシはあんまり面白がれない。
その点、「だてレビsideB」のキーフレームさんは自身が映画や芝居など様々なフィクションに詳しいせいか、絶対に三文ミステリみたいな考察はしない。というか完全にネタとして振り切ることはあっても、陰謀論的な形で「この事件、こうだったら面白いな」みたいな方向には間違っても行かない。
むしろアタシ同様、事件の背景であったり、既成事実となってることを「それ、ホントに間違いないことなの?事実と認定していいの?」みたいなことを徹底的に解明しようとする。
先日配信された動画ですが、この動画を見ると「むしろフィクショナルに寄りそうなところをどうやって食い止めるか」をやってるようにさえ見える。
よく動画内で共演するエリツィンさんから「キーフレームさん、本当に事件には興味ないんですね」と茶化されているけど、興味はあると思うんですよ。でも事件そのものではなく、事件にまつわることの方が面白いと思ってるタイプだと思うし、その辺はアタシと非常に似ている。
面白さにはいろんな種類がある。んで事件で言っても陰謀論的に話を広げるのが面白いと思う人もいるし、アタシのように(たぶんキーフレームさんも)事件そのものより事件の起きた背景を面白がる人間もいる。
しつこいけどどっちが偉いって話じゃないけど、アタシならフィクショナルな面白さを求めるならミステリを読むわ、と思ってしまう。その方が絶対にスッキリするはずだしエンターテイメントとして完成されているはずだからね。
ま、これは自分のYouTubeチャンネルに限った話だけど、そうした自分の趣向を押し出すか否かはまた別なんだけどね。
結局はどんな趣向が「人を集められるか」を考えなきゃいけないから。つかたぶんアタシみたいな方がマイノリティなんだろうと思うし、それをマジョリティに寄せるのは難しいわ。