まァウチの母親はずっと関西、というか神戸に在住しているのですが、所謂「忖度オバチャン」(=おばあちゃんの言い換え)なんでね、如何にも関西ローカルなバラエティ番組を好んで見るような人間でした。
過去形なのはここ数年あまり見なくなってるらしく、それこそ以前は上沼恵美子ややしきたかじんの番組を好んで見てたのに、もうそういうことがなくなった。
ま、やしきたかじんは逝去したのでアレですが、最近の上沼恵美子にたいしても批判的で「何か超えたらアカンところがわからんようになってるんちゃうか」と。また「もう長く(芸能人を)やるつもりがないからか知らんけど、あまりにも攻撃的すぎる」みたいなことを言ってて、不快だからあまり見ないようにしてるらしい。
母親が繰り返してるのは「せやから言うて上沼恵美子やたかじんに代わるような人もおらん」ということです。
とくにトミーズ雅あたりには非常に厳しい。あとこれはMCクラスではないけどミキにも異様に厳しい。あんなんアカン、とずっと言ってる。
そんな母親が絶賛してるのはダウンタウン浜田と今田耕司で、しかし母親は「二丁目芸人(かつてあった心斎橋二丁目劇場を根城にしていたダウンタウン、今田耕司、東野幸治などの芸人)」にはずっと興味がなかった。にもかかわらず「浜田と今田はホンマに上手いわ」とね。
ま、アタシら世代は二丁目芸人の力量を嫌というほど把握しているのでこの評価は当然なのですが。
ただし浜田も今田も関西ローカルタレントではない。一応関西ローカルの番組もやってるとは言え、いわば全国区タレントです。
たしかにね、母親の言わんとすることはわかるんですよ。関西ローカルタレントはあきらかに小粒になってきており、上手い人、面白い人はいるんだけど、なかなかMCクラスでコレという人が出てきていない。
その中で海原やすよともこはまだ期待出来るけど、小籔はあきらかにMCに向いてないし、本来であれば準キー局バラエティで中心を担わなきゃいけない二丁目芸人世代や天素世代は全国区タレントになったか、もしくはどうもイマイチでMCとしては、みたいな感じなんですよね。
そんな中、もしかしたら今後「関西ローカル」という枠ではありますが、ひょっとしたら天下を獲るんじゃないかと思う芸人がひとりいます。それが「矢野兵動」の兵動大樹です。
アタシは昔、それこそ<笑い>ネタをいっぱい書いてた2004年~2006年頃に矢野兵動について書いたことがある。つかまだ彼らがほとんどテレビに出てない1990年代前半頃、うめだ花月で彼らの漫才を見て「こんな上手い若手がいるのか!」と驚愕したんですよ。
それは若手漫才師だけのイベントだったんだけど、マジでひと組だけ突出して上手くて、これは将来間違いなくテレビでも活躍するな、とね。
しかしアタシの予感は外れた。
たしかに彼らの漫才は抜群だった。しかし見た目の地味さもあったか、少なくともテレビタレントとしてはあまり売れませんでした。
ただし兵動は単独で小籔とトークライブを行なっており、徐々にその面白さが知られるようになってきた。
だからね、あんまり人には言ってないけど、たぶん関西ローカルタレントでは唯一のファンなんですよ。
兵動は現在関西テレビの「newsランナー」という夕方のニュースワイドショーのワンコーナーを持っており、これはYouTubeでも配信されているので現在東京在住のアタシもかかさず見ていますが、これが本当に面白い。
「兵動大樹の今昔さんぽ」というコーナーなのですが、こんなのね、ツッコもうと思ったらいくらでもツッコめるんですよ。
一枚の古い写真から、まったく同じ場所で<今>を撮影するため、その写真が撮影された場所を探し当てるという内容なんだけど、そんなの写真の出どころをスタッフが知らないはずがないし、インターネットを使えばいくらでも早く解決出来る。そもそもたかだか15分のコーナーでそこまで本気の探偵ごっこが出来るわけがない。
つかね、そんなことは百も承知で、そういうのを「無粋なツッコミ」と言う。でも内容も本当に上手く出来ていて、ちゃんと「次の日、人に話したくなる」レベルの微妙な豆知識を授けてくれるんですよ。
アタシは先日の配信で初めて「素浄瑠璃」という存在を知った。浄瑠璃、というと人形芝居とセットの人形浄瑠璃のが圧倒的に知名度があるというか、たんに「浄瑠璃」と聞くと普通は人形浄瑠璃が浮かぶ。
しかし素浄瑠璃はその名の如く「人形浄瑠璃から人形芝居を抜いたもの」と考えればいい。つまり太夫による「唸り」だけ(ま、三味線演奏はある)。たしかにマニアックな芸だけど、これはこれで興味を惹きます。
そういうのをね、兵動は「街を行き交う人との会話」で引き出していくんです。
これだって「仕込みだろ」とか無粋なツッコミをし始めたらキリがないけど、とにかく兵動の引き出し方が完全に芸になっていて、アタシが見る限り、全国区の街ブラ系番組でレポーターとして活躍するどのタレントよりも兵動のが上手いと思う。
しかもです。かつては地味にしか見えなかった外見も、良くも悪くも「如何にもその辺にいる大阪のオッチャン」っぽくなってるのもいい。
それこそ兵動は上沼恵美子やたかじんような、所謂「噛みつき芸」ではないので、ああいうポジションになれるか、またなるつもりがあるのかもわからない。
でもMCとしての実力も十分で、適度な毒もあり、何より「醒めていない」。これが重要でね、関西ローカルタレントって「熱すぎる」のはオッケーなんだけど「醒めてる」のはアウトなんです。
つかさ、そろそろ関西ローカルに留まってる二丁目芸人世代や天素世代(何故か関西ローカル番組をやってるナイナイ岡村含む)に見切りをつけて、兵動とかやすよともこ以降の芸人に切り替える時なんじゃないかなぁ。でないとマジで先がなくなるよ。
そんなことを言いながらアタシは二度と関西に舞い戻る気がないので、どうでもいいっちゃどうでもいいんだけど、神戸に在住してた去年まですら書いてなかった上方芸能関係の話を久々に書いて楽しかったから、まァいいか。