iPhoneはなーんも「発明」はしていない
FirstUPDATE2024.5.3
@Scribble #Scribble2024 #iPhone #Apple #PocketPC/WindowsMobile #UI/UX タッチパネル 静電式 感圧式 スタイラスペン スティーブ・ジョブズ 画期的だったけど発明じゃない 単ページ

これ、本当にね、あまりにも勘違いする人が多すぎて、何でこんな勘違いが起こるんだ、とフシギでしょうがないんだけど、とにかくエントリタイトル通り、iPhoneって初代から現今機種まで、なーんも「発明」と呼べるようなことはしてないよって話で。

今回はどうしても必要なので古い話をします。
2000年代前半にマイクロソフトが提唱していたPocketPC→WindowsMobileにハマっていたって話は何度も書いてきたのですが、だからこそ、当時のモバイル技術がどんなもんだったかは良く憶えています。
こと<技術>だけで言えば、今につながる機能は2003年頃のPocketPCの時点ですでに搭載されていたのてすよ。
ただしこの規格はOSの完成度があまりにも低く、まったくポテンシャルを活かせてなかった。

そんな状況で登場したのがiPhoneなのですが、iPhoneが唯一、これも発明ではないし、つか以前からあった技術だけど、根本的に変えてきたことがひとつだけあります。
それは「静電式タッチパネル」を採用したことです。
タッチパネルの方式はいろいろあり、現在主に使われているのはiPhoneやAndroidに搭載されている静電式です。
もうひとつが「感圧式」と呼ばれるもので、iPhone以前のタッチパネル対応モバイル端末にはほぼすべて感圧式が採用されていたのです。

感圧式の説明をするのはややこしいんだけど、ほんの数年前まで、回転寿司の注文用液晶パネルでなかなか反応しないってタイプのがあったでしょ?あれが感圧式タッチパネルで、指でいくら触っても反応しない。つかしづらい。
しかしあれ、爪でやったら一発で認識するんですよ。
「どう考えても指で出来る方がいいじゃん。何で感圧式がメジャーだったの?」と思われるかもしれませんが、静電式にはひとつ重大な欠点があった。それは「どこがタッチされたかが<だいたい>しかわからない」のです。
逆に言えば感圧式であれば、ドット単位で(厳密にはドットは関係ないけど)、つまり正確な座標が取得出来る。という理由で感圧式の方が主流だったのです。

とはいえ<爪>で細かい座標を指すのは無理で、だからPocketPC→WindowsMobile端末にはほぼ確実にスタイラスペンが付いてきた。つか本体にスタイラスペンが格納出来る仕組みがあったのです。
今となっては有名ですが、スティーブ・ジョブズは大のスタイラス嫌いで、タッチパネル方式のスマートフォンを開発するにあたって「指で操作出来るようにしろ」と開発陣に指示した。
指で操作、となったらもう静電式しかない。というわけでiPhoneは静電式に特化したUIにしたのです。
つまり細かい座標なんか取得出来なくても問題ないOSにした、と。

もうあんまり憶えてる人もいないだろうけど、WindowsMobileの末期、静電式タッチパネルを採用したWindowsMobile端末が発売されたことがあります。
たしか東芝製で、アタシは投げ売りになってるヤツを買ったけど、まったく使い物にならなかった。つまりOS自体が感圧式タッチパネルにカスタムされてるいるので、<ざっくり>しか座標を取得出来ない静電式ではロクな操作が出来なかったんです。
その後、静電式タッチパネルはかなり精度が上がり、ApplePencilのような専用のペンを使えば<ほぼ>座標を正確に取得出来るようになりましたが、2007年のあの時点で静電式タッチパネルを採用したってのは画期的だった、という話です。

いくら画期的ではあっても別にAppleが静電式タッチパネルを<発明>したわけじゃない。すでにあった技術、と言えばその通りです。
思えば初代iMacの時も「レガシーポートをすべて廃止してUSBオンリーにする」という決断は画期的ではあったけど、これまた発明ではない。それを言えばVisionProだって「すでにある技術をApple流のソフトウェアで染め直したもの」だし。
つまりね、やっぱりAppleってソフトウェアメーカーなんですよ。ハードウェア面ではあくまで「すでにある技術」を使ってるだけで、ソフトウェアの技術とUIセンスで画期的に見せる。
たぶん技術至上主義の人からしたらそういうところが気に食わないんだろうな、と思う。ただソフトウェアでゴマかしてるだけじゃん、と。

でもアタシからすれば、それがAppleの立ち位置なんですよ。だから過剰に褒めそやす必要はないけど、ソフトウェア技術とUIセンスを軽視して莫迦にするのもどうなのよ?と。
つかさ、そんなメーカーもないとつまらないんですよ。みんながみんな技術至上主義になっちゃうと絶対に先行きが短くなる。それよりもAppleが大々的に画期的!と謳ったものを出して「なーにが画期的だ、それくらいウチでも作れる」となった方が市場が活気付きますよ。
そうやってAppleなんて半分小馬鹿にするくらいでいいんです。逆にスティーブ・ジョブズリスペクトなんてしちゃうとバルミューダの惨劇再びになるだけだしさ。

というかさ、もっと言うならAppleなんてヘンテコな会社意識しても良いことないよ。商売柄張り合うのはしょうがないにしろ、基本的に「Appleはニッチ狙いの会社」くらいの認識でいいと思うんだけどねぇ。







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