フィクションでもモキュメンタリーでも超えちゃいけないラインがある
FirstUPDATE2024.5.2
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そういやずっと見たい映画があって、今村昌平監督の「人間蒸発」って作品なんだけど、どうもチャンスがなくて。

これね、いわゆるモキュメンタリーとして撮られている。要するに偽ドキュメンタリーというかフェイクドキュメンタリーでして、あくまでドキュメンタリーという<体>は崩さず、でもすべて台本がある、みたいな。ま、プロレスのブックみたいなもんか。
アタシはモキュメンタリーは意外と好きで、というのも通常の「役者が芝居してます」って形式では表現出来ないことが出来ると思っている。それこそヤコペッティの作品なんか、作り物だ云々という方が間違ってるわけで、それこそプロレスなんて八百長だというのに似ています。

だからね、わりとずっと「Aマッソのがんばれ奥様ッソ!」って番組が気になってて、これ、結構まとめサイトでもコスられてるんで、だいたいのムードとか内容はわかってはいたんですよ。
ただなかなかこれも映像が見れなくて、先日、この番組について詳細に書いてあるサイトに巡り合ったんだけど、それを読んで見る気がなくなった。
いやね、モキュメンタリーもフィクションなんだから、別にどれだけ残酷なオチでもいいんですよ。そこは基本的に気にしない。ただ「とあるネタ」がブッ込んであるのを知って、ああ、こんなの見たら不快になるだけだな、と。

ここからちょっとアタクシ事を書いていきます。
先月、ウチの弟が突然倒れて救急車で運ばれた。当初の見立てでは脳へのダメージが大きく、もしかしたら危ないかもしれない、と言われていました。
ま、結果としては命に別状はなく、弟は現在リハビリをしているのですが、では「弟が死ぬかもしれない」という事態にたいしてアタシが何を思ったか、と言えば、少なくとも「死」への感情は何もなかったと言ってもいい。
こう書くと非常に冷たいと思われるかもしれませんが、アタシはそういうところだけは達観していて、生きるか死ぬかなんて本人か神様しか決められないと思っている。ましてやアタシは医者でも何でもないので、足掻いたところでどうすることも出来ない。

変な話、寝たきりで長生きしてもしょうがない、生きてる限りは元気で、と考える人間なので、生きるか死ぬかにたいしてはどうでもいいんです。
そんなことより、もし助かるなら、今後、弟がどれだけ幸せに生きて行けるかの方が重要で、死んだら悲しいとか、死んだ後どうしようとか考えるくらいなら、ただ生きていくのではなく、どれだけ楽しく生きていけるかを考えた方が絶対にいい。
もっと極端に言えば、身内が、大事な人が、はたまた自分自身が殺されても交通事故で命を落としても、しょうがない、そこまでの寿命だったんだ、と思えてしまうというかね。

だからフィクションを見ても、劇中で登場人物が死んでも、そこまで感情が動かない。アタシもトシをとってきてだいぶ涙もろくなってきたけど、生き死にで涙を流すことはありませんし、そもそもたいして感情が揺さぶられない。
ま、リアル世界でさえこんな感じなんだからフィクションなら当然なのですが、それでもね、これは悲しいとかそういうことではなく、それだけはフィクションだろうがやっちゃいけないことってあると思うんですよ。
それが

ペットが無惨に殺される

という。
実際問題、フィクションの中でペット、もしくはペット的キャラの死を描いた作品はありますが、残虐な殺され方をしたものは見たことがない。
人間であればどれだけ残虐な殺され方をしてても「所詮フィクションだし」と思えるけど、これがペットなら話が変わる。フィクションだろうがなんだろうが、それだけは「ダメ絶対」なのです。
というか、もしフィクションなら、人間がどれだけ酷い殺され方をしたとしても、ペットは生き残らなきゃいけないと思う。んでそのペットは余所に引き取られて天寿を全うしました、という示唆も必要だと思うんですよね。

Aマッソのモキュメンタリーの話に戻りますが、アタシがどうも引っ掛かったのが「ペットの犬をハンバーグにして食べることを示唆する」描写があったらしい、ことです。
言っても示唆止まりらしいんですが、それであったとしてもです。フィクションと謳われたわけではない、モキュメンタリーとはいえドキュメンタリー風の映像でこういうことをする神経がわからない。
モキュメンタリーってのはフェイクだとわかって見た場合、ニヤニヤ出来ないとダメだと思うんですよ。つか「やってるやってる」みたいなね、ある種のコメディとして見れるかどうかはかなり大事なことなんです。
でもAマッソのモキュメンタリーはその一線を超えている。ま、何しろ現物の映像を見てないので断言は出来ないけど、それはタブーレベルのことという認識もなしに安易にやっちゃった気もするわけで。

これ、動物虐待とかとは別次元の話なんですよ。
一時期、某国で撮影されたと思しき猫への虐待動画がアンダーグラウンド的に出回ったりしましたが、これはある種の性的嗜好に近いので、やっぱり先のモキュメンタリーの動物惨殺とは話が違うように思う。
ま、その手の動物虐待動画の方が圧倒的に悪質なんだけど、ターゲットがはっきりしてる分まだマシかもしれない。
さらに言えば、もしこれがBSとは言えテレビで放送されたものではなくOAVの類いであればまだ救いがあったんだけどね。
モキュメンタリーというのはたとえ内容的には穏当だったとしてもテレビというメディアで扱うのが難しいのです。そういうことが作り手、そしてAマッソ自身がわかっていたのかどうか。

というかさ、そもそも「面白い」ってのがどういうことか、ま、それはいいわ。







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