震災から29年
FirstUPDATE2024.1.17
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あー、もう、あれから29年か、つか来年で30年か、という感じなのですが、今日1月17日に「あれから29年」と言えば阪神淡路大震災しかないわけで。

思えば、やってない年もあるんだけど、かなりマメに、毎年1月17日には阪神淡路大震災のことを書いてきました。
ましてやアタシは2019年から2023年までの間、神戸に在住していたわけで、ま、これも何かの縁だなと思ってね、せっかく神戸に住んでるんだから、と暇を見つけては図書館に足を運んで震災のことを調べていたんです。
しかし何しろ調べ尽くすには規模がデカい。アタシとしてはあくまで「生活に密着した」ことを調べたいのでメチャクチャ時間がかかってしまって、まだ調査は中途も中途です。

生活に密着した、つまり震災前と震災後の「神戸市民の<普通>の生活」を調べたいのですが、そうなると仮設住宅諸々の具体的な、ま、数字的なことですね、の徹底調査は必須で、もちろん仮設住宅の間取りやなんかも調査に含まれる。
それらのことは来年、つまり30年目にとっておくとして、ちょっと気になる映像があったのでそれを紹介していこうかと。


これはおそらく毎日放送のニュースショーの一部として放送されたドキュメンタリーだと思うのですが、もう、これを見るだけで神戸市の震災復興事業が如何にズレていたか、嫌でもわかる。
上記動画の舞台となっているのは新長田、さらに具体的な地名を出せば大正筋商店街ということになります。ま、だから駅としては新長田よりもどちからと言えば駒ケ林に近いんだけど、知名度的に新長田ということにしておく。

アタシは神戸に在住していた約4年半の間、いろんな<絡み>があって、ほぼ毎週この大正筋商店街に行っていた。というか上記動画で取り上げられているアスタという商業ビル兼集合住宅に入居している某企業の人と懇意にさせてもらってました。
だからもう、本当に、この動画は身に沁みた。んでこの動画を見た後、去年の12月に神戸に帰省した際、さらに詳細な話を聞くことも出来ました。

もし「最大の震災復興事業の大失敗例を挙げろ」となったら、アタシは何の躊躇もなく、この大正筋商店街の復興事業を挙げる。
いや動画を見るまでもなく、現在の大正筋商店街がどんな状況なのか、いくらでも脳裏に浮かべることが出来ます。
あ、ここから非常にシビアな言い方になりますが勘弁してください。
まず、とにかく人がいない。いたとしても高齢者ばかりで、子供や若者はおろかミドルエイジくらいの人すらいない。
当然、商店街には活気の<か>の字もない。閑散とした薄暗いアーケードの下を自転車に乗った高齢者がただまばらに行き交うだけです。

震災前の大正筋商店街は間違っても上品な場所ではなかったけど、1990年代としては十分な活気のある商店街でした。
この商店街は震災で壊滅的な打撃を受けた。古い木造の建屋が並んでいたこともあり、震災からの火災もあって更地に近い状態にまでなってしまったんです。
ほぼ更地となった大正筋商店街は神戸市の復興事業の対象となり、大規模開発が行われることになった。そして跡地にアスタという商業ビル兼集合住宅が完成したのです。

このアスタが如何に問題が多いかは先の動画を見てもらう方が早い。とにかく「何でこんな<作り>にしたんだ」とクエスチョンマークしか浮かばないほど無駄なスペースだらけで、人がほとんどいないにもかかわらずエスカレーターが常時動いてる。
上記動画では「長年親しまれたダイエーが撤退した」ところで終わってますが、ダイエー跡地には「関東からの黒船」と言えるロピアが出来た。これは間違いなく復興への<光>だったはずなんです。

ロピアはユータカラヤから発展したスーパーで、アタシの知る限り、閑散としたロピアはひとつも知らない。つまり令和においてロピアほど成功が約束された、もっと言えばロピアが進出した地域はそれだけで発展するとさえ言える存在です。
もうこの辺はロピアパワーとしか言いようがないのですが、大正筋商店街にっつーかアスタに出来たロピアも、さすがに閑散とはしていない。他地域にあるロピアの店舗並みとは言わないけど、少なくとも前のダイエーよりははるかに人がいます。
ところがロピア特需の恩恵を受けているのはせいぜいロピアの前の、つまりロピアと同じ地下のフロアにある店舗だけで、ロピアが出来た後も相変わらず大正筋商店街、つまりアーケードの下は「高齢者がまばらに自転車で行き交う」という有り様なのです。

「あのロピアでさえ街の復興という面では力不足だった」

これはかなり衝撃的な事実です。ロピアでダメなら、もう、どんな店舗を誘致してもダメということを意味する。
街の復興としてロピアを誘致する、これはもう、ベストを引いたようなもので、ベストでダメなら次がないのですよ。
こうなったらアスタ自体を何とかするしかないのですが、つまり動画で語られているように無駄なスペースをなくし、管理費を大幅に下げて商業スペースへの入居のハードルを下げる。これしかない。

にもかかわらず神戸市の動きはニブい。
上記動画が放送されたのは2021年の震災前ですからすでに3年の月日が経っている。動画では希望の見える終わり方になってるけど、3年経って、では何か大幅に改善されたのか、というと何もされていないというのが実情です。
アタシが聞いた限り、管理費にかんしては、信じられないことに個別交渉が基本らしく、正直役所が関わった事業とはとてもじゃないけど思えない。

というかアタシも4年半神戸市に在住して、幾度となく役所の人間とやり取りをしたけど、もう一事が万事この調子で、ぶっちゃけ言えば「自分がラクすることばかりを考えて、市民がどうなろうが知ったこっちゃない」という感じなのです。
これが如何に異常なことか、それは東京に越してきてあらためてわかった。普通、どこだろうが役所の人間も、ここまで住民を莫迦にしてないよ。

アタシは何度も神戸の現状が酷いと嘆いてきた。そして、今まで書いてなかったけど、その原因の大半は役所の対応にあると考えます。
Yabuniraでは極力政治的な話を書かないようにしてきたし、アタシの体験がどれほど普遍的なものかわからない以上、どのような酷い体験をしようとも「テメエだけの問題」の可能性は捨て切れない、今でもそう思っています。
ただし神戸市にかんしては別で、この手の「役所の人間があまりにも酷い」という話を何度、そして何人から聞いたことか。

神戸の復興、いや衰退を食い止める方法はたったひとつだけ。役所の人間がまともになることです。もうマジでそれだけだと思う。つか行政云々の話以前です。
つかさ、これはもう潜在需要だと思うのですよ。もし市長選で「役所の人間を再教育します!」と公約すれば、マジそれだけで票が伸びると思うよ。本気で。