弱い人間の中で情熱と理性が争えば
FirstUPDATE2023.8.17
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情熱が勝つに決まってる、と言ったのは植木等、もとい源等ですが、もうね、今の時代、情熱も最強じゃないだろ、みたいな話をしたいと思います。って情熱価格の話じゃないよ。

これまで何度も書いてきましたように、アタシは<オタク>かどうかはさておき、少なくとも<コレクター>ではありません。
何故コレクターにならなかったか、その理由も何度も書いてきた。しかし、今になって思えば「コレクターじゃなくて心底良かった」と思ってしまうのですよ。
これがね、まァ、20年ほど前であればコレクターの意味があった。もっと言えば「コレクション=オタクの<深度>をはかる指標」になったと思うんですよ。つまり貴重なブツを所有している=それだけの情熱を持ったオタク、と言い換えられた。

しかして今はどうでしょうか。
ファミコンソフトコレクターの最後の入手難関ソフトは「バトルラッシュ」と言われていますが、もしね、イーロン・マスクがファミコンコレクターで、オークションの価格をいきなりイチオクとかにしたら、もう誰も勝てないんですよ。
つまり今の時代、コレクションに情熱なんか関係ない。そんなことより「札束で殴り合えるだけの財力があるか否か」がすべてで、仮にどれだけ情熱があろうが札束攻勢に屈してしまう。
これではコレクションが面白いわけがないんですよ。
だからね、もし知り合いが「バトルラッシュ」を所有してても「あ、コイツ、財力があるんだな」としか思わないっつーか。

何というか、それこそ「バトルラッシュ」とかって「その界隈ではレアで有名」なんですよ。だからみんな欲しがるし、自然と値段も信じられないものになるわけです。
でもね、アタシが本当に貴重だと思うのは「本当に貴重なのか、その界隈であってもほとんどの人は知らない」ものだと思う。
そして、これが大事なことなんだけど、その界隈の常識がひっくり返るほどの資料となり得るブツかどうか、なんですよ。つまり<オタク>としてモノホンの知識がないと「界隈の常識がひっくり返るほどの資料」かの判断が出来ないものというか。
それであれば、コレクターでもなんでもないアタシも死にものぐるいで欲しますよ。

つかね、こればっかりはインターネットでは、つか検索ではどうしようもない。「地道に<足>で探す」という20年以上も前の<オタク>と同じことをやらなければ「その界隈の常識がひっくり返るほどの資料」なんか見つけられるわけがありません。
となるとです。
札束の殴り合いとはまったく関係なく、オタクとしての<深度>がはかれるようなブツを所有しようと思えば、これはもう、居住地が「東京」か「東京以外」かで大きく変わると思う。
言っときますけど「都会」か「田舎」かではない。大阪であろうが名古屋であろうが「東京以外」でしかないのです。

実際ね、神戸に在住していた4年半ほど、アタシの<オタ活>は何の進展もありませんでした。
しかし、まだ東京に越してきてひと月ちょい、そんな言うほどオタ活が捗るような場所に行ったわけじゃないんだけど、もうこれでもか、と言えるほど新しい発見があったんです。
このひと月ほどの間に、心が震える発見が何度かあったし、つか「心が震える発見」ってのがオタ活の醍醐味だと思うんですよ。

いやね、TwitterのフォロワーさんとDMでやり取りしてて改めて思ったことだけど、情熱ってね、醒めるんですよ。もうこれは絶対。アタシとか「スーダラ伝説」前夜にクレージーキャッツに興味を持ってから、何度も何度も<熱期>と<醒期>を繰り返している。
それが悪いわけじゃないんですよ。でも<醒期>に何の資料性もない、入手手段に何の記憶もない、ただオークションで買った、ただたまたま売ってたし手持ち金があったから買った、なんてブツを見ると異様に虚しくなる。
それこそクレージー映画のポスターとか、こんなのどの書籍にも載ってるし、何ならかなりの高画質でスキャンした画像がネット上に転がってるのに何がありがたいんだろって。

もちろんそんなことを思っちゃうのは<醒期>だけで<熱期>は思わないですよ。でも<醒期>をゼロにするなんて絶対不可能です。
でもね、「日本一の断絶男」の準備稿なんかまさにそうなんだけど「心が震える発見」があった資料性の高いブツは、久しぶりに手に取ると「心が震えた」瞬間のことを一瞬で思い出し、再び熱量を取り戻すことが出来るんです。
一方、そういう瞬間を迎えたわけではないブツはせいぜい「ああ、こんなの買ったな」と思うくらいで、熱量を取り戻すどころか丁寧に保管しておこうという気すらなくなる。
結果、わりとクチャクチャになったポスターが増えていくわけで。

まァね、本当の価値なんて値段では決まらないから。というか「札束で殴ろうとも思わない」ものに重篤な価値を見い出すことこそオタクの醍醐味なんじゃないかねぇ。







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