AppleVisionProの発表を見て思ったこと
FirstUPDATE2023.6.9
@Scribble #Scribble2023 #Apple #電脳 #UI/UX HMD AppleVisionPro AR MR VR切り捨て 単ページ

もうこれまで、何度書いたかわからないくらいVRには否定的に書いてきました。つかつい最近のエントリもHMDの話が中心だったとはいえ、やっぱり基本的なトーンはネガティブな感じでまとめたわけで。

でもね、そのエントリでも書いたように、HMDというガジェット自体には否定的ではないんですよ。あれは「みんながみんな」HMDを使う時代が来る、という甘い見通しにたいして否定的だっただけだから。
とはいえVRにはやっぱ否定的で、とくにメタバースのような仮想空間コミュニティアプリケーションについては今でも否定的です。

否定的な理由もこれまで散々書いてきた。
まず身体的に合う合わないが絶対あること、そしてコンテンツを作るのにカネがかかりすぎること、仮想空間上のアバターを動かしてコミュニティをとる<まどろっこしさ>、などをはじめ、細かいことを言い出せばキリがないほど他にもあります。
そうした課題は研究者なら気づいていないはずがない。とくにUIとUXに異様なほどこだわるAppleがHMDを作る、と聞いたら、やっぱり気にならないわけがないのです。

で、です。
実際、発表された「Apple Vision Pro」なるものを見て、いやもちろん現物を見たわけじゃないよ。あくまでニュースサイトを見たり、当該製品について語っておられるユーチューバーの方の動画を見ただけだけど、とにかくアタシが感じたのは「VRを完全に捨ててきたな」と。
つまりね、やろうと思えばそういうアプリケーションは作れるんだろうけど、仮想空間を楽しむためのデバイス、というふうにはまったく思えない。あくまでAR、いやMRを主体としたというか、VRは考慮されてないというか。

正直アタシはMRに詳しくないのでこの話はほどほどにしますが、それより「VRを切り捨てた」ことに大きな意義を感じる。
VRさえ切り捨てれば、アタシが懸念する「コンテンツを作るのにカネがかかりすぎる」ことも「仮想空間上のアバターを動かしてコミュニティをとる<まどろっこしさ>」も一気に解決する。
ま、それでも「身体的に合う合わない」だけは難しいんだけど、それでもVR端末としてHMDを使うよりは<酔い>の問題は出づらいはずです。

もちろん、何しろ額が額なので「発売直後に絶対買う!」とかではないんだけど、このデバイスは、というよりはAppleの打ち出した方向性には強い興味を惹かれている自分がいます。
「VRを切り捨てる」なんて簡単に言うけど、やっぱ、ここまで割り切った製品はなかなか出せないと思うのですよ。とくに超大手企業以外は「ターゲットをなるべく絞らずに幅広い層に売りたい」という思惑から、どうしてもVRへの目配せをゼロに出来ないし、ARを標榜した機種は現実映像と生成された映像を合成した、ま、昔の言い方ならスーパーインポーズに近い安価な製品、ということになってしまう。

それをAppleは現実映像をそのまま使うのではなく、現実映像から割り出してCGで3D空間を生成する、という手間のかかる、しかしこれ以上はないフレキシブルなMR空間を実現してきたわけです。
いくら目の前に広がるのが見慣れた自分の部屋だったとしても、実際はCGなので「現実では昼間なのに、目の前にあるのは夜の部屋」なんてことも出来る。もちろん他は現実に限りなく近いんだけど、窓の外の景色はニューヨークの高層マンションの一室からの展望、なんてことも可能になる。

いや、もっと言えば、これはAppleの遠大な計画かもしれない。
CGをイチから生成しようとするから異様なコストがかかるわけで、Vision Proのように「現実の映像からモデリングする=CGとして再構築する」というのを推し進めれば、世界中のiPhoneユーザーが撮影した動画から再構築して「超リアルなCGが低コストで生成出来る」なんてことを考えてるのかもしれないわけで。

そうこう考えると、そもそも「VRって結局ゲームのためだけのもんだったんじゃないか」とも思えてくるのですが、ま、その話はまたいずれ。







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